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魔々勇々第27話感想・考察 【奇々改戒】【獅子凛々】(ジャンプ17号)

この記事で掲載している画像は全て2024年週刊少年ジャンプ17号「魔々勇々」(林快彦)から引用しています。著作権・肖像権等は全て権利所有者に帰属致します。

次話はこちら

サブタイトルは「あなたは強くて優しい子」
自分の為に泣ける強さも、誰かの為に泣ける優しさも、両方持った泣き虫勇者。
コルレオが泣き虫なのは、マママが人の涙を常に肯定的なものと捉えていたことで、泣くことに躊躇いがないまま育ったせいなのかなって思うと感想記事冒頭書きながら既に泣きそう。

コルレオ世界に紋章術がない理由についての考察当たりましたね~。
気持ちいい。
しかしハロハロの紋章術は思った以上に規格外。
世界にはまだまだ謎が隠されている。
考察が当たったからといって想像の幅もこれからの展開の幅も狭まったりなんてしない。
面白すぎて読んでて本当に幸せになれた27話、感想いってみましょう!

◆「ここは僕の精神の中」

コマ割…!!

ハロハロの顔見せないんかーい!
しかし神がかった演出。
このシーンから発せられる静けさとは裏腹に、読んでいる側のボルテージはうなぎ登りである。
これまでの展開的に、精神世界がいつか描写されること自体は自明だった。
会うには精神世界しかないキャラがたくさんいる。
エヴァンしかりハロハロしかり。

でも、ここまで見事に精神世界を演出するか。
コマの枠を飛び出させて目元を隠すことで、ハロハロが文字通り次元が違う存在であることが表現されている。
概念としてのみの存在になっているから、認識することができないってことだろうか。
何食って育てばこんな演出する発想に至るんだ。

そして、無造作に並べられた椅子、それも椅子「だけ」しかないことが、一言かわす「だけ」で分かり合えるというハロハロのスタンスを演出している。
二人のやり取りが調和しているときには椅子は立っていて、どちらかの精神が乱れているときには椅子が倒れているのもニクい。
倒れているのは次の3つのシーン。
①対面した瞬間(それぞれ初対面であることから調和状態ではないのは当然。)
②コルレオの紋章術の説明を開始した瞬間(即座には理解できないことによるコルレオの動揺。直前の「憧れのハロハロ…?」みたいな顔してる瞬間には椅子が立っているのがまた面白い。オタク心が限界突破して賢者タイムになっていたとしか思えない。
③ハロハロが悪意について語ったシーン(平和を望むからこそ悪意について語るときには心が乱れる?)

対して、エンドが侵入してきた際は、椅子が一脚も倒れていない。
短いやり取りの中でコルレオとハロハロが通じ合った結果、揺らがない決意が固まったことを表現することに、椅子が一役買っている。
この漫画モチーフの使い方うますぎるって…!
モチーフといえば、蝶についての考察はharutaさんに任せます。
復活の象徴ではあると思うのだけど…。

◆マーたん…!!

互いにたん呼び…!
なんでお前ら子を成してないんだよ。
その関係性で子を授からせぬまま他界しちゃだめだったよハロハロ…
ただ、コルレオの勇者性(特に優しさ)は血筋によるものではなくマママの育て方の賜物ということの強調のためには、コルレオが実子でない方が熱いと思う。
ハロハロの意志を継いだマママは、息子を強くて優しい子に立派に育てたんだよな。

・マママさすが

ハロハロは明らかに達観してるしキャラとしても格が違う。
ましてや目が隠された次元の違う状態では、真意がどこにあるのか掴めないところもある。
場合によっては今回、「ハロハロってもしかして黒幕…?」って疑いを持たれていた可能性もある。
目を隠すことにはそれくらいのリスクがある。

そこを補うのがマママですよ。

いちゃいちゃしやがって

限られた回想シーンに、よりによってマママがハロハロよりミャー助(飼い猫?)を優先するシーンをチョイス。
「構ってよ」と情けなく声を掛け、「黙れ!」と言われるシーンを思い出して勝手に「くうッ」ってなってる男をもはや黒幕とは疑えない。

ぞんざいに扱っているが、相手は認識を改変できる紋章術の使い手である。
悪用しようと思えば自分の感情すら改変されてしまう。
そんな相手と交際しながら、悪用されることなど微塵も考えていない信頼が、このコマから伝わってくる。
マママ、すげえ女だよ。
そして、毎度毎度一瞬の回想でキャラの関係性を描写しちゃう林先生すげえよ。

◆奇々改戒

紋章術名だけでご飯何杯でもいける。
「奇々怪々」って四字熟語の「怪々」を「改戒」に変えるだけでここまで母の紋章っぽさ出せるのすごすぎる。
今回、紋章術名は自分で名付けていることが分かった。
奇々改戒は、可能性としては「できないことはない」レベルの能力である。
それを認識しておきながら、「める(より良くする)」「める(自戒の意だと思う。)」の字を当てて、世界をより良くするために使うこと、悪用してはならない自分への戒めを常に認識できるように命名したハロハロの精神性はあまりにも勇者。

