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コンパクトカセット - みんな大好きカセットテープ

レトロブームでアナログレコードだけではなくラジカセとかも復活の兆しを見せているようですが、ラジカセで使えるカセットテープというのも、登場したときには音楽を録音するというメディアではありませんでした。単にカセットテープと呼んでいますが、正式名称は「コンパクトカセット」で、初期のテープにはラベルの何処かに、この呼称が書いてあった気がします。

コンパクトカセット

カセットが登場するまでは、自動車であるとか飲食店などでは8トラックと呼ばれるエンドレスな再生専用カートリッジが使われることはありましたが、大体はオープンリールと呼ばれるテープを巻き付けた2つの円板を使った装置が使われていました。大雑把に言えば音楽で使うやつは大きな円板が付いていて、会話を録音するやつは小さなものでした。スパイ大作戦や太陽にほえろで出てきたのは、この小さな方でしたよね。

8トラック

オープンリール

中身のテープは幅3.8ミリで裏返すことで逆方向に使えるので、片道分は1.9ミリ。ステレオで記録するには2トラック必要なので、1ミリ弱で秒速4.76センチという巻取り速度で使われていたので、60分テープ(片面は30分)で86m余のテープが巻かれていたわけです。この速度はオープンリール時代では最も遅い速度と同じで、この速度で使う時は充分な帯域が確保できないので、会話を録音するための設定でした。それでも86mを10センチ✕6センチの大きさの片側に収める必要があるので、テープ厚は18ミクロン程度に収める必要があり、もっとも薄い120分テープでは10ミクロンを切るので、よく送り機構で絡まったり、巻かれた状態で隣になる場所に音の転写が起こったりしていました。

テープの巻き込み

カセットテープの劣化と対策

初期の頃は会話を録音したり、せいぜいAMラジオの録音であれば構わないという程度の音質だったのですが、テープの磁気特性の改良が進み、少し我慢すればレコードやFMラジオの録音にも耐えられるようになりました。この過程でテープの種類が増えて、例えばソニーであれば最も安価で会話向けであればCHF、エアチェック(FMを録音すること)であればBHF、クラシックなどのダイナミックな音に使うにはAHFなんていう種類が出来ました。

この辺りまではどんな装置でも、どのテープを録音再生することが出来たのですが、より音域の優れたクロムテープというのが登場し、このテープに対応するためにイコライザ設定を変えることとなりハイポジであるとかタイプⅡというスイッチが付くようになりました(ソニーだとJHFとかDUADですね)。

ハイポジション

ちょうど、この頃にドルビーというノイズリダクションシステムが開発されます。映画館などでも盛んにドルビーシステムというのが宣伝されたので、音が良くなるというイメージは伝わったていたのでしょうが、大雑把に言えば高周波域のレベルを上げて録音することでノイズを抑えるという仕組みで、再生のときには上げた分のレベルを戻す必要があります。これを搭載しているのはカセットデッキと呼ばれるような据え置き型のステレオセットの装置で、ラジカセでも使えうようになったのは、だいぶ経ってからだと思います。

ドルビーノイズリダクションシステム

ウォークマンのような持ち歩けるカセットプレーヤーが普及したので、買ってきたレコードを持ち歩いて聞くためにカセットに録音して聞いていたのですが、最初からカセットで音楽を売るようにもなっていきました。そしてカセットの進化はまだ止まらず、メタルテープと呼ばれるさらに特性の良い磁性体が実用化され、ドルビーもより広い音域に対してノイズを減らすことの出来るドルビーCというシステムも追加され、カセットを正しい設定で使うのにいくつものスイッチを設定する必要が出てきました。まあカセットの良いところは設定が間違っていても、多少、音が歪む程度で全然聞こえないということはなかったのですが、アナログ時代は設定を自動化する方法もなく、わりと間違った設定で平気で聞いていた人も多かったかもしれません。

メタルポジション

そういえば他にもdbxというノイズリダクションもあったのですが、これは一部の高性能カセットデッキに搭載されていただけで憧れていたものの気軽に使えるものにはなりませんでした。

dbx

まあ本当に多くの種類のテープがあり、みんなどこのメーカーが良いであるとか、この音楽はクロムテープに向いているとか、お気に入りがあったようです。

1970s Compact Cassettes

長い事、カセットは書かれている時間の半分でひっくり返さないといけないので、午前1時から始まる深夜ラジオを録音するために、ともかく2時までは起きていてひっくり返したところで、安心して寝落ちするということも多かったのですが、オートリバースという最後までいったら自動的にひっくり返してくれる機構がついたときにはとても喜びました。もっともそれでも最大で120分までで、それよりも長い番組はどうしてもカセットを入れ替える必要がありました。その頃になるとビデオデッキも持っていて3倍モードだと6時間まで録画できるので、ダミーの映像信号を用意して、もうビデオで録音するとかをしていましたけど(アフレコ機能という音声だけ入れ替える機能のあるデッキもあったなぁ)。

参考:連載「テープ録音機物語」その65 カセット(3)

https://www.jas-audio.or.jp/journal-pdf/2012/05/201205_038-053.pdf

レコードと違うのは録音できるということで、オリジナルの選曲や曲順でお気に入りのテープを作って聞くことはもちろん、特にクルマなどでは、それを人に聞かせて悦に浸っていましたし、オリジナルテープを友人にプレゼントするなんて言うことも多く行われていました。カセット自身やケースにもインレタで曲名をキレイに並べたりデザインしている人も多かったです。そういえば、これを管理するデータベースを自分で書いたような気もする。カセットで音楽を聞くというのは生活の一部でした。

ヘッダ画像は、何故か引き出しにしまってある未開封のカセットテープ

#カセットテープ #コンパクトカセット #8トラック #オープンリール #クロムテープ #メタルテープ #ドルビーシステム #オートリバース

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