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アンドリュー・ワイエス展 追憶のオルソン・ハウス 大山崎美術館

京都に帰郷の機会に、気になっていたアンドリュー・ワイエス氏の展覧会へ。

大山崎美術館を最初に訪れたのは、安藤忠雄氏設計のモネ氏作「睡蓮」が展示されている建物が増築された頃ですので、かれこれ40年近く前でしょうか。特に隠している訳ではありませんが歳がばれますね。
普段はその睡蓮と民藝作家であるバーナード・リーチ氏の常設展の美術館といったイメージがあります。最後に訪れた時は、今回の主展示会場となった棟は無かったような。。

大山崎の地はサントリーの蒸留所があることで有名ですが、大山崎山荘は近くはありますが駅の反対(北)側の静かな山間にあります。今はアサヒビールの持ち物。
元々は風光明媚の地に建つ山荘であったものを美術館とされたので、瀟洒ではありますが、規模は大きくありません。眼下の景色は今や見る影もありませんが、広いお庭が心地よい場所でもあります。

大山崎山荘

いつものことで恐縮ですが、アンドリュー・ワイエス氏のことを事前に存じ上げていなかった私。故人ではありますが、米国ではかなり著名なアーティストのようです。美術展で作品世界に没頭するのが好きなのに、まったく成長しない素人な私です。
同氏の数多くの作品群の中から、今回はオルソン・ハウスにまつわる作品群によって今回の展覧会は構成されています。オルソン・ハウスとは、オルソンさん姉弟の家、ワイエスさんの別荘の近くに住む、奥様を通じてお知り合いになったこの姉弟が住まわれる、素朴でありながら清潔感溢れ、洗練すら感じさせるオルソン・ハウスが描かれています。
館内は作品を含め写真撮影は禁止。今回も私の拙い文章での感想文となります。
尚、入館すると頂ける作品リストはA4の一枚紙に加えて小冊子。この小冊子が秀逸で、全作品がサムネイル(?)と共に紹介されています。

特に惹かれた作品をいくつかピックアップして感想を述べたいのですが、その前に、全作品を見終わった後の感想を。
今回の全ての作品は水彩画です。初期の作品子を一目で水彩画と分かる表現となっているのですが、後半の作品群は、その表現の荒々しさと奥行きから、とても水彩画とは思えないものが多いのです。後述する代表作「47. オルソンの家」の雪面、「19. オルソン家の納屋の干し草置き場」の板の間、その質感の深みは、その作品全体の構図や表現と相まって私を引き付けて止みませんでした。どうも、ドライ・ブラッシュという技法によるもののようですが、大好きな岩絵具の表現に通じるものがあるような感覚を素人の戯言ながら抱いたのでした。

さて以下は特に惹かれた作品の感想。

「1. オルソンの家」
同じ名前の作品が多いので、作品リストの番号で分類。
初期の水彩画らしい表現で描かれたオルソン・ハウスの遠景。
決して色彩が豊かなわけではなく、どちらかと言うと色彩は暗めで押さえ目の作品なのですが、決して陰鬱ではなく、オルソン・ハウスを望む草原に立っている私の頬を、涼やかで芳しい風が撫でてくれるかのような心地良さを感じる作品でした。

「19. オルソン家の納屋の干し草置き場」
上述の板の間の質感に惹かれた作品です。
構図としては、その名の通り特に主題となる対象があるわけでは無い、タイトル通り納屋の干し草置き場。その干し草すらない空の納屋。そこに開け放たれた入り口から暖かな光が射しています。その光を受けた床の木板、干し草置き場の壁面の木板の質感がなんとも言えない深みを感じる質感なのです。
ごめんなさい、この説明では全くどんな絵か分かりませんね。是非とも作品を実際にご覧になってみてください。今回の図録では無いものの、以前に新潟で展覧会が開催された際の上質な画集が販売されており、紙質も印刷も非常に優れたものだと思うそれなのですが、本作品に限らず、原画を見た印象を全く受けなかったので、買うのをやめたほど。逆に言えば、原画を見なければ、この作品の構成や構図が心の琴線に触れることは無いように思えます。

「47. オルソンの家」
上述の作品であり、メインビジュアルにもなっている作品です。
雪原の奥に建つオルソン・ハウスを描いた作品。それだけ書けば、一応、説明は終わってしまう作品です。特に凝った、考え抜かれた構図があるとも思えない。しかし、前述の繰り返しになりますが目の前に広がる雪原の質感、奥深さが私を惹きつけてやまないのです。決して新雪の美しい雪原では無い。どちらかと言うと、草原を薄く覆った雪。ところどころ見え隠れする枯れ草。それが忘れられない景色となって脳裏に焼きついています。


それにしてもこの展覧会、展示スペースの問題もあるのでしょうが、前期と後期でほとんどの作品が入れ替えになって、通期展示作品の方が少ないほど。
後期も観たいなぁ。後期にこの為に新幹線に乗って再訪しようか。そう思わせるほどの魅力のある作品でした。

安藤忠雄氏設計の別棟
展示室はこの地下にあります

そうそう、バーナード・リーチ氏の作品も、別棟のモネ氏の作品も素敵でした。
睡蓮は大きな三点が展示されている内、向かって右側の作品が好みかな。

今回の展覧会は、朝霞市の丸沼芸術の森の所蔵品によるものですので、関東在住の皆さんはそちらに戻ってからご覧になれば良いように思いますが、大山崎山荘という場所の空気が、より展覧会を引き立てていたようにも思います。

秋明菊

そうそう、一つ前のnoteで貴船菊と秋明菊について書きましたが、大山崎山荘のお庭には数は少ないですが秋明菊が植えられていました。秋の心地よい展覧会日和でした。
その後、せっかくなので天王山と観音寺などを散策して駅に向かいました。


山頂は意外と眺望のない天王山
山崎の合戦図
観音寺
観音寺
観音寺
観音寺

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