PC-2001 - NECのポケコン
ポケットコンピュータとハンドヘルドコンピュータの境界については曖昧なところもあるのですが、エプソンやシャープなど電卓のノウハウのあるメーカーから、その挑戦は始まりました。
電源がいらず持ち運んでどこででも使えるコンピュータというのは、単に便利なだけではなくどこでも仕事が出来るというライフスタイルの変化を促し、PCが設置されていないような、いわゆる「現場」で、データを取り込んだり、計算結果を活用する道が開かれたわけです。
画面も小さくキーボードも電卓のようで間違ってもブラインドタッチが出来るようなものではありませんでしたし、計算速度も一般的なパソコンと比べると、かなりゆっくりとしたものでしたが、ここに未来がある!という期待がありました。
ポケットコンピュータの製品一覧
最初に登場したシャープのポケコンについては、以下の記事に書きましたが、今回は当時のパソコン界の王者、NECから登場したPC-2001をご紹介します。
PC-1210 - ポケコン時代が始まる
PC-2001が登場したのは1982年で、この時点でNECはPC-6001やPC-8801を始め多くのパソコンを発売しており、日本における普通のパソコンとしてはかなりのシェアを誇っていました。そんな時代に電卓メーカーがポケットコンピュータを出してきたのを見て、NECとしても、その可能性を探ろうとしたのかポケットコンピュータをリリースしたようです。
見た目はポケコン、肩書きはハンドヘルドコンピュータ「NEC PC-2001」
大きさは22✕13センチ(厚みは3センチくらい)で40✕2行の表示ができる液晶を積み、電池で50時間ほど動かせたようです。シャープなどのポケコンと比べると縦方向が長めで(PC-1500の縦は9センチ弱)、サイズだけは既にノートPCのの風格を見せています。
RAMは8KでN20-BASICというN88-BASICのサブセットとも言えるBASICが用意されていました。カセットやプリンタと接続できる端子は持っていてシリアルで他のPCと接続して使うことも考えられていたようです。
NEC-PC-2001
PC-2001取扱説明書
https://pockemul.com/wp-content/uploads/2022/12/PC2001_OM_JP.pdf
PC-2001 N20-BASICマニュアル
https://pockemul.com/wp-content/uploads/2022/12/PC2001_BASIC.pdf
NECからは主にビジネス向けのソフトが用意されていたようですが、テキスト表示しかできない上、マシン語の互換性も無いのでゲームなどを移植するのも難しく、ホビー用途にはまったく刺さっていませんでした。その辺りはシャープにぜんぜんかなわなかったようで、周りで使っている人を見た記憶はありません。
NEC PC-2001のご紹介!
そのほかのパソコン その1/NEC製ハンドヘルドパソコン・PC-2001編
果たして、どんな風に使っていたのかというと、BASIC自身の学習であったり、PC-8001で使うプログラムを入力するといった使い方くらいしか見当たりませんでした。モバイル機器をパソコンの端末であるとか、データ入力と言った親子として使うという方法が、既にパソコンでシェアを獲っていたメーカーとしての提案だったのかもしれません。
NECのPC-2001を使って通学電車でプログラミングした学生時代
PC-2001 (NEC) 1982年 [Tablet/PDA/ポケットPC]
結局、あまり売れることが無かったからなのでしょうか、NECはポケットコンピュータというカテゴリを諦め、翌年にはよりノートPCに近づいたハンドヘルドコンピュータとも言えるPC-8201をリリースしました。この時代はモバイルデバイス黎明期とも言える時代で、利用できる半導体の性能が急速にあがり、使えるメモリもどんどん増える中、外部との接続も単なるシリアルから通信を前提とするようになり、どのような使い方が求められているのかを試行錯誤していました。逆に言うと、パソコンですら常にその能力が不足気味だった時代、なかなか実用的な用途が見つけられなかったとも言えます。
この辺りは漢字表示を必要とせず、通信環境も整っていた海外のほうが、半導体技術の勝る日本メーカーの活躍する素地があったようで、国内よりも多く使われていたようにも思います。
NEC PC-2001
ヘッダ画像は、月刊アスキー1983年1月号に記載されたNECの広告ページ(部分)
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