ボド裁判 第一審
この話には前日譚がある。どちらかというとこちらが後日談的な立ち位置なのだが。
ともかく、前日譚を読んでいない諸氏はまずそちらに目を通していただきたい。
また、本記事では、登場人物からの了承が得られたため、スタンスが揺れて申し訳ない限りではあるが、前記事ではイニシャルで表記していた彼らの名前を、HN表記に改めることとする。
そのため、前置きのこの段階で、改めて登場人物を整理しておく。
一. 裁判という名のオフ会
前置きみたいに気取った文体で書こうかな~とか思ってたんですけど、中身はただのオフ会レポートだからなんとなく気恥ずかしくなっちゃった。
というわけでこっからは口語調で。
裁判とか大仰な言葉を使ってるけど、要はあのとき遊んだメンバーでもう一度集まって遊ぼうよってことですね。裁判はそのための口実です。
そういうわけで各々やりたいものを持ち込んで、2泊3日のお泊り会が開催される運びになったとさ。
ところで、ボドゲマン事件についての裁判として集まったのに、肝心のボドゲマン本人がいません。
連絡先なんて知らないし、まあ知ってても呼ぶわけないけど。
なのでボドゲマン役(?)として俺らの友達、カプチーノを呼ぶことにしました。
そういうことなんで、結局今回の登場人物は
の6人ということ。
ただし、途中でかいるが体調を崩してしまい、裁判前日にして無念の離脱となってしまいました。これが裁判の内容に影響したとかしなかったとか。
二. 議論紛糾
で、2日目。
裁判当日。メーンイベントです。
あの日僕らがボドゲマンと遊んだボードゲーム”LAST NIGHT ON EARTH”もわざわざ購入したんですよ。めっちゃかさばるし高かったけど。
そして始まるボドゲマン裁判。
ここからは太字だけ読めば会話が分かります。
クラウド「あの日の真相を突き止めるぞ!」
一同「うおおおおおおおお!!!」
クラウド「ところでさ、やっぱ悪いのはかずおじゃね?」
議論の流れが俺にとって不利になるだろうなということは予想できていました。
ボドゲマンとパーマを除いたこの5人の中から事件の元凶をあぶりだすというのなら、基本的にやり玉にあがるのは、事の発端に関与した俺か松田さんということになるからですね。
これまでも幾度となくボドゲマンの話を擦ってきた我々ですが、犯人の話になった時、俺は大抵松田さんに罪をなすってました。
俺の言い分としては年上の松田さんがちゃんと断ってほしかったってやつ。当時そんなに仲良くなかったしね。これはこれで一理ある話だと今でも思ってるけど。
まあそんな自分を棚に上げて他人に罪をなする俺の行動がヘイトを買って、まさに裁判当日のこの日、悪者に仕立て上げられそうになってた、って感じ。
だから俺はこの裁判に、二案持ち込んでいました。
自分で案出さなきゃこのままいけば俺が悪かったことになっちゃうからさ。
歴史ってのはいつも勝者の足跡なんですよ。この裁判に俺が負ければ、俺の罪は歴史的に確定してしまうってわけ。
で、第一案。
かずお「いやいや、犯人捜ししてますけど、そもそも本当にボドゲマン事件は、悪いことだったんですか?」
まさにコペルニクス的転回。
俺は皆を巻き込んだ過失で罪に問われているわけだけど、そもそも巻き込まれたのは不幸なことだったのか?という根っこへの疑問。だって、
かずお「ボドゲマン事件から3年経った今でも話のネタにしてるし、今日集まるきっかけにもなったじゃないですか」
俺たちのことを知らない人のために説明すると、ボドゲマン事件から裁判まで3年間で、俺たちは相当ボドゲマン事件の話を擦ってました。
共通の友人に話しても大抵ウケがいいし、俺らの会話の中でも思い出話や小ネタとしてよく登場したもんです。
なんなら事件から4年以上たった今でも俺はこのnoteで擦ってるわけで。
そんくらい笑い話にしてるならさ、受けた不幸より、得た笑いとか幸福とかのプラスの方がでかいんじゃね?って話。
かずお「だからもうやめましょうよ、こんな裁判!」
時間がも"ったいだい…!!!!
