VT100のキーボード
そろそろ少しは新しいPCのキーボードに進みたいところなのですが、その前に忘れてはならないキーボードがあります。それはパソコンではなくターミナル(端末)のキーボードです。
パソコンは基本的にひとつのキーボードとひとつの画面を持ち、ひとりの人間が専有するように設計されていますが、パソコンよりも前のコンピュータは、1台のコンピュータを何人もの人間で同時に使うので、コンピュータ自身にはキーボードや画面を持たず、端末と呼ばれす装置をシリアルケーブルまたは電話回線で何台も接続して使っていました。
まあ見た目で言えば端末がコンピュータのように見えますし、もちろんパソコンも端末ソフトを使いシリアルケーブルや電話回線で他のコンピュータに繋げれば端末としても使えます。違うことと言えば端末にはプリンタを接続することができることもありますが、キーボードと画面しかなく、記憶装置を持たないので、アップロードであるとかダウンロードという操作は出来ないことくらいです。
最近でもクロムブックなんかは、グラフィカルな画面を使えますが、言ってみればクラウドを相手にした端末みたいなものだと考えればあまり遠くないと思います。
さて代表的な端末と言えば、VT100があります。これはミニコンで一世を風靡したDEC(ディジタル・イクイップメント・コーポレーション)が開発したビデオ端末で、パソコンが発売される直前の1978年に登場しました。UNIXの端末設定やパソコンの通信ソフトで名前だけは見たことがあるかもしれませんが、代表的な端末です。テキスト(もちろん英数字記号のみで漢字は出せない)のみしか表示できませんが、横方向は80または132文字、縦は24行を表示でき、反転文字やフラッシュ文字、太字やアンダーラインという文字修飾も可能でした。実は端末と言ってもCPUにはマイコンである8080を使っていたようです。
VT100
ホストとなるコンピュータとは確かRS232C規格のシリアルケーブルで接続し、最大で毎秒19200ビットで通信していたはずです。実は殆ど互換機しか使ったことがなくて、本物のキーボードは打鍵感がかなりヌメヌメしていた記憶があります。
肝心のキーボードですが、基本的には ANSI配列でASCIIコードを前提としていました。パソコンと違うのは制御キーが充実していることと、端末としての固有のキーが有ることです。
左上の SETUP キーを打つと、端末設定画面が現れて細かな設定が出来たのですが、特定のキーシーケンスで、決まった設定を行うことが出来ました。よく使ったのは SETUP + 0 で端末のリセットでした。うっかりバイナリを表示してしまうと画面の状態がグダグダになって普通に使えなくなるので、そういう時のリセットでした。
他にもASCIIで規定されている制御文字は、その意味の通りに動作し、CTRL を併用することで改行なども機能しましたが、一般的に使う制御文字は RETURN、BS、LINEFEED などなどの専用キーを使うことも出来ました。但し専用キーの意味付けは端末設定次第なので、矢印キーやPFキーがどのように動作するかは設定次第で、標準の設定では機能せず、謎の文字が入るようなことが多かったです。もちろんきちんと適切な設定を行えばいいのですが、一般的な標準設定はありませんでした。
ASCII
パソコンの時代になり、初期の頃こそ多くの機能キーは省略されていましたが、結局、徐々に必要性が出てきて端末で使われたような機能キーが追加されていきました。もっとも大型機それぞれにメーカーごとの固有の文化と習慣があり、例えばNECの端末では改行キーを打っても文字通りカーソル位置が改行するだけで、送信キーを押さないと端末から打ち込んだ文字が送られなかったりした覚えがあります。
端末という仕組みはパソコンのように直接ビデオメモリに書き込んだり出来ないので、文字修飾であったりカーソル位置をエスケープシーケンスという仕組みでシリアル化していました。これはプリンタに出力する際や文字セットを切り替える際にも、それぞれのシーケンスが規定されて使われるようになりました。今でも時々顔を出すことがありますよね。
PC and VT100 Keyboard Layouts Compared - ここにまとまっていました
ヘッダ画像は、以下のものを使わせていただきました。https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Terminal-dec-vt100.jpg
ClickRick - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6693684による