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市ノ川 倫子さんの作品展でその世界観に耽溺する ソニーイメージングギャラリー銀座

104 GALARIEを後にして、人通りの少ない道を選んで夏の渋谷を徘徊し、銀座線に乗ってソニーイメージングギャラリー銀座へ。
お目当ては市ノ川 倫子さんの作品展「Even if the sky cracks and drops lies」。

私は、いつも美術展を拝見する際に、その説明文をまずは読まずに作品に対することが多く、ひどい時は、説明を読まず終いということも度々です。もちろん例外も多いのですが。
ですが、市ノ川さんの作品展では、是非とも入り口すぐに飾られているその詩を読まれることをお薦めします。

この作品展を知ったのもつい先日。SNSでお見かけしたからでした。恥ずかしながら(ばかりですが)、市ノ川さんのことはそれまで存じ上げず。しかし、紹介されていた作品世界、タイトル写真の作品が、小さな画面で見ていても私を惹きつけて止みませんでした。
中でも最も惹かれたのが次の作品。

森の水辺、咲き乱れる花。
その世界は、このような夢の中に耽溺したい。いや、耽溺してしまうと抜け出せなくなるでしょうから、いずれ訪れるであろう臨終の折にはこんな夢の世界の中にありたい。せっかくの作品を少々抹香臭い表現で汚してしまっては申し訳ないのですが、そのように感じた魅惑的な世界がそこにありました。夢のようでありながら、何故か懐かしさのような、安心感のようなもので心が満たされる。

その他にも夢の中の世界の数々。
さほど広い展示空間ではありませんが、心地よくその中を浮遊したような心地がしました。
ギャラリーでは、市ノ川さんの写真集も販売されており、今回の作品たちが収められた写真集と、「しのぶれど」と題された大判の写真集も我が家にお迎えしました。

この作品集、和歌をモチーフにされたもの。その和歌が何首か綴じられています。

しのぶれど
いろにでりけり わがこひは
ものやおもふと ひとのとふまで

平兼盛

和歌の持つ言葉の曖昧さ、一つのことばにいくつもの意味を付与される和歌と、多重露光で現出されるご自身の作品世界を重ね合わせられたのだとか。

この心地よさ、懐かしさに浸りつつ、伽羅の香を聞きながら、非日常の世界の中でnoteを書く穏やかな夏の夜でした。

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