どうしてコーチになったのか?
あるコーチィ(クライアント)が年末最後のセッションで、今日は私に質問されるより、私に質問したいと言った。それがコーチィのニーズだったので快諾した。「どうやってコーチになったんですか?」ずっと不思議だったのだそうだ。
確かに。言われてみれば、私もどうやってここまで来たのか不思議な気分だ。コーチになる前に、初めてコーチングを受けた時「なんて変な職業だろう」と思った。だって、臨床心理士のように心の病気を治すわけでもなく、占い師やヒーラーのようにスピリチュアルを売りにしているわけでもない。私に何を売っているかわからないことが仕事になっているのはどうしてだろう、と思った。
しかも、コーチは日常やコーチィの言うことだけを信じて話を進めるので、プロのアドバイスや霊的メッセージなどがもらえるわけでもなく、他人の言うことを信じたかった当時の私にとっては、とても物足りないサービスだった。
そんな私がプロのコーチになった。しかも、仕事にするには最も曖昧な「ライフ・コーチ」と呼ばれるエリアだ。
たぶん一番の理由は、運命の悪戯でこの道以外ない状態に陥ってしまったから。前職を失った後、仕事にはならないけど興味本意で色々な勉強をしていた。その一つがコーチングの基礎トレーニングだった。様々な勉強をしていたら、勉強が面白くなり辞められなくなってしまった。無謀にも、仕事探しをせずにそのまま大学院へ行ってしまった。そして、卒業した私を待ち受けていたのはパンデミックだった。
そうでなくても欧州の仕事探しは大変なのに、自分勝手な選択をしていた私に風当たりは強い。そこで思い出したのが、中途半端だったコーチングのトレーニングを終えて、国際組織の認証を受けること。そうこうしている内にパンデミックは治るだろう、と思っていたのも甘かった。日本に戻れなかった2年間、本腰を入れてコーチングをやることになった。
コーチングのトレーニングで出会ったピア・コーチたち。彼らがいなかったら、今の私はコーチをやれていない。プロでもアマでもコーチングを学ぶのは実践、実践、実践。パンデミックの最中、彼らとインテンシブなコーチングのギブ&テイクを何十時間もやっていた。前代未聞の社会では、大小様々な問題が生活に起きる。それを話せていたから、私の心のバランスは保たれ、常に解決策を見つけることができた。
そして、基礎トレーニングが終わり俯瞰したとき、半世紀以上ぶち破れなかったいくつかの壁を、コーチングにより突破していたことに気が付いた。10年以上もの間、仕事の傍ら、高い授業料・旅行代を払って自己啓発・心の声を聞くセミナー、レクチャー、トレーニングに参加していた。それは、仕事や会社に関係なく、自分の中にあった満たされない大きな空洞があったから。それをもっと知りたいと思ったし、克服の仕方を学びたかったから。でも、無理だった。それが、コーチングによって自然に消えていたのだ。
写真:私がコーチングの基礎を勉強した学校コーチ・コンパニオン / CoachCompanion(スウェーデンのマルメ市)のリビングルーム。インターナショナル受講者向けオンラインコース(英語)もあります。お問い合わせは私まで。