・能力考察

「物体 事象 認知を 消失・改変する事ができる」
恐ろしいほどに万能な能力。
ハロハロ以外が所持したら間違いなく世界が終わっていたレベル。
この能力の説明から、「できないこと」を想像することができなかった。
「死」の事象を改変すれば人を生き返らせることができるし、「時間」の概念を改変すればタイムスリップだってできる。
「認知した事実」の改変により人を操ることなんて自由自在である。
この能力を、争いの種となる感情を消すためではなく、個人に紐づいた能力を消すために使ったハロハロは、「信じる」勇者なんだと思う。
人と魔人の可能性を信じてなければそんなことはできない。
「たった一言かわすだけ」で分かり合えるというハロハロのスタンスは、対話を重んじるという意味ではコルレオと同じだけど、信頼が先にあるのか、対話の先に信頼があるのかという意味でコルレオともまた違う。
ちなみに自分だったら「悪意(正義感の名の下に行われる攻撃も含む)」を消すことを選ぶ。
残念だけど、そこまで自分を含む人類を信じることはできない。
…いや、それ以前に命を賭してそんなことするわけなくて私利私欲のために使うな。ほら!悪意まみれだよ世の中!

閑話休題
こういった圧倒的な能力が出るとよく言われることが、「その能力があるなら○○すれば解決じゃん」というもの。
ハンターハンターのノブの、「空間を閉じることで強制的に相手を切断できる技」で言われてたのが一番思い出すかな。
「メレオロンで隠れてノブのその技使えばいいじゃん」みたいなね。
そのせいでノブが戦線離脱したとかも言われてた。

この辺りは読み手のさじ加減で、確かにその能力でできるはずのことを全くキャラがやらないのは萎える一方で、それをやらないことについての説明を全て作中でするのも冗長かなと思う。
魔々勇々については、「目的意識」「出力」という設定があるおかげで、「理屈上できるはずだけど出力が足りない」との説明が可能になっている。
ハロハロが命を賭けたのもこれによるものだろう。
社会の一部を成しているシステムに改変を加えるのは母なる紋章といえども命賭けなのだ(ハロハロが命を賭けた理由が紋章術を消すためって説明が出てきたわけではないので違ったらごめんなさい。)。
論理能力バトルの世界感とは違った面白さがある。

◆獅子凛々

紋章術名だけでご飯何杯でもいける(2回目)。
コルレオは序盤から獅子になぞらえた描写がされていた。
第2話の表紙ページや、第4話のサブタイトル「その獅子 雄々しく起つ」など。
獅子については序盤からちゃんと構想にあったんだなと驚かされる。
ここで、第4話の自分の感想記事の冒頭部分を引用してみよう。
獅子について何か考察しているかな…

思春期丸出しな獅子が何を雄々しく起たせたのか突っ込みたくなるサブタイトル。

ハーたん、奇々改戒お願いします。

・所感

ついに明らかになったコルレオの紋章術。
人の精神に介入するのを獅子に例えるのがコルレオの覚悟を表していていい。
本音を隠していない他者の剥き出しの精神なんて、通常の感性なら絶対に触れたくない。
グリシャのように人の心がないならいざ知らず、コルレオは他者の感情に人一倍敏感。
それが、直に触れるのに覚悟の要るものだということは良く分かっているはず。
紋章術を発動するたびに自分も相手も心に傷を負う可能性を秘めた紋章術。
だからこそ、「凛と雄々しい獅子のように」向き合う。
信じることで分かり合うハロハロとはまた違った、対話の先の相互理解を目指すコルレオらしい紋章術だと思う。

今後、エンドとの決着でコルレオはエヴァンの紋章術は手放すことになると思う。
そうなるとコルレオのメイン術は獅子凛々。
仲間との連携もイメージしにくいし、物理バトルを一切しないというのも寂しい気がするが、魔々勇々を読んでいる限り、漫画の面白さというのは必ずしも敵を物理的に攻撃するシーンにあるわけではないということが良く分かる。
連携については味方も獅子凛々に巻き込めば使えるし、今後の敵との向き合い方についても、貧弱な一読者の想像などぶち壊した展開を用意してくれると思っている。
ちなみに打切りの展開じゃないということは確信している。
もしこの先打ち切られるとしても、それはアンケが取れなかったことによるもので、今のこの展開自体は打ち切りのためではないことは間違いない。
詳しくはこの引用ツイート御参照。

全く同じ見解です。
だから、この先の新章を見るためにもアンケートは絶対に入れなければなりません。
今週は掲載順が上昇して嬉しかったですね!

◆まとめ

毎回面白すぎて、まとめコメントが大体同じようなものになってしまう。
前回・今回は特に、林先生の持ち味による演出力が存分に発揮されつつも、繊細な心理描写も各所に見えて、抜群の読み味だった。
次回のエンドの精神世界での対話もものすごく楽しみ。

魔々勇々の感想を漁ってて感じるのが、相当深く読み込んだり、そもそも知識がないとたどり着けない考察に、いろんな人(各方面につきごく少数)がたどり着いている。
そして、たどり着きつつも、それは完全な正解には至っていない。
これは、読者にヒントを絶妙な範囲で提示する林先生の手腕と、魔々勇々ファンに絶妙なオタクが集まったことによる奇跡の現象なんじゃないかと思ったりする。
読むだけで楽しいけれど、ファン同士の交流により更に何倍も楽しめる。
つくづく面白い漫画です。

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◆1巻レビュー
◆特別編 1巻書影を語る
◆特別編 魔々勇々の魅力
◆特別編 鵺の陰陽師、カグラバチ、魔々勇々の比較

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