「言葉にできない」を乗り越えて ~ヒトの「声色」とコーヒーと?~
「あー、何て言ったらいいんだろ・・・」音楽と関わっていると、こんな感覚をよく覚えます。
“友人のサックスアンサンブルの小さな演奏会。「(心の中で)あぁ、とっても良い音だなぁ。なんと言うか、ギュッとしていて、キラキラ?みたいな・・・」。言葉にできない感覚。でも確かに心が動いているのはわかる。でも上手く言えない。ステージの演奏者にはいつもより大きめな拍手を頑張って送り、ロビーに出てきてくれたら少し力の入った明るい笑顔をつくる・・・。”
このように、「言葉にできないけれど確かに感じているこの気持ち」のようなもの、「この気持ちはなんだろう」を経験したこと、皆さんも一度はあるのではないでしょうか?
声色の表現
私にとって、言葉にできない代表格のひとつが「声色」です。
自分の声色を言葉で表現してと言われたら、けっこう難しいかもしれません。みなさんは、「私の声はこんな声です」と説明できますか?
落ち着いた声、でもとっても低いわけではない、太くもないけど細くもないかな・・・。声色にも「言葉にできない」要素はたくさん含まれているように感じます。
ヒトの声色には、いろいろなものがあります。その人しか持っていない魅力、個性とも言えるかもしれません。自分では意識していなくても、「あなたの声はとっても○○な声だね」と言ってもらえたら、なんだか嬉しくもなる気がします。でもそんな声色を褒めてあげたい、「○○な声だね」と褒めてあげたいときに、カチッとハマるような言葉を見つけるのは、とっても難しいことですよね。
コーヒーの「Flavor Wheel」?
さて、少し話題は声色から離れます。皆さんは、コーヒーはお好きですか?世界第3位(2017年)のコーヒー豆輸入量を誇る日本ですが、日本のコーヒー文化の中でも2000年代以降に盛り上がっているのが、「スペシャルティコーヒー」です。
「スペシャルティコーヒー」は、産地によって味や香りの異なる魅力を楽しめるコーヒーのことです。その魅力を伝えようと、街中には自家焙煎のビーンズショップや、コーヒーメニューの種類が豊富なカフェも増えました。
産地や品種による味や香りの違いを表現することは、非常に繊細で、感覚的な作業になります。そこでコーヒー業界が用いているのが、「Flavor Wheel」です。これは、アメリカのスペシャルティコーヒー協会が出しているもので、コーヒーの微妙な味や香りの違いや特徴を、様々な例えによって分類したものです。
つまり、コーヒーの業界では、言葉にできない微妙な違いや、感覚的で主観的な表現になってしまうことを解決するために、細分化された「例え」でその違いを表現することに成功したのです。
“フルーツのような酸味があるなぁ。酸味といってもベリーのようなじわっとした酸味じゃなくて、柑橘系の爽やかな酸味に似ているかもしれない。消えるような酸味の残り方はレモンに近いかな・・・。”と言った具合です。
この「Flavor Wheel」のすごいところは、その細かさももちろんですが、これが全世界の共通言語として、コーヒーを評価する客観的な基準として定着していることです。これによって、感覚的な味覚や嗅覚を確かに言語化して、さらにそれが客観性を持って他の人と情報交換ができるのです。よくできています・・・。
Voice Wheel?
言葉にできない感覚を、「例え」ることによって乗り越えたコーヒーの世界を見てきました。これを見たときに、私は思いました、「音楽でも同じようなものが作れないか」と!
今回は一つのチャレンジとして、言葉にできない「声色」の違いを、「例え」によってうまく分類ができないか、チャレンジしてみました。その名も、「Voice Wheel」。声色についてのタイプ分類を試みている、コーダアライブのコウタローさんのサイト の情報も、参考にさせていただいています。こうして並べてみると、なるほどと思う部分もあれば、ちょっと主観的な私の聴き方も入っているのかなとも感じます。
このように「例え」を用いることで、「良い声だね、小田和正さんのように、素直で透明感のある声だね!」というように、「言葉にできない」ものも言語化できるのではないでしょうか。
今回は、コーヒーにヒントを得ながら、音楽の「言葉にできないもの」について考えてきました。
音楽そのものは日々進化し、多様化を続けています。しかしその一方で音楽をどう聴くか、どう言葉にするか、音楽の受け取り方にも、まだまだアップデートできる余地があると感じます。
身近なことから得られるヒントで、音楽は今よりもっと私たちを楽しませてくれるのかもしれません。
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