「いや、それは違うと思う」
でもこの主張は反論されてしまいます。
クラウド「俺法学部卒やからわかるけど、被害者が、受けた不幸をどれだけ笑い話にしたところで、犯人の罪は軽くならない」
一同「確かに」
ウーム。確かに。
法学部やから云々の下りはまあどうでもいいけど、例えばチャリ盗まれた話を笑い話にしたところで、盗難の罪がなかったことになったりはしないもんな、とこの時は納得しました。
でも今文字起こししていて思うのは、俺の主張の焦点は、「今回の事件は、過失致死なのか、過失でコーヒーぶっかけちゃっただけなのか」みたいな話だったかもなって。
まあでもコーヒーかけた側である俺が、かけられた皆に対して、そっちの方がおもろかったやろ?って言うのはさすがにちょっと品がないか。
やっぱりこの第一案は微妙ですね。
余談ですが、クラウドさんは詭弁弁論のプロなので、他人を納得させるのがうまいです。法学部卒だし。
行き過ぎた暴論の時もあるけど、それはそれで笑いになるので羨ましい限りですね。全く。
というわけで、第二案。正直ハナからこっちが本命でした。なんかよくあるじゃないですか。
一度無理なお願いしてからいけそうなお願いすれば聞いてもらえるかもみたいな心理学の話(調べたらドアインザフェイスっていうらしい)。
そんな目論見はなかったけど、”本命は最後に出す”みたいなセオリーはそういう心理学的な要素にも起因してるのかもしれないですね。
かずお「確かにそれもそうですね。じゃあ一旦、整理もかねて、各人の幸福指数を数値化してみませんか。やっぱり客観性は大事だと思うので」
一同「ありやなあ」
ということで表にして整理することに。
「皆ボドゲマンと遊ぶ羽目になった。だから等しく不幸」
「かいるの裏切り(ゲームからの離脱行為)はかいるに幸福を与え、シャントクラウドを不幸にした。ただし、かいる以外はボドゲマンとチームを組まずに済んでいるので、その点には留意するべきである」
まとめると下の表になります。
かずお「そしてこれが裏切らなかった場合の幸福総量。かいるの行動は、集団の幸福総量を押し下げる行為であることが分かるんです」
ここでイギリスの学者、ベンサムが唱えた倫理説「最大多数の最大幸福」について引用します。
この立場に立つのであれば、社会全体の幸福総量を一人のエゴで押し下げる行為は、善の反対、悪だということですね。これが俺の持ち込んだ第二案。
かずお「つまり、過失ではなく、恣意的に社会の幸福総量を下げた人物がいるということになるんです!」
一同「うおおおおお!!!!!」
かずお「さらにです、この犯人探しは何故起きたのでしょうか」
一同「?」
かずお「それは、幸福に差があるからなんです!! みんなが一様に不幸なら、あの日は災難だったねで終わっていたはず。俺らの中でより不幸になった者が、まだましな不幸な者を嫉み、悪者をあぶりだそうとしているのです!」
一同「!」
裁判の言い出しっぺは、誰からともなくではあったものの、やはりクラウドの意向が強くあったとは思う。
かずお「ではなぜ、幸福に差が生まれたのでしょうか。それは表を比較すれば明らか。かいるが裏切ったことでクラウドシャントが俺松田を憎む幸福度傾斜の構造が完成してしまっているのです!!!!」
一同「うおおおおおおおお!!!!!!!!」
ちなみにこれは詭弁です。もちろん言及されました。
「でもかいるだけもともと他の人に比べて幸福に傾斜があったから、裏切ることでようやく並んだわけやし、それをせずに社会のために我慢しろっていうのも不憫じゃない?」
そう、裏切る前からかいるだけは他の人より不幸なんです。
「じゃあ可哀想な境遇の人は罪を犯してもいいんですか?」
これは誰が言ったか覚えていません。俺かもしれないしそうじゃないかも。
でも、
一同「まあ確かに」
って思いました。
松田「やっぱあいつが悪いよな! 絶対許せんわ!!!!!」
松田さんは自分が犯人にならんかったらオッケーのスタンスっぽかったのでこの意見に鬼のパッションで同意。最初は罪をなすってきた俺を敵視していたようですが、そんなわけで裁判終盤には共同戦線。
こうしてボドゲマン裁判第一審は、唯一の欠席者であるかいるを悪者にして、その幕を閉じました。
裁判が終わった後は、皆で件のゲーム、“LAST NIGHT ON EARTH”をプレイ。
武器がファンブルするたび盛り上がったり、なんだかんだ皆でちゃんとやれば楽しいゲームでした。
三. そして第二審へ
翌日。お泊まり会最終日。
レンタルスペースを借りていた我々は、すっかり片付けをして出て行かなければなりません。
ところが、松田とクラウドは予定があるとかで朝早く出て行きました。
残された我々は必死にお片付け。いうて我々もチェックアウトの10時には出て行かねばなりません。
そんな中、冷蔵庫から見つかったものがひとつ。
これ買ったやつ、バカだろ………………。
季節は夏。炎天下の中で持ち帰っても後で食べるの怖いし、そもそもカバンの中で爆発しそうだしで、持って帰るわけにはいきません。ていうか2泊3日の荷物で既にカバンパンパンだし。
急いでクラウド松田に怒りのLINE。
「ヨーグルトほぼ丸々残ってんすけど……」
そうしたら、
「買ったの俺らじゃないぞ」
と一言。
途端に広がる不穏な空気。俺たちは、でかいヨーグルトを買った犯人探しもやらないといけないのか……?
しかしその後少しして、ヨーグルトはカプチーノが買ったものだと判明。
やはりボドゲマン枠で呼ばれた人物。原罪を背負う宿命なのかもしれません。
犯人の自白も取れたため、民衆の総意で、10時目前にしてヨーグルトを一気に流し込む刑に処されたカプチーノ。
仁王立ちで一気食いをするカプチーノを見て、驚嘆を漏らす俺とシャント。
ものの数十秒で食い終わったカプチーノを見て、シャントが
「これが贖罪か……」
と呟いていました。
罪を贖う覚悟、素晴らしかったです(?)。
こうしてお泊まり会は終了しました。
ボド裁判も無事に判決が出て、めでたしめでたしと。
とはいえ、いくら正義を騙る裁判だからといって、欠席者に罪を被せて万事解決とするほど僕らの正義も無情ではないんですね。
後日すっかり体調の良くなったかいるの猛抗議により、僕らはまた集まることになりました。
今度こそ、事件の真相を突き止めるためにね。
(もしかしたら)第二審へ続く(かも?)
おまけ
ボドゲマン、氷結界の龍トリシューラ説
(けーし=松田 しんちゃん=クラウド)