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「REVERBERATION」 Nerholさん個展 - TheMass
前日の予報では20℃に達する曇りとされていた土曜日。実際、12月なのに上着がいらない暖かさ、予報に反した陽射しの中、神宮前のThe Massを訪れました。前回訪れたのは、John Pawsonさんの写真展でした。
お目当ては前日にTOKYO ART BEATで知ったREVERBERATION。飯田竜太氏と田中義久氏のお二人によるユニット(?)、デュオ(?)であるNerhol(ネルホル)の個展。飯田氏は彫刻、田中氏は紙のグラフィックデザインをバックグラウンドに持たれているのだとか。
TOKYO ART BEATで紹介された花と緑の空気感に惹かれての訪問。
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表参道周辺はすぐに離脱したくなるような大混雑のChaosですが、TheMassでは静かにゆったりと作品を感じることができます。
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写真のようにも絵画のようにも見える素材を元に、いずれも優しい色味が心地よい。それが単なる平面の作品なのではなく、重ねられた紙が破かれて階層をなし、表面を削られ、独特の質感と空気感を生み出しています。
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The Massの装飾性が廃され無機質でありながら心地よい建物と内装も手伝ってか、その作品のある空間が、優しさを表面に装いつつも、取り澄ました距離感も感じる。その一方で、どこか親密さも隠し持っているような、独特の魅力に溢れていました。
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一般的に「feel first , learn later」という表現がされます。私が絵画を鑑賞する場合、feel firstまでは良いのですが、その後のlearnがあまり無い。
それだけではなく、前日にTOKYO ART BEATを読んで知っていた、帰化植物がテーマということもすっかり忘れて、ただただ作品のある空間を感じることのみに没頭していました。一通り作品空間を堪能した後にステートメントを読むまでは。
まだアルツハイマーに悩む歳には程遠いのですが。。
ステートメントはRoom1とRoom3に用意されたQRコードでPDFデータとして
ダウンロードをすることができます。
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重ねられた紙が奥行きを作り出している作品ですので、作者の意図かどうかは不明ながら、このような部屋に射す冬の柔らかな光も、陰影と共に作品の表情を深めていました。
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テーマとなっていた帰化植物。
その作者の意図は、ステートメント無しには、残念ながら私には読み取ることはできなかったと思います。
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帰化植物や帰化動物を考えてみると、既存の生態系を破壊するので、その乱入を防がねばならないものという知識が立ちます。環境省などが特定外来生物を指定して対応をされていますし、国外に目を向けても植物などの持ち込みは厳しく制限されることが多い。固有種の環境を保護するにはもっともな対策だと思います。私が好きで愛でているハルジオンも帰化植物なのですよね。しかし、そう言う意味では、米(稲)も大陸から渡ってきたものですから、帰化植物なのですよね。作品空間から離れて、言葉の意味だけを取り出して頭で考えていると、そんなことばかりを考えてしまいます。
ステートメントを読まずに、まず作品空間を感じるだけでは、作者が帰化植物をテーマとされたところまでは読み解くことができなかった。
しかし、そんな私でも作品空間は心地よかった。
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ステートメントにはこうあります。
「写真でもあり、彫刻でもある。」
これは事前の情報なしに作品の前に立っても感じることができる。
「瞬間でもあり、歴史でもある。」
「私たちとは全く異なった時間軸の中で歴史的に生き残ってきた帰化植物は生命力と環境への適応力に溢れ、逞しさと美しさを湛えています。」
「柔軟性や多様性、他者への理解が必要とされる対話という行為を繰り返しながら作品を生み出していく形式」
これらはステートメントを読んでから知ることができる。
まず予備知識なしに作品空間を感じ取ってみて、その後に、ステートメントを読んで作品に対面して考える。そんな楽しみ方ができる作品群のように思います。
皆さんも是非ともその空間に身をおいてみてください。
12月26日まで開催されています。