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志望校に受からなかったからこそ1

 今年もまた、受験シーズン到来ですね。

 この時期になるといつも、「みんな、志望校に合格できますように」と祈りながらも、「志望校に合格できなくても、人生意外に面白い展開になるかもよ」と思っている私がいます。高校受験で志望校に受からなかったから今の自分があるような気もするからです。

 小4から高3まで、京都に住んでいました。当時の京都の公立高校は、28年続いた革新府政の名残で、受験戦争をなくすため、小学区制。一つの公立中学からは一つの公立高校にしか行けなかったのです。私が通っていた市立中学から進学できる、近所の府立高校は、「○×△が書ければ合格できる」と陰口をたたかれていました。中学の同級生の上位2割くらいの生徒が国立や私立の進学校に進み、残りの8割はその府立高校に進学したでしょうか。

 私はといえば、全寮制の高校に行きたいと考えていました。親元を離れたいという中二病的独立心と、小学生のころからの愛読書『あしながおじさん』『赤毛のアン』で描かれた寮生活への憧れから、選んだのは、東京の自由学園という私立の高校。全寮制ではないけれど、地方出身の生徒のための寮のある、大学受験の予備校的な高校とは一味も二味も違う、独自のカリキュラムを持った学校です。創立者である羽仁もと子・吉一夫妻の理念に共感した親に勧められました。

 親元を離れたいのに、親に勧められた学校を受験するというところが、よく考えたらすでに親に依存しているし、当時すでに脳内には「北の国から」のBGMが流れていて3年後には北海道に移住する計画だったのですが、その前に東京で3年間寮生活する、という青写真が生まれました。

 学校見学に行った私は、この自由学園という学校にすっかり魅せられてしまいました。広い芝生の校庭に点在する、フランク・ロイド・ライトの設計で建てられた平屋の洋館の暖房は石炭。全寮制で、一日三食を生徒自身が当番制で作る。土曜は芸術の日で、一日中絵を描いたり楽器演奏をして過ごす。小説を読んでみんなで議論する授業がある、男子は(なぜ男子だけなのかは残念でしたが)入学後にまず自分の使う勉強机と椅子を自分で作る、畑や養蜂場があって生徒たちが授業の一環で農作業をする、などなど。面白そうでしょ?

 試験は三日にわたって行われました。もう細かいことは忘れてしまいましたが、芝生の上で体育実技の試験があったり、論説文を読んでグループで車座になって議論したり、英語の試験では真っ白な解答用紙が配られて、室内の様子が描かれたイラストを見てそれを説明する英文をひたすら書いていく、とか、理科の試験では先生が教壇で化学実験をするのを見て化学式を書け、とか。とにかく朝から晩まで面白いことの連続でした。事前に三本の作文を提出したり、本人と保護者のそれぞれとの面接もありました。

 こうした型破りな試験を受けて、ますます自由学園に行きたくなりました。試験も良くできたと思ったし、「私のような子のために作られた学校だ!」と、自分の居場所を見つけた気になって合格通知を待っていました。

(写真は色丹島の猫)

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