精神科医がrTMSを勧めない理由
本業の精神科の記事について書いていきます。
私は仕事にてrTMSを実際に現場で行なっているものとしてちゃんと伝えないといけにと思い、記事にしました。
こんなニュース記事が話題となりました。某rTMSクリニックで発達障害の方にガイドランに逸脱してrTMSを施行して、85万円の高額請求を行なっているとのことです。このクリニックですが昨年度の純利益はグループ全体で3億円!儲かってますね。
初めにひとつ言えることはrTMS自体は悪い治療ではありません。アメリカでは10年以上前から行われている有効な治療です。
rTMSをよく分からない方に簡単に説明すると、rTMSとは日本語では「反復経頭蓋磁気刺激療法」と呼びます。文字の通り頭に磁気を当てることにより脳内に電流を発生させてそれによって脳の特定の部位(ネットワーク)を活性化させる治療法です。さまざまな精神疾患や脳梗塞のリハビリなどに効果的な可能性があります。
ただし現状保険診療で行えるのは薬剤抵抗性のうつ病のみです。それ以外は全て自由診療になっています。
結論から言います!
「うつ病以外は基本的にrTMS治療はしない方がいいです!!」
うつ病じゃないけど受けたい方は強迫症か依存症(ニコチン依存症、アルコール依存)ならば比較的効果が認められているので受けてもいいとは思います。
ただしまずは薬物治療など保険診療で認められて比較的安価で済むものから行うことを強く推奨します。
それ以外の疾患はまだ研究段階なので、オススメしません!
研究段階ということは効果があるかないかが分かっていないということです。
ギャンブルみたいなものですね。そんなギャンブルに85万円は高いですよね
皆さんはカジノで85万円使えますか?
流石に極論ですが、現時点でrTMSをうつ病以外に使うことはそれくらいのことだと思っていただいていいと思います。
記事にあったような発達障害へのrTMSもまだまだ研究段階です。
ただし発達障害の抑うつには効果がある可能性があります。(発達障害の方もうつ病を呈する場合もあるので)
適応障害に関しても基本的にはオススメしません。
適応障害の場合はまず原因となった環境にアプローチをしていく方法以外はあまり効果的なものはないからです。
コロナの後遺症、双極性障害の抑うつ状態に関しては日本で今臨床試験が行われています。その結果を待ってからの方がいいでしょう。
何度も言いますが、
皆さんはうつ病だけrTMS治療を受けましょう!
保険診療で治療を受けるのが何より望ましいです。
ただし、基本的に保険診療のrTMS治療は前例入院で行われています。
入院はできない、したくない人に関してはクリニックでiTBS(シータバースト)という3分半で終わる治療があり保険診療で認められている1時間の治療と有効性が同程度と言われている治療は受けてもいいでしょう。通って治療したいという方はオススメです。
また強迫性障害に関しては中程度の効果が証明されており(効果量:0.79)、もし通常の薬剤で十分に改善しない場合は選択肢に入れてもいいでしょう!強迫性障害に関してはFDAというアメリカの医療の安全性等を審査するところが有効であると認めています。ただし効果としては30%の人が30%の症状の改善を実感するくらいという認識でいてください。なのでまずは薬物治療、精神療法を行いそれでも効果が不十分な場合は追加する形で検討するのが良いと思います。
迫性障害の場合はこんな被り物のようなDeep TMSという治療を行なっていきます。
もし自由診療でrTMSを受けたい場合、クリニック選びが重要となってきます。
ここがとても重要です!!
あくまで個人的な見解であるのでそれを最初に断っておきます。
受診する上で重要なポイントがあります。
①精神科専門医、あるいは精神保健指定医が在籍しているクリニックで治療を行いましょう。決して無資格のクリニックでの治療はオススメしません。
→rTMSは副作用の少ないいい治療ではありますが、リスクもあります。
必ず専門家の元で治療を受けましょう。
②自由診療だけでなく、保険診療を行なっているクリニックで受診しましょう。
→基本はまずは薬物治療です。rTMS単体で病気を治す力はあまり強くありません。薬物治療と併用することで初めて大きな効果を生み出すことができます。
通常の保険診療を行なっているメンタルクリニックに受診しましょう。
③しっかりと診断してもらえるクリニックで治療を受けましょう
→巷では光トポグラフィやQEEG検査にて精神疾患を診断するクリニックがありますが、はっきり言って詐欺です。それらの検査は補助診断であって本来は医師との面接にて診断を行いますし一度の受診だけで診断までつけるのはほぼ不可能です。
④いきなりrTMSを勧めるクリニックはやめましょう。
→まずは薬物治療が有効な場合がほとんどです。その時点でそのクリニックは問題である可能性が高いです。
長くなりましたので今日はこのくらいにしておこうと思います。
またrTMSに関しては別の記事にできたらと思います。
今回は以上となります。
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