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如意越 南禅寺から園城寺までの散策
帰郷した秋の週末、あまりに気候が良いので、以前から訪れたいと思いつつも、あまり縁のなかった園城寺(通称 三井寺)へ、如意越で訪れようと思い立ちました。
まずは南禅寺へ。天授庵の檜皮葺からスタート。
旅行キャンペーンが始まった週末で戦々恐々としていましたが、まだ土曜の午前中、紅葉の最盛期には1ヶ月ほど早いとあって、混雑と言うほどでは無く良かった。
少し人だかりの水路閣をくぐり、鐘楼の脇から勝手知ったるトレイルへ。
ここからは人もまばらな静かな散策路。
木が伐採され、林道が無惨に横切る辺りに来ると、間もなく大文字山と如意越の分岐です。
せっかくなので、大文字山山頂に寄り道。三等三角点があります。
南西方面に開けた展望のある休憩適地。火床からほど近いとあって大勢の方が楽しげに休まれていました。今日の私はここが目的地では無いので、秋空を少し楽しんでから移動。
慈照寺と火床、南禅寺の間はお気に入りの散策路ですので、何十回と歩いていますが、如意越は実は初めて。さらに人が絶えて木々が風で揺れてこすれる音を聞きながら、静けさの中を散策。
道の脇にある雨社にもご挨拶。紋が北条家と同じなんですね。
如意ヶ岳のピークを目指します。
しかし、頂上には大阪航空局大津航空無線標識所があり周囲がフェンスに覆われており立ち入れません。航空管制用のビーコンを送る大切なインフラなのでやむを得ません。フェンスの周囲を回り込み、しばらく舗装路を進みます。
土の道に戻ってしばらくすると、左手に惹き寄せられるような不思議な空間が。
巨石が広い空間の中に結界のように配されて、明らかに人の手が加わっているようです。戻ってから調べると灰山庭園遺跡と言うらしい。この一帯には、応仁の乱までは如意寺と言う園城寺の支寺があり、その規模は京都側の鹿ヶ谷から、近江の園城寺までの広範囲に渡って堂宇が林立していたとのこと。その様子が「園城寺境内古図」と言う絵図に残されています。
かつては比叡山を借景とする美しい庭園だったのでしょうね。
それにしてもあまり長くいてはいけないような吸い込まれるような空間でした。
園城寺の正式名称は「長等山 園城寺」と言うのですが、その山号を冠した長等山頂上からは間近に琵琶湖が望めます。真下にマンションが見えるので風光明媚と言う印象では無いのは残念。
そこからやや急な空気の重い山道を下って砂防ダムを過ぎると、程なく園城寺です。
まずは南の端の観音堂へ。
西国三十三所観音霊場の第14番札所だとか。
琵琶湖は間近です。
観月にちょうど良さそうなと思ったら、本当に観月舞台とのこと。風雅です。
茶店に寄って力餅とほうじ茶を頂いてから寺の中心部へ。
その前に苔むしたこちらの参道を進んで。
木々の間から繊細な宝珠と相輪。
三重の塔です。
隣は灌頂堂。屋根が少し痛んで草が生えていますが、檜皮葺だとそれも風情と思えてしまいます。檜皮葺が好きなので、かなり贔屓目で捉えてしまっています。あばたもえくぼか。
さて本日のお目当ての第一。檜皮葺の曲線美が見事な金堂です。
近年に屋根は葺き直されたのかな?一際美しいです。
国宝にも指定されているこの金堂。比較的新しくて、寧々こと高台院が秀吉の死後に寄進したもの。
園城寺は何度も延暦寺による焼き討ちを受けて焼失、最後は秀吉により破却され、当時の金堂は延暦寺の西塔に移築されてしまって、今も比叡山内にあります。
たとえ新しくても、このような美しい檜皮葺を愛でることがで出来て幸運です。
もう一つのお目当てがこの小さな阿弥陀堂。
大好きな檜皮葺ではありますが、お目当ての理由は、この建物がかつての御所の清涼殿と伝わるから。最初は室町時代頃に作られた建物のようです。
今、我々が京都御所で見られるような大規模で立派な清涼殿は、寛政期に幕府によって再建されて以降のものです。
南北朝以降は朝廷の権力基盤は有名無実化し、応仁の乱以降はパトロンの足利家も没落したので、経済基盤は脆弱。このような小さな建物が天皇の住まいであった歴史に思いを馳せました。
あとひと月も経たずに境内の紅葉も盛りを迎えるでしょう。
小学校の遠足で訪れた琵琶湖疏水の第一疏水を横目に浜大津駅に向かいます。
疏水は園城寺の下を通って山科経由で蹴上の浄水場、発電所に向かいます。
心地良い涼やかな秋の週末。充実した楽しい散策を楽しむことができました。
(注)観光のような散策ですが、如意越は山道。ところどころ標識はありますが、分岐もあり、日が暮れれば街灯も無く暗闇になる場所です。山慣れない方が不用意に観光地の想定で立ち入ることはお薦めしません。