ポメラ日記93日目 読む、書く、走る
読む、書く、走る
僕は在宅のライターとして活動していて、必然的に椅子に座っている時間が長い。どうしても作家になりたい、と考えていた頃は、一日のすべての時間が小説に役立つことに使えればいいのに、と思っていた。
実際に書きはじめてみると、ずっと文章を読んだり、書いたりするだけでは生活できなくて、そもそも机に向かう集中力が続かなかったり、今日は書きたい気分じゃないなっていう日もあるのが現実だ。
午前中から午後に掛けてアルバイトのような形でライティングをしていて、夕方からは普通の会社員よりも時間が自由に使える。
新しい街に引っ越してからは、気分転換がてらに喫茶店通いを続けていた。さすがに週に何度も通っていると金欠になるので、どうしたもんかなと思っていた。
運動不足と、カフェ代を浮かすために考えた結果、シンプルに川沿いを走ればいいと思った。
実家のクローゼットから運動用のジャージやウィンドブレーカーを引っ張り出してきて、ランニングベルトとシューズを持って帰った。
僕は川のそばを歩いたり、眺めたりするのが好きで、うまくいかないことがあったり、煮詰まったときは川に行く。
晴耕雨読、という言葉があるけれど、晴れの日は体を動かしに河川敷まで行って、雨の日は喫茶店に行って読書や文章を書く、でいいような気がする。
とりあえず今週はその方針でやってみることにした。人間の体はそもそも動かすために作られているものだから、「読む」と「書く」だけでは、動作としては「座っている」だけになってしまう。これを解消したかった。
「読む」と「書く」と「走る」はセットにすれば、在宅でもうまく回っていくはずだ。走って体調を整えるのも仕事のうち、と考えてみる。
とくに秋冬は日照時間が短くなって、ただでさえ日を浴びる時間が少なく、メンタル面で不調が出やすい。走っている間は陽の光を浴びることで、うつっぽい気分も少しは改善するかもしれない。
カフェに行く時間をランニングに置き換えたので、カフェ代は浮く。生活の収支がマイナスにならなければ、この街で創作を続けていける。
文学ブログ「もの書き暮らし」で約物の話を紹介しています
昨日、僕が運営している文学ブログ「もの書き暮らし」で、「約物」について紹介する記事を書いた。
「約物」について知らない方に簡単に説明すると、小説の文章などに出てくる感嘆符(!)や疑問符(?)、カギ括弧(「」)、二倍ダッシュ(──)、三点リーダー(……)などを、「約物」といいます。
本を読むときに出てくる「文字や数字以外の記号」が、「約物」。
小説を書いたりするときの「約物」には、わりと細かい慣習があって、一度覚えてしまえば問題なく使えるのだけど、書きはじめの頃はとくにつまずきやすい。
たとえば、小説の文章では「!」(エクスクラメーションマーク)や「?」(クエスチョンマーク)の後は、空白を一マス空ける、という慣習がある。
また、会話文のなかに会話文を入れると文章が「入れ子」構造になるけれど、そういうときはカギ括弧(「」)の内側で、二重カギ括弧(『』)を使用する。
ほかにも「…」(三点リーダー)は必ず二つ並べて使う(「……」)、ダッシュは二倍にして「──」(二倍ダッシュ)の長さで使う、という慣習がある。
個人で出版したり、公募に出したりするときに最低限の表記ルールを把握しておくと、話がスムーズになりやすい。
こういう表記の方法について、学校教育で教えて貰えるといいのだけど、実際には国語科や現代文で習うことは少ない。
学校の国語教育で習うのは、「文章の意味を汲み取る」こと。「読み方」はわりと丁寧に教わる一方で、個人で文章を書いたり、創作をしたりする機会はほとんど与えられない。
海外の大学などでは創作科のコースがあったりする(たとえばサリンジャーはコロンビア大学の創作科の聴講生で、『ストーリー』誌の編集長だったウィット・バーネットに出会っている)。
日本では就職につながらないものや、ビジネスやアカデミズムと関わりのないものは軽視されがちなので、こういった創作科はほとんど存在しない。
僕は十年ぐらいずっと独学で書いていて、これから創作をはじめる人に約物でつまずいて欲しくないので、記事にしてみた。
約物って要するに、文章の体裁の話なので、物語の実際の価値とは関係がない。でも、約物の表記を知らなかったせいで、書き手が損することはあり得る。
ほんとうは、サリンジャーにバーネット教授がいて、芥川龍之介に夏目漱石がいたように、文学上の師のような人が見つかるとよい。
こんなご時世だし、人と会うのさえも億劫になる人もいるだろうから、記事が創作の足しになったらいいなと思う。
雨が降っているので、ポメラ日記は喫茶店で書いた。今日はこれで。
2024/11/26 18:30
kazuma