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森の空気感を堪能 湯浅 克俊 氏 「Fragmentary」
梅雨らしいしとしととした、いや、スコールのような暴力的な雨も時折混じるので、昔馴染みの梅雨とは異なる雨の週末。私にとって雨の日は読書の日。でもあり、芸術鑑賞の日でもあります。
今日のお目当ては湯浅克俊氏の作品展、「Fragmentary」。
写真をベースにされた版画の作品展です。
場所は茅場町の 「GALLERY YUKIーSIS」。
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展覧会を知ったのは、ネットのどこかで、確か、TOKYO ART BEATだったかな?静かな森の作品に惹かれての訪問です。
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この大きな作品も木版画。
展示点数は決して多くはありませんが、いずれもしばし前に佇んでその空気感に浸りたくなる作品ばかり。
そんな中で特に惹かれたのがタイトル写真でもあげているこの三作品。
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私は山を歩くのが好きで、雪と氷の冬山や、岩陵が連なる高山も好きなのですが、雨に濡れた苔の森や、霧に包まれた静かな森を逍遙するのも度々。
写真を撮ったり、ただただその空間に同化するかのように何十分も座っていることもよくあります。
これらの三作品は、都会のビルの中に居ながら、その空気の中に身を置いているかのような錯覚に囚われます。小さな作品なのですが、そこから森の少し湿り気を帯びた香しい冷気が漂い出るような。
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これらの作品は、写真に納めた後、Photoshopで縦の細かな線にして、それを板木に彫っていかれるのだとか。縦の線のそれぞれの微妙な太さの違いだけで、一度の単色の刷りで、この繊細な森の中の霧を表現されているとのこと。
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その技術はもちろん高度で根気のいるものだと思います。
素人の私には想像の外にあるもの。
ただ、それよりも何よりも、私はこの作品の空気感を受け取って表現される湯浅氏の感性に、厚かましくも勝手ながら強い共感を覚えてしまいました。
販売もされているので、是非とも自宅に迎えたいという衝動に駆られながら、最近何点か作品を迎えて、すでに狭き自宅の壁にゆとりが無いと我に帰り、断念。
この気持ちの余韻を振り返るため、小さな小冊子だけ分けて頂きました。
心地良い雨の休日のひとときを過ごすことができました。
展覧会は本日(7/1) 19時まで。