BanklessDAOに所属して学んだ事とDAOが秘める可能性について整理してみる
自己紹介
Kazzy(DAO兄さん)と申します。2022年の3月に大学を卒業し、現在はBankless Japanコアメンバーと複数のWeb3プロジェクトを兼任しつつ、海外のDAOでコントリビューター・DAOを生み出すプロジェクトのDAOAsiaのHeadを務めています。
BanklessDAOとは
世界で初めて自律分散的に運営されている暗号資産メディアDAO。
現在はニュースレターやブログPodcastを中心に日々暗号資産やWeb3に関する情報を世界中で発信し続けている。
BanklessDAOは2021年5月4日、デビッド・ホフマンとライアン・ショーン・アダムスによって設立され、Banklessプレミアム加入者一人一人にBANKトークンをエアドロップした。
2023年6月現在購読者は300,000人を超え、毎週金曜日にニュースレターを配信中。そのうちの日本支部である「Bankless Japan」は、本国BanklessDAOのニュースレターを翻訳し配信している。
DAOに興味を持った経緯
私は大学で国際教養や政治学について学んでいたこともあり、人類の歴史、とりわけ人間が歴史的におこなってきた非合理的な意思決定と失われてきた命について大きな課題意識を持っていた。
加えて生い立ちの中で理不尽に比較される経験が無視できない程度にあったことから、「平等」や「チャンス」についての課題について大きな問題意識を持っていた。
実は最初からDAOに傾倒していたわけではない。
ことの発端は2020年、私がweb3を用いたSNSプロダクトの開発に取り組んでいた頃に遡る。
当時NFT偏重のマーケットに大いなる課題意識を抱いており、多くの人間がNFTを投機的商品と捉えることに大きな違和感を覚えていた。誰かの役に立つ技術でなければ意味がない。正直無駄だとすら感じていた。
そこで一度は、エンターテイメントとしてのNFTのあり方に疑問を抱き一旦はブロックチェーン領域から足を洗った。
このような経緯がありながらも、DAOに舞い戻っているのにはわけがある。
これまでブロックチェーン業界は政治学や国家の成り立ちと関連がないものだと思っていたが、あるきっかけを機にDAOの概念を知り、ダイブするにつれてこれまで学んできた興味分野がそのまま生きることに気がついたためだ。
それはETH SF 2022。世界中から猛者が集まるETHGlobalのサンフランシスコ大会である。
業界関係者が一堂に介するイベントであるため当然ながらサブイベントも数多く開催される。当時アメリカに来た投資回収をしようと可能な限り多くのサブイベントに参加をしていた矢先、DAOに関する専門家が集うクローズドなイベントに参加することとなった。
このクローズドなイベントこそが、運命の分かれ目となった。
DAOの概念を知った途端、まるで雷に撃たれたかのような衝撃が走った。
その当時自律分散型組織の知識を何一つ持ち合わせていなかった私は、DAOの専門家たちに深くDAOを知り、関わるためにどうするべきか質問を投げかけた。
そこで帰ってきた答えが
と言う回答だった。
専門家が推奨するDAOであるならば、基礎から身につける上で間違いない。 そう当たりをつけ、関係者にすぐにコンタクトを取った。
Banklessにおけるコントリビュータの貢献構造
BanklessDAOには2種類の参加方法がある。
1つ目はガバナンストークンである$BANKトークンを35000BANK以上保有すること。
2つ目は特定のチャンネルでコントリビューターに呼びかけ、ゲストパスと呼ばれる1ヶ月限定の参加権を付与してもらうことだ。
私はBanklessDAOに入会してからの6ヶ月間、ゲストパスで乗り切っている。
Banklessは3ヶ月ごとにSeason、つまり会社や学校における”期”が更新される。
それぞれのSeasonごとに、誰のどんな役割に対してどれだけの予算が割り振られるかが決められ、貢献者やプロジェクトに分配される。
新たにプロジェクトを開始したりイベントへのスポンサーを希望する者はそれぞれのSeasonが開始する前にプロポーザルを提出し、DAOメンバーに訴求をしなくてはならない。
最大の特徴はプロポーザル、審査、報酬分配が「アナログ」であることだ。
平たく言えばスマートコントラクトではなく、人力によって決定されるケースが存在する。
そして各プロポーザルやサブDAOには「Champions」(代表者)を指定する必要がある。
予算を獲得するためにトレジャリーから資金の拠出を求める際は、どのような目的で資金を求め、その目的によりどれだけBanklessDAOのエコシステム全体に定量的なインパクトをもたらしうるかを説明する必要がある。
つまり必ずしもDAO=完全分散型ではないのが現状であり、またこのような実例は他に数多い。DAOは分散型コミュニティでもなければ、また慈善団体でもない。
