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「鎌倉インターナショナルFC」のブランディング——。 これまでの整理とこれからの展望

3年前に、「ブランディング」に関する考察記事を書き、多くの方に読んでいただく機会がありました。素人ながら、ブランディングとは何か、一体世界では何が起きているのか、なぜサッカーにはその要素が必要なのかをまとめたところ、非常に多くの反響がありました。

あれから数年後、筆者は、社会人神奈川県サッカー2部リーグに所属する、創設4年目、鎌倉に拠点を置くサッカークラブ「鎌倉インターナショナルFC」のブランディングを統括しています。

今年1月、私たちのクラブはリブランディングを行い、新しいクラブロゴを発表するとともに、ビジョンを一新、新たなスタートを切りました。

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それから半年以上が過ぎ、ある程度の所感が掴めてたところで、これまでのアクションやそこに至る意図、またこれからの行っていくべきであろうことなどを、一度簡単にまとめたいと思います。


・・全文無料・・


クラブロゴの刷新

ロゴは、さまざまな狙いや将来性を考えながら、約1年間をかけてデザイナーチーム(SEE BY)と作り上げました。もう少し細かいことは、上の2つの記事(全文無料)に書いてありますので、興味のある方はご覧ください。

クラブの"顔"を変えるとなると、責任は重く、いくら新しいチームとは言え不安はありましたが、どちらかというと根拠のある自信の方が大きかったと言えます。7ヶ月が経過した現状、小さく新しい組織であることも手伝い、ロゴはスピード感を持って浸透し、"顔"となれているのではないかと感じています。

このロゴは、ただのチームロゴとしてだけではなく、色や姿を変化させながら、色々な機能性を伴っていく物に波及していくと思います。

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ブランディングをしていく上で、サッカークラブに限らず、"顔"になるロゴを整えることは非常に重要です。「整える」というのは、その組織が持つに相応しい(辻褄の合う)ロゴにする、という意味です。改めて自分で経験をしてみると、それはいろんな観点から間違いがないと言えます。アクションの効果が全く変わってきます(=同じアクションをしてもロゴが洗練されていないと効果が弱くなる)

ブランドが置かれた状況によって、ロゴに手を加えることができない事情があるのであれば、それを考慮して、新しいビジュアルを持つ、あるいは見せ方を変える、などの工夫された戦略が必要になると思います。ただ、顔を2つ持つことは基本的にはできない(色々なものが薄く伸ばされる)ので、注意が必要です。人が持つ印象を操作できるものでなければなりません。

今回の鎌倉インターナショナルFCのロゴ制作は、行ったプロセス、またそれにもった狙い、そして現段階の効果をみても「成功した」と言って差し支えないと思います。

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今後のロゴ展開も、ぜひ楽しみにしていてください。これからよりこのロゴが鎌倉という美しい街に馴染み、世界に浸透していけばと思っています。


ユニフォーム制作→リリース

リブランディング後、初めてのユニフォーム製作を行いました。これは本当に色々な要素があり書き切れないですが、アマチュアのクラブであるが故の「デザインにおいての制約」「流通においての制約」「付随するクリエイティブにおいての制約」など、色々な制約の中での作業でした。

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NIKEを選んで製作をしたことには様々な理由がありますが、ポジティブとネガティブな要素があります。それはまた別の機会にするとして、デザインは可能な限りシンプルであることを心がけました。派手なユニフォームがダメだ、と言いたいわけではなく、派手なユニフォームは失敗する可能性が高く、また難易度が高く、ハイリスクハイリターンだから、私たちのクラブとしては避けなければなりませんでした。

シンプルに作るとなると、何がキーになるかと言えばブランドですので、NIKEをチョイスしたというのが、大きな理由のひとつです。

リリースの方法は、2回に分けて行いました。まずは、クラブの世界観を示すような「ユニフォームがある画(=ユニフォームにフォーカスしない)」方法でリリースを実行。

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鎌倉出身の素晴らしいフォトグラファー Jesse Kojima さんに撮影していただいたおかげで、とても素敵な写真を撮ることができ、初めて世に出る写真としては、この上ないものが出来たと思っています。


2回目は、ユニフォームのディティールと、スポンサー企業様をフォーカスしたグラフィックを作成し、リリースしました。こちらは、先程のリリースとは意図が異なります。

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リリースに関しては、予算をかけずに、また時間もマンパワーも少ないためやれることに限界はありますが、もっと色々と工夫してやれる部分だと思います。また昨今のサッカークラブには非常に重要なファクターとなっているので、世界の流れをしっかり把握して、世界のルールに乗っ取って行っていく必要があると思います。

私たちの場合「CLUB WITHOUT BORDERS」を掲げ、INTERNATIONAL FCと名前がついているくらいですから、世界に向けた発信を心がけ、言葉が通じない人(日本語がわからない人)にも伝わるビジュアルメイクをしていかなければなりません。

ユニフォームそのものに関しては、反響があった中で、合計300枚以上を販売することができたので、数字だけが重要ではないですが、社会人サッカー4年目のクラブとしては大変大きな成果と言えるのではないでしょうか。


公式グッズの販売→配送

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ロゴをリニューアルしてから、初めてとなる公式グッズを販売しました。クラウドファンディング形式で行った結果、449人もの方々にお手に取っていただきました。

ユニフォームやタオルのような定番なものに加えて、「KAMAKURA」とタイプの入ったロゴティシャツや、「'47」とのコラボレーション、「Shonan Soy Studio」とのコラボレーションなど、素晴らしいラインナップを揃えることができました。

Photo: Kotaro Matsuo

順次配送を初めており、すでにお手元に届いた方々から発信をしていただき、すごく嬉しく思っています。こうして、クラブのロゴが入ったものが、鎌倉のみならず、本当に遠くの方まで手にしてくださっているのを見ると、胸が躍ります。

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改めて、お手に取っていただいた方々、ありがとうございました。今後のグッズ展開にも、大いにご期待ください。


コンセプトムービー撮影

クラブのある「鎌倉」という素晴らしい街、また私たちが進んで行きたい道、あるべき姿、それら表現するべく映像製作をしました。

この映像は、鎌倉の街にフォーカスし、私たちが考えていることを伝え、選手たちの姿を映すことを目的としました。その中で1番の肝となるのは、あえて英語でナレーションを入れ日本語字幕を入れたことです。本来は日本のクラブがやるなら逆かもしれませんが、CLUB WITHOUT BORDERSのビジョンを体現するため、日本人にしかわからないような映像にはしたくなかったためです。

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映像は、写真やその他のクリエイティブ作業よりハードルが高く(と僕は認識しています)、さまざまなリソースが揃わないと意味のあるものは作れないと感じています。ただ映像は、その分、人々に与えるインパクトが大きく、これからも有効に活用していかなければなりません。


Podcast配信

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監督である僕と、選手たちが1対1でトークをするPodcast番組を配信。これは、社会人チーム特有の、監督と選手、あるいは選手と選手が顔を合わせる時間が少なく、パーソナリティをしれる機会があまりにも少ないと感じたため、チームづくりの一環として計画し、そこから外向けに発信するコンテンツに至りました。

社会人サッカークラブとしては、選手のパーソナリティや細かい部分をサポーターの方々に知ってもらう機会は極端に少ないため、何かしらの方法で伝える必要があるかと思いますが、これは一石五鳥くらいの意味がありました。もう少しクオリティを上げたり、企画性を持たせたりして、進化させることもできると思いますので、続けていきます。


インナーブランディングとデザイン監修

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上記したようなブランディングのアクションをする前に、あるいは並行して、クラブ内調整をしています。一貫したブランディングを行っていけるように、ビジョンの整理から哲学の整理、ビジュアルのトーンマナーやガイドラインの作成まで、行いました。これはまだまだ洗練させる必要があり、機能しているかどうかは分かりませんが、年々アップデートさせるものです。

