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『憧れはいつも旅先だった』 -旅にまつわる本10選-

「人生は旅であり、旅とは人生である」という言葉を最後に中田英寿が舞台から退いたとき、当時14歳の僕は多分、「旅」というものに猛烈に憧れたのだと思う。自由に生きられる歳になったら(無論ほんとはその時だって自由だったのだけど、子供の頃はサッカーや学校や場所や、とにかく色んなことに縛られている悲劇のヒーローだった)、中田英寿のように、長い時間をかけて、あるいは残りの人生の全部を使って、世界中を旅しよう。思えばずっとそう思っていた。

先日、何年ぶりかわからないくらい何年ぶりかに、試写会というものに行った。大好きなエッセイ『場所はいつも旅先だった』松浦弥太郎 が映画化されたということで、久しぶりに映画館に行かないと気が済まなくなった。それ以来、案の定、旅のことばかり考えている。

なぜ旅をするのだろう。とか言い始めると、やっぱり胡散臭くなってしまうのが日本語である。というか、日本の中で「旅」=「自分探し」=「意識高い系」みたいな印象がついてしまったのは、いつからなんだろう。頑張っている人やもがいている人や真剣な人を笑う人間はいつだってクズだけど、旅とは、別に目的も理由もなくていいもので、旅という言葉が小っ恥ずかしかったら、旅行と言えばいいと思うし、あるいは移住でも、休暇でも、なんでもいい。なぜ旅がしたいんだろうと考えてきたことは、自分にとっては、自分を知ることとほとんど同義だった。

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Photo: Cambodia, 2016

さて、この胡散臭い文章が胡散臭いまま終わらずに、少しでも読んでいる人のためになるようにはどうするべきかをさっきから考えているのだけど、やっぱり、一旦、僕が過去に読んだ旅にまつわる本を、10冊くらい紹介してみようと思う。他力本願である。

最後には、僕がこれまで旅に憧れて、実際に旅に出て、かつこれから先の人生でも世界中を旅していこうと思っている理由が、この前映画を観てなんとなくわかったから、書いてみたいと思う。興味のある人は、そこまでお相手を。

これから紹介する本は、ほとんど僕が「旅」というものを真剣に考えていた時期に読んだものだから、旅を真剣に考えている人には、いくらか足しになる本ばかりではないかと思う。


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中田英寿 誇り

旅に対する憧れをもたらしてくれた人間を描いた本。内容は旅とは関係ないけれど、本人が言うように、彼のサッカー人生は旅だったのだから、旅に関する本である。

その数年後、旅から帰ってきて、またアルゼンチンに旅立つ前、実は日本で中田英寿とある会場で一緒になって、写真を撮って頂いたことがある。僕の顔がこわばってとんでもないオーラを放っているからその時の写真は載せないでおくけど、今思うと、一旦あそこで何かの区切りがついた気がする。旅と中田英寿は、これからも憧れである。


The Songlines

写真家の、旅エッセイ。それだけで僕の大好物なのだけど、この本はジャケ買いした記憶がある。写真を撮る。文章を書く。写真で伝わるものと、文章で伝わるもの。良い写真を撮る人は、良い文章を書くに決まってる。竹沢うるまの、1000日間にも及ぶ旅の記録。


美しい瞬間を生きる

友達にあげたり、読み潰したりして、合計3冊買った本。旅とは違うかもしれないけど、読むと外国が隣に来て、暖かい気持ちにさせてくれるような、そんな一冊。著者の向田さんに会いに、彼女が当時やっていたオーガニックスキンケアブランドの小規模イベントに一人で行って、見事に男一人で浮いていた記憶は、だいぶ美しい瞬間を生きていた(笑)


ボールピープル

僕が写真を撮るようになった原因はこれだし、ピッチ外の世界に猛烈な何かを感じ始めたのも、これが原因。人生に影響を与えた本を選べと言われたら、間違いなくその一冊だと思う。サッカーが嫌いになりそうになると、いつもこの本を手に取る。旅をしながら、サッカーの周りを写真におさめることは、多分死ぬまでやっていくんじゃないだろうか。それも、この本のせい。


自分の仕事をつくる旅

「旅をするには、お金が必要じゃねえか…」と気付いたのはいつだったか。その頃から、どうやら、世界には、旅をすること自体を仕事にしてたり、金を稼ぎながら旅をしていたり、そういう奴らがいるらしい、ということがわかり、そうとわかれば自分も、と色々学び始めた。その時にバイブルとなった本のうち一冊がこれだった。今はちょっと時代が変わって、テクノロジーも進化して、当時とは条件が違うかもしれないけど、普遍的なことも書いてあるし、ぜひ「旅をするには、お金が必要じゃねえか…」と気付いてしまった人は、読んでみてほしい。


ソーシャルトラベル

「かといって、金を稼ぐことが旅の目的ではねえよな…」と気付いたのは、いつだったか。世界に視野を向けると、やはり絶望的な世界からも目を逸らすことができなくなった。社会の役に立ちたい、立たなければ、と思い始めたのも、思えば旅と無関係ではなかった、な。この本は、ある夫婦が仕事をやめて旅に出て、旅先で社会に目を向けた記録。


暮らす旅びと

自分が年米に暮らす前に読んだことは確かだけど、これを機に南米に興味を持ち始めたのか、もしくは南米に興味があったからこの本を手に取ったのかは忘れてしまった。南米ってどんな場所なのか、と当時全く想像もつかなかった世界について、なんとなく雰囲気を知ることができた記憶だけはある。今読み返すと愛するアルゼンチンのことも書いてあって、それはそれは、いい。


美しