雀荘小話「ファイヤーマン」
ギャンブルといえば世間一般のイメージは最悪である。
たばこの煙がもくもくと焚かれた暗い部屋の中で怖い顔をした男たちが睨みあいながら博打に興じている。
そんな時代は今は昔の話となっており現在の雀荘はクリーンなことがほとんどであるが、やはりギャンブルの性質上普通の生活をしていたら出会わないような人間に遭遇することは多い。
とあるピンの雀荘
同卓者に少しタトゥーの入ったヤンチャそうな見た目の若者がいた。
雀荘においては見慣れた景色だ。
普段の生活ではタトゥーが入っている人間はなかなか見ることがない、あっても関わることなどほとんどないのだが、雀荘では同卓することはままある。
すごくおとなしくていい人そうなのに、小指がないおじいちゃんもいたりする。
その人の普段の生活や性格は知りようがないし、知ってもしょうがない。やることは麻雀であるし、店でやる以上、勝ちすぎてなにかなることもない。
そんなこんなで特に気にしていなかったのだが、ある局、その若者が6巡目に4筒を切ったところ、ダマの親の跳満に刺さってしまった。
(うわーこりゃ交通事故だなぁ)
とみていると、若者は意外にもふてくされる様子もなく、おとなしく18000点の支払いを済ませ次の局へ。
次局
打牌を進めていると、5巡目頃だろうか
「ピーーーーー」
という音が卓の中からした。
これは全自動卓ではよくある、「次の局の牌の積みが終了しませんでした。」という合図である。
卓の中で牌が積まれていく過程で、なにかに挟まってしまったり、うまく回収できなかったりすると起こる不具合で、1日打っていれば1回くらいは起こる。
(めんどいなぁ。これで流れ変わっちゃったらどうしよう)
流れ論者の自分はそんなことを考えながら、ふと卓上から目を上げると、若者の姿が目に入った。
(ずいぶん虚ろな目をしている。やはり気にしていないふりをしていても、あの親跳はきつかったんだろうな。。。。。。ん??????)
次の瞬間私の目に飛び込んできたのは、
虚ろな目をしたままライターで4筒を炙っている若者の姿だった。
そう。若者は前回の振り込んだ4筒を卓の中へ返さず、恨みを込めて拉致火炙りの刑に処していたのだ。
それに気づいた店員が若者を止め、卓外へ追放。若者はそこでゲームセットとなった。