DAOとは、「地位が流動的な目標・ミッションドリブンの新しい会社の形」だと私は考えている。
Bankless Japanについて
Banklessの支部はマーケティング、エンジニア、イベント等各役割ごとの部署(Department)に分かれている。Banklessムーブメントの発端となったBankless LLCも現在はこのBanklessDAOのDepartmentに属している。
複数あるDepartmentのうち、International Media Node(IMN)と呼ばれる部署がBankless記事の翻訳を担う。このIMNの元にBankless Germany, Bankless Korea, Bankless Brazilなど30カ国以上の言語ごとの支部がある。BanklessJapanはそのIMNの日本支部である。
DAOに入会する上で最もハードルとなりうるのが参加のハードルだろう。言語・手順・クリプトへの深い理解など、その障壁は計り知れない。DAO側もこれを大きなハードルと認識しており、これを解決すべく様々な方法がとられている。
Banklessの場合、初心者はまず初心者だけを対象にしたBegineer's sessionと呼ばれるComunity Call(オンライン定例MTG)に参加することで、オンボーディングを受けられる。私自身もこのBegineer's sessionに参加し、IMN Japanを紹介された。
メンバーは5名。うち中心に活動しているのが4名である。うち2名がカナダ人、私を含む残り3名が日本人である。
IMNの一環として、翻訳記事の発信、ならびにETH TokyoやDAO Tokyo、WebXといった国際カンファレンスにメディアパートナーとして協賛し、生の声を世界に伝えている。
Banklessで学んだ3つのこと
1、DAOのアナログさと可能性
2、国際的なダイナミズム
3、日本市場の潜在力
DAOのアナログさと可能性: DAOの報酬設計は、依然として手動で行われるケースが多い。Banklessでも例外ではなく、イベント時に各メンバーの貢献度をリーダーが算定し、報酬を手動で進めている。
そのためスマートコントラクトの導入が必ずしも必要ではないという意見もある。だからこそ報酬の公平性と透明性を保ちつつ、より効率的な方法を模索する必要がある。
加えてメンバーの集いやミーティングについてはオフラインで行われることもしばしばあるため、ネットワークのつながりや関係性の維持が心理的安全性やプロジェクトの遂行に非常に重要な意味を有している。
国際的なダイナミズム: プロジェクトが国際的なメンバー構成を持ち、世界中のカンファレンスへの積極的な参加を行なっている場合、地域の垣根を超えたダイナミズムが生まれる。これにより、柔軟性と創造性が促進され、プロジェクトの成果が向上する可能性がある。 例えばDAOの活動としてメンバーが同時期に韓国とカナダと日本にいるというような、同時多発的な機動力を生かした運営と組織の活動が可能になるのだ。
日本市場の潜在力: 国際カンファレンスを通じて、日本の暗号資産市場の大きな潜在力が浮かび上がってきた。多くのスタートアップが日本進出を検討しているが、十分なリソースや機会がまだ整っていない。この市場における成長を促進するための戦略的な取り組みが求められる。加えて海外に進出を試みているが現地とのネットワーク形成に難儀している国内の事業者も少なくはない。これらの総合的価値を勘案すると、Bankless Japanが将来的にもたらしうるインパクトは計り知れない。
終わりに
BanklessDAOにメンバーとして参画してから早半年以上経つが、まだまだ自律分散型組織が秘めたる可能性を抱えているように思えてならない。それはDAOという組織自体の概念とユースケースが発展途上であることもさることながら、国際的なダイナミズムやBanklessの世界的に及ぼし得るブランド力と影響そしてシステム、そして世界にもたらし得る単なるデジタルトランスフォーメーションに留まらない自動化の波によって人々の暮らしが少しずつ着実に良くなっていることを痛感しているからである。
自律分散型組織と言う組織形態がプロジェクトを立ち上げる上で一般化した未来が訪れるのもそう遠い将来ではないように考えている。
一方で、新しい概念であるからこそ多くの事業体が一丸となって解決していかなければいけない課題は山ほどある。この荒波をチャンスの大波だと捉えるか、大災害をもたらす疫病神だったかと捉えるかは主体によって異なるだろう。
だが確実に1つ言える事は、もはやわれわれはかつての中央集権的な組織と既得権益にあぐらをかいていた時代には戻れないと言うことなのではないだろうか。
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