
S-VHSで高画質化 - VHSの行方
VHSはBetaの後追いで画質も悪く安いだけが取り柄みたいな売れ方をしていたのですが、それでも価格と品揃えは重要で、ジワジワとシェアを伸ばし結局Betaを家庭用ビデオから追いやってしまうくらいになったあたりを以下の記事に書きました。
VHS規格の進化 - 3倍モードからHi-Fiまで
元々は放送されている番組を録画するのが目的だったのですが、ビデオの普及に伴い映像コンテンツが売られるようになり、特にレンタルビデオという形態がビデオの普及に拍車をかけました。またまだまだ大きすぎでバッテリー駆動時間も短いものでしたが、ビデオカメラで動画を撮るという使い方も試みられるようになりました。放送に関してもいわゆる地上波だけでなく、より画像の鮮明な衛星放送も始まり、今までの放送で送られる以上のキレイな画像を記録する必要が出てきました。
ここからBetaと共に高画質化の道が始まります。今までのVHSの水平解像度はおよそ200本ほどだったのを輝度信号を4.4MHzから7.0MHzに広帯域にすることにより400本程度までに引き上げることとし、この方式をS-VHS(SuperVHS)と名付け1987年には対応デッキを販売し始めました。テープは周波数特性の良い対応テープが必要でしたが、形状に変化はなくS-VHS向けのテープであってもVHSとして使うことも出来、VHS向けであってもHGと呼ばれる高品質なテープであれば特に問題なく使うことも出来ました。輝度信号の扱い以外の変更は無かったので、S-VHSデッキであってもVHSの再生に問題はありませんでしたし、その後に出たSQPB対応VHSデッキであればS-VHSの録画は出来なくてもS-VHSの再生は出来るという仕組みも用意されるようになりました。この辺りの互換性のさじ加減はなかなか良かったように思います。
またビデオ信号自身の帯域が広がったために、映像入出力端子として今までのようなコンポジット信号を接続するRCA端子のケーブルではなく、S端子という輝度信号と色信号を独立して繋ぐことが出来る接続方法が採用されるようになりました。ケープルの端子が4本のピンで出来ており、うっかり斜めに差し込むとピンが曲がってしまうという少し厄介なところがありました。
コンポジット映像信号
S端子
基本的にコンポジット端子とS端子の両方は用意されていたので、接続相手に合わせた端子を繋げば良かったのですが、当初はテレビ側にS端子が用意されていないことも多かったので、せっかくのS-VHSの高精細な画像も充分に楽しめたのかというと怪しいところもありました。もっともアナログな世界なのでコンポジットで接続してもVHSと比べれば、それなりにキレイに見えた気がします。
S-VHS
S-VHSが登場した頃は高級機から順にS-VHSデッキがVHSデッキを置き換えるとも言われていたような気もするのですが、肝心な販売・レンタルなビデオがVHSのママだったような覚えもあり、VHS機であってもS-VHSテープの再生が出来るようになると、思いの外S-VHSは普及が進まなかったように思います。1998年にはS-VHS ETという規格が登場し通常のVHSテープであってもS-VHSで録画再生できるようになり、機種によっては5倍モードが使えるようになり、事実上分裂していたVHSはここで最後に1本化されたようです。
この時代になると既にDVDが普及していてレンタルビデオもテープのシェアは低下し始めていました。VHSも過去のコンテンツを再生するだけの時代に入り、2010年代に入るとVHSデッキの販売を終了するメーカーが増えはじめ最後の機種も2016年には生産終了となり、ここから10年ほど経った今年「2025年問題」と呼ばれるようになっています。追い打ちをかけたのが2011年にアナログ放送が終了し、テレビにもコンポジットやS端子という接続端子が消滅しはじめたことです。
さてVHSにはそのバリエーションとしてカメラ向けに小型化したテープを使うVHS-Cやデジタルデータをテープに記録するD-VHSなどもあったのですが、それらはまた別の機会にでも。
ヘッダ写真は、我が家に保管してあるS-VHS ETデッキ。
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