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ピゴはASDだけど ~なんでもない日の3つの小さな話

エピソード1

前を歩いていた私の靴のかかとを、ピゴが踏んでしまった。
すかさず「あ、ごめん」と彼は言った。

エピソード2

「今日はパパの帰りが遅いから、晩御飯は3人で外で食べない?」
とピゴから提案があった。
チョコは他の遊びに夢中でまるで聞いていない。
「私はどこでもいいよ。チョコちゃんの好きなところで食べよう。私のデイが終わるまでに決めておいて」
そう言ってピゴは放課後デイへ出発した。

エピソード3

バスの二人掛けの席。知らない人の隣に座ったピゴ。
窓側に座っていたその人が降車ボタンを押した。先に降りるらしい。
バス停で、ピゴは席を立って降りるその人に道を空けた。
そして、空いた窓側の席にチョコを呼び寄せた。


エピソード1の母のひとりごと

人付き合いが極端に苦手なピゴ、挨拶がとても苦手。
「ありがとう」「ごめんなさい」だけはせめて言えるようになってほしい。
人はひとりでは生きていけないから、その挨拶だけは絶対言えるようになっておくのが得だ。
強制にならず、彼が「ありがとう」「ごめんなさい」を自発的に言えるようになるためにあれこれやってきたつもりだけど、なかなか言えないな…
と思っていたところでの、これ。
「いえいえー」と返した言葉は、自然だったかな。
震えていなかったかな。

エピソード2の母のひとりごと

ピゴは突発的な変更が苦手。
スケジュールの順番や場所にはこだわりがある。
ずっとそう思っていたけど、最近になり、実はそうでもないのかもと感じることがときどきある。
これもそんな話。
しかも、決定権は妹に譲り、決めるのは今でなくて、直前で良いと。

エピソード3の母のひとりごと

ASDは想像力の偏りがあり、社会的な情報を参照する力が弱いという。
他人がどんな行動をとるのか予測できず不安になり、こだわりが強固になる。
そうだと思う。
だけど、ひとつひとつ世界に対する安心を積み上げていけば、
バスで知らない人の隣りに座ることもできるし、
その人が降車ボタンを押せば、次降りるんだなということが予想できる。
そればかりか、ここに自分が座っていては邪魔になるからいったん立ったほうがよいという判断もできるようになる。
きっと彼は路線バスに1人で乗れるだろう。
それを現実のものとするためには、あとは何が必要なんだ??


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