マイクロカセットにLカセット - カセットテープの進化
いわゆる「カセットテープ」と呼ばれるコンパクトカセットについては、以下の記事に書きました。
コンパクトカセット - みんな大好きカセットテープ
カセットテープ自身の規格はもっと古いものですが、おおよそ1970年代から普及し始め、瞬く間に誰しも使うものになっていました。最初はオープンリールに比べれば音質に難があるのでもっぱら会話を録音する用途でしたが、ラジカセの登場によりラジオ番組を録音して楽しむことが増え、テープに使われる磁性体などの改良により、ステレオコンポなどにカセットデッキが登場して徐々に音楽を楽しむ目的でも使われるようになりました。そして手軽に使える上に非常に安価なものになったので、パソコンのプログラムやデータを保存するにも使われるようになりました。そして携帯型カセットプレーヤーである「ウォークマン」の登場により、カセットに録音した音楽を持ち運んでいつでもどこでも楽しめるようになったのです。レコードとして売られている音楽やラジオ番組(場合によってはテレビも)などはカセットに録音して聴くようになりましたし、最初からカセットの形態で音楽が売られるようにもなりました。
こうしてカセットテープは全盛期を迎えたのですが、ノーマル以外にクロムであるとかメタルと言った磁性体の区別もありましたし、ドルビーなどのノイズを減らすフィルターもいろいろな種類が登場し、キチンと音楽を録音再生するのはなかなか複雑なことにもなりました。とはいえテープ速度などの互換性は維持されていたので、もし設定が正しくなくてもちょっと音が歪むくらいで聴くことはできたので、結構アバウトにみんな使っていました。
録音再生する機器は爆発的に増えていき、特に携帯する機器に関してはカセットの大きさが問題となり始めました。そこで登場したのがより小さなカセットを使うマイクロカセットです。
マイクロカセット
この規格もコンパクトカセットと同じくらい古いものですが、コンパクトカセットよりもさらに音質が悪いので会議を記録するボイスレコーダーや留守番電話などに使われるにとどまり特殊な用途向けのものでした。コンパクトカセットと同様に磁性体の改良やドルビーの採用などで音質もまあまあ良くなってきたのですが音楽を聴くためには、いくら装置が小型になると言ってもウォークマンのように使われるということにはなりませんでした。但し携帯型のパソコンが登場すると、本体の大きさに限りがあるためにコンパクトカセットを内蔵する(コモドールのPET2001やシャープのMZシリーズなどデスクトップ型ではチラホラありましたが)のは難しくEPSONのHCシリーズなどマイクロカセットを採用するケースも増えました。マイクロカセットのデッキなどもあったのですがカセットが小型化されたメリットを感じるのは難しく、音質の問題というよりはテープのコストがかさむので普及に至らなかったようです。
ちなみにマイクロカセットはボイスレコーダーなどでしぶとく生き残っていて、今でもテープを購入することが出来るようです。あのキュルキュルと早送りしつつ音声を聞くという使い方は意外と便利なのですかね。
オーム電機 マイクロカセット60分用 TS-3047
さて、カセットを小型化するのではなく音質を追求してより大きなカセットとなったエルカセットという規格もありました。この規格は1976年にソニーらが提唱したようです。
エルカセット
これはオープンリールで採用されていたテープや走行速度の規格でカセットを作ったもので、装置の機構や操作の煩雑なオープンリールを置き換えようとしたものです(考え方としてはビデオのオープンリールをUマチックカセットにしたのも同じ)。発売当初は大きな期待を持って迎えられていたのですが、業務向けなどに対しては一定の普及が見られたようですが、テープというのは物理的なものはなく、その中身が過去の資産なので、これを急に置き換えるのは難しく(ダビングすれば音質が劣化してしまう)、特に趣味の分野ではなかなか受け入れられなかったようです。性能の良いハードを出せば良いというソフトと言うかコンテンツのことに気が回っていない日本企業の特徴が既に始まっていたのかもしれません。
ということで、ゆっくりとゆっくりとは売れていたようですが、結局、音質を求める向きにはDAT(Digital Audio Tape)が1987年に登場すると、そちらに移ってしまい、こちらは程なくオワコンとなってしまいました。音質を考えるとデジタルにはかないませんし、テープもグッと小さくなりましたからね。いっときは普通のカセットデッキを使っていたヒトにとっては「憧れの」テープだったのですが、憧れのまま消え去る運命だったようです。テープ自体はアキバのテープやさんには並んでいたのですが、使っているヒトに会ったことは無いんですよね。
ヘッダ画像は以下のモノを組み合わせて作成しました。左がエルカセット、右がマイクロカセット。どちらもコンパクトカセットとの比較になっているので、そこから大きさの違いを感じてください。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Elcaset.jpg
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https://commons.wikimedia.org/wiki/File:CassetteAndMicrocassette.jpg
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