LIGHT光 テート美術館展へ
光の洪水に溺れそうな灼熱の夏。
仕事を休んで午後にテート美術館展を観に東京新美術館を訪れました。芸術の秋と言いますが、真夏日が続く今ごろは美術館巡りに適した季節でもあります。館内はもちろん涼しい。
いつも通り、専門的な解説は図録や他の方のnoteをご参照いただくとして、芸術に関して素人の私が感じるままに、惹かれた作品について感想など連ねて参ります。僅かでも美術展を訪れてみようというきっかけになれば幸いです。
展覧会のテーマはLIGHT 光。
時代の古いものから順番に、光がどのように捉えられ、表現されてきたのかが分かる構成となっています。
尚、撮影不可と書かれた作品、部屋以外は写真撮影が許可されています。
ただし、動画は撮影禁止
今回、私の一番のお目当てはターナー氏のこちらの作品。
「湖に沈む夕日」 ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー氏作
なぜなんでしょう。タイトルを見ずとも、この作品が水辺の向こうの朝日か夕日かの光の洪水とわかる。そして心が喜び絵に惹きつけられる。
しかし、仔細に見ようとすると、具体的な地形や光源が描かれているわけではない。まさに「LIGHT 光」がテーマの展覧会に相応しい作品。
エヴァンゲリオンの古典版のようなミルトンの失楽園も同様の画風で描かれていますが、そちらはあまり惹かれることはなく、この湖に沈む夕日の前で、他の方の迷惑にならないよう、少し後ろからずっと見入っていたのでした。
取り立てて魅かれた作品というわけではありませんが(失礼)、赤富士のようで、水面の月光が美しいと感じた作品。
ジョン・エヴァレット・ミレイ氏作 「露に濡れたハリエニシダ」
この絵がというよりは、この絵で描かれているような霧が晴れようとしていて露に濡れた森の情景が好きなものですから惹かれた作品です。その時代にはまだ存在していませんが、絵ではなく写真でも良いようにも思います。
実際に山を歩くときでも、このような情景を求めて目的地を決めることが多い。
ジョン・ブレット氏作 「ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡」
タイトル写真の作品、上はその部分。
スタジオジブリ的な光と空と雲と海。母を訪ねて三千里的な。
ジブリの方がもう少し表現が淡いでしょうか。
ここに飛行艇やプロペラ機が飛んで横切っていそうな。
優しさと慈愛に満ちた光に根源的な優しさが身体の内から引き出されそうな心地がしました。
ヴィルヘルム・ハマスホイさんの作品も二点ほど。
ゲペシュ・ジェルジ氏作 写真作品
「構造のフォトグラム」
「光の反射(歩道の水たまり)」
「枝」
「しずく」
「円と点」
「光の反射」
写真撮影禁止の部屋に、何人かの方のモノクロ写真作品が展示されています。
その中で私が惹かれたのが、上述のジェルジ氏の作品群。
事前にまったく存じ上げない方。
どちらかというと、作品としてよりは光の反射や屈折、散乱など実験にその関心が向けられていた作家の方のようです。しかしなぜか切り取られた画面に妙に吸い寄せられる作品群でした。
マーク・ロスコ氏作 「黒の上の薄い赤」
写真撮影不可の作品。
どちらかと言うと、タイトルとは異なり、赤の中の四角い薄い黒といった印象。
どこが良いのかと問われても、私の語彙力と表現力では、明確に言葉にして伝えるのが難しい。刺激的で無機質な赤というよりは有機質な朱の中、単色ではない、墨絵のような黒の先に奥行きを感じる。そこに惹かれたのでしょうか。。
ペー・ホワイト氏作 「ぶら下がったかけら」
もう少しタイトルを考えて欲しかった。
ぶら下がったかけらに当たる光とその影。
その影が映される地面は、フローリングではなく無機質なコンクリートや白漆喰などの方が良かったような気もします。
ゲルハルト・リヒター氏作 「アブストラクト・ペインティング(726)
昨年のリヒター展まではあまり存じ上げなかったリヒターさん。
(そういえば、リヒター展の頃にはまだnoteを始めていませんでした。)
その後、下記のポーラ美術館やいくつかの展覧会で目にする機会も増えて。或いは、今までは目には映っても見てはいなかったのかもしれませんが、最近はその作品が妙に気になって仕方がない。
リヒターさんの作品としては、どちらかというと淡い表現のものを好んでいました。リヒター展の際の以下の展示作品のように。
その時は、かの有名な下記のビルケナウなどアブストラクション作品群はよく分からないというのが感想でした。
(ビルケナウは、作品鑑賞後、後日にユリイカのリヒター特集を読んでその意味の深さを知りましたが、作品のみからはそれを窺い知る洞察力は残念ながら持ち合わせていない。。)
目にする機会が増えて、その作風に慣れて親しみが増えたのか、或いは多少なりともその作品の意味と魅力が分かるようになったのか。。後者の可能性は低いように思いますが。
しかし遠くからでもリヒター氏の作品とすぐに分かり、しばらく絵の前にじっとしている自分がいるのですよね。元々は前衛的な作品はどちらかと言うと苦手なのですが、不思議です。(※しかしパウル・クレーさんは最初から好きだった)
ジュリアン・オピー氏作 「トラック、鳥、風」
ジュリアン・オピー氏は2019年にオペラシティアートギャラリーで開催された展覧会で触れて好きになった方。今回は三作品が展示されていましたが(アクリルカバーの反射が強かったので写真は無し)、そのなかでも森の彼方の月明かりを描写されたようなこの作品が、オペラシティで拝見した作品とはまったく異なる印象を受けつつも魅力を感じた作品でした。下の四枚の写真はオペラシティでのジュリアン・オピー展で撮影したもの。
実際に今回のテート美術館展での「トラック、鳥、風」と「雨、足跡、サイレン」「声、足跡、電話」の三作品と、上記四枚の写真にある作品群との作風の違い、それらを現地でご覧になって感じていただければと思います。
オラファー・エリアソン氏作 「星くずの素粒子」
そして展示会の最後を飾るのがこの光のオブジェ。
前からしばらく動けなかった作品群の感想でした。
そうそう、「LIGHT 光」というテーマであれば、この国立新美術館の建物そのものが相応しいのではないでしょうか。
涼やかな空調の中で心地よい時間が過ごせた夏の日でした。
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