少なくとも、個人的に整理された思考の中でブランディングを行えてはいます。これが、集団の意思が共有されている状態をつくるのが、インナーブランディングが成功している状態だと思います。人が増えれば増えるほど、組織が大きくなればなるほど、難しくなっていくのだと思います。それと並行して、あらゆるデザインの監修や、アイデアなどを固める作業をしています。

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WEB周りの整理

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WEB上に出ているクラブのソーシャルアカウントを、可能限り整理を行いました。こちらもまだまだ洗練させなければならず、少しづつ、という感じです。プロフィールの整理、立ち位置の整理、コンテンツの整理、各アカウントの目的整理など、多岐にわたります。

幸いクラブには、超優秀なデザイナーがおり、また超優秀なんでも屋さんがいたり、さらにはインターンやスタッフが関わってくれていて、運営ができています。

ソーシャルメディアやWEBは、言わずもがな大切な要素ですので、ここからさらに質を高めていかなければと思っています。まずはフォローワー数ではなく、整理すること。質を保つこと。

選手やピッチ上の写真に関しては、我らが超優秀フォトグラファーのKazuki Okamotoはじめ、協力してくださるカメラマンの方々おかげで、素晴らしい記録を残すことができています。

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価値のある見え方で可視化すること

サッカークラブをカッコよくブランディングしていくということは、つまり、そのクラブが好きなサポーターがカッコよくなる、ということだと思っています。それはビジュアルがクール、ということでは必ずしもなく、サポーターたちが、ビジュアルも含めて、ブランディング(姿勢や態度)も含めて、誇りに思っている状態を作っていくことです。

それには、鎌倉(地域)との関係を"価値のある見え方で可視化"していくことや、クラブをハブとして出来上がっているコミュニティの存在を"価値のある見え方で可視化"することなど、必要になってくると思います。

今後はさらに速度を上げて、さまざまなアイデアを持って、①鎌倉(地域)との関係を"価値のある見え方で可視化" ②コミュニティの存在を"価値のある見え方で可視化していきます。

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このようにしてブランドの基盤を作っていくことで、今度は「コラボレーション」の可能性が生まれ、すでに価値のあるブランド(企業含む)とコラボをすることで、自分たちのブランドの価値や信用を上げていくことができるフェーズに入ります。今年後半、または来年以降はそういった動きも積極的にしていくことになります。すでに進めているプロジェクトもあるので、ぜひ楽しみにしてください。

私たちにとっては「舞台は世界」ですので、海外のクリエイターやブランドのコラボレーションも、ここからどんどんやっていきたいと思います。日本人のための日本人によるビジュアルではなく、世界による、世界のためのビジュアルを。


鎌倉インターナショナルFCのこれから

また今年はブランディングのスタートとして、主に「オンラインにおける見え方」をコントロールしていたと思っています。ただそこは本質ではなく、ここからは「リアルな世界の見え方」をコントロールしていかなければなりません。そこに本質があります。

そういった意味で、先日名称が決定した「みんなの鳩サブレースタジアム」ができることは、非常に大きな出来事になります。

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また新しい試みとして始めた、クラブトークン。ブランディングという観点だけから見ても、クラブトークンによって行えることの可能性は無限大に広がっていきます。

まだまだブランディングは始まったばかりで、基盤のきの字ができたフェーズです。ブランディングというのはブランドがある限り永遠と続いていくもの。これをやったら終わり、ということではありません。僕はブランディングに関しては素人ですが、サッカーに関してはよく学んでいる自負があります。自分の得意な領域を生かしながら、今日以降も鎌倉インターナショナルFCのブランディングを進めていきます。

ぜひ、次の動きにも期待しておいてください。

以上、上半期の簡単なブランディングまとめでした。


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