【2023年版】苦情の多いD2C企業一覧 化粧品・健康食品 通販企業の苦情グラフ
インターネット広告で化粧品・健康食品を宣伝している会社について、2022年11月から2023年10月までの12ヶ月間の苦情件数を分析し、グラフ化した。
この文書の意図
この記事は、一般消費者への情報提供を意図している。
消費者は通常、「苦情が多い会社の商品は買いたくない」と考えるだろう。その観点で、苦情の数を集計した。
以前、同じ視点で2つの記事を書いた。そちらでは、
2021年7月から2022年6月のデータ
2022年1月から12月のデータ
を対象として集計していた。
この記事では、2022年11月から2023年10月までのデータを集計した。前回と比較して、10ヶ月ぶん新しいデータになった。
注意
この記事で分析しているのは、あくまでも「苦情件数」のみだ。筆者としては、有益な指標のひとつになるだろうと考えているが、これだけで悪質性を強く断言できるとは思っていないので、その点を最初に申し添えておく。
データの出典など
苦情件数の期間は2022年11月~2023年10月の12ヶ月間。出典はPIO-NETだ。
PIO-NETは、「苦情相談情報(消費生活相談情報)の収集を行っているシステム」だ。日本各地の消費生活センターなどに寄せられた苦情相談情報が記録されている。
売上情報などは、主に各社のIR情報から得た。
苦情件数グラフ - 年間件数
まず、前回調べた2022年1月~12月の苦情件数グラフを再掲する。
これに、2022年11月~2023年10月の苦情件数を書き添えると、下記のようになった。
2023年10月までの数値の大きい順に並べ替えると、以下のようになる。
筆者が調べた中では、CRAVE ARKS(クレイブアークス)への苦情が最も多く、9,945件だった。前回と比べ、7,864件の増加だ。
PIO-NETに記録された苦情の中で、化粧品・健康食品に関するものは、全企業の2022年の年間総合計で110,408件だ(79,793件+30,615件)。
国内の苦情の年間総合計が 110,408件 であるのに対し、CRAVE ARKSへの苦情件数は 9,945件 だった。この件数から、CRAVE ARKSへの苦情は、化粧品・健康食品の苦情全体の9.01%を占めている、と推測できる。
算出式は単純な割り算だ。
9,945件 / 110,408件 = 9.01%
それぞれの会社について
細かなコメントを会社ごとに記述する。
CRAVE ARKS
前回調査:2,081件
今回調査:9,945件
CRAVE ARKSは、ECサイト「きらびか公式ショップ」を運営している。
CRAVE ARKSを巡っては、消費者団体である「京都消費者契約ネットワーク」が訴訟を起こしていた。
この訴訟では、CRAVE ARKSが行っている「定期通販」の広告表示について争われ、CRAVE ARKSが勝訴した。
苦情は発生しているが、この判決では、CRAVE ARKSの適法性が認められた。
トラストライン
前回調査:2,270件
今回調査:5,143件
トラストラインの苦情件数は、前回調査では2,270件であったのに対し、今回は5,143件だった。前回調査の件数に対し、2倍以上に増えている。
トラストライン株式会社の商品は、ミカホワイト、ペルルセボン、キラーバーナー、TENALなどだ。
この会社は、芸能人を多く起用している。アンミカ、篠原涼子、倖田來未、仲間由紀恵などだ(敬称略)。
トラストラインの事業規模は大きい。上場企業である株式会社ブリーチの主な取引先として名前が挙がっている。
エムアンドエム
前回調査:4,136件
今回調査:1,706件
エムアンドエムは、二重形成液の「ナイトアイボーテ」などを販売している。
このエムアンドエムは、令和5年3月28日に、東京都から措置命令を受けた。
苦情件数を6ヶ月ごとに確認すると、2022年11月からの6ヶ月では 1,646件 だったが、2023年5月からの6ヶ月では 60件 になった。措置命令の時期を境として減ったようだ。
北の達人コーポレーション
前回調査: 464件
今回調査:1,560件
北の達人コーポレーションへの苦情は、前回調査から比較して3.36倍になった。
この会社は上場企業なので、売上などが公開されている。
そこで、簡単に苦情件数と売上・利益の推移をグラフ化すると、次のようになった。売上と苦情件数が、ともに増えている。
売上と苦情件数の数値で散布図を作り、最小二乗法で直線を求めると、以下のようになった。
直線の式は下記だ。
四半期売上(百万円) = 3.979 * 苦情件数 + 1805.8
極めて単純なモデルだが、仮にこの式を信じるなら、苦情件数をゼロにした場合、四半期売上は18.1億円、年間売上は72.2億円となる。
ファーマフーズ
前回調査:6,618件
今回調査:2,593件
ファーマフーズは、育毛剤の「ニューモ」などを販売している。また、子会社の明治薬品が「金蛇精絶倫伝説Z」「ラクトロン錠」などを販売している。
ファーマフーズと子会社への苦情件数は、前回調査では6,618件だったが、今回調査では2,593件になった。半分以下に減ったことになる。
なお、このファーマフーズも上場企業なので、売上などが公開されている。そこで、北の達人コーポレーションと同様に、売上と苦情件数のグラフを作成したが、相関関係などは感じられなかった。
ハハハラボ
前回調査:2,340件
今回調査: 896件
ハハハラボは、除毛クリームの「ジョモタン」などを販売している。
このハハハラボは、令和5年12月7日に措置命令を受けた。
今回の調査では、苦情件数が大きく減った。おそらく、措置命令が下るまでに消費者庁から指導があったのだろう。
一方、ハハハラボは、ヴィワンアークスという会社と代表者が同じであるようだ。どちらも「エドアルド・チャン」氏らしい。
このヴィワンアークスも件数が多く、冒頭のグラフに社名が入っていた。下記で触れる。
ヴィワンアークス
前回調査:446件
今回調査:722件
ヴィワンアークスは、機能性表示食品の「シボロス」などを販売している会社だ。
前述のハハハラボに対しては、措置命令が行われ、苦情は減っていた。しかし、ヴィワンアークスは、件数が増えた。
同じ代表者が同じ業種の会社を複数運営している。以前、消費者庁が行った検討会の報告書で、この状況に似た記述があった。
その報告書の記述は下記だ。「代表者が会社を複数作り、ひとつの会社を清算したあとも、別会社でビジネスを続ける」という手法だ。今回の2社は、状況のみを考えると、これに合致する部分が大きい印象だ。
主な行政のアナウンス
インターネット広告を介した定期通販の問題は、広く認識されるようになった。それにより、国民生活センターや政府広報が、多数のアナウンスを出している。
国民生活センター
独立行政法人国民生活センターは、インターネット広告を介した健康食品や化粧品の定期購入について、繰り返し注意喚起をしている。たとえば下記のようなものだ。
政府広報オンライン
インターネット広告を使った定期通販の問題は、政府広報オンラインでも取り上げられるようになった。大きな課題だという認識があるのだろう。
筆者の意見 - 広告ブロッカーを使おう
消費者は、生活を守るために、広告ブロッカーを使うことが望ましい。
悪質な定期通販は、多くがインターネットで広告されている。だから、インターネット広告をブロックすれば、たくさんの被害を防げる。
もちろん、インターネット業界にとっては、広告は必要だ。筆者も一般論としては、そのことに同意する。ウェブサイトやインターネット通信などを維持するためには、お金がかかるからだ。
しかし、2024年2月現在、インターネット広告には危険が多すぎる。悪質な定期通販の広告が表示されるようになって久しい。最近は、詐欺師の広告すら、日常的に見るようになった。
現在の消費者には、それらの危険な広告を受け入れる余裕は、なさそうだ。
消費者は、安全を確保したほうが良い。そのためには、広告ブロッカーを使うことが望ましい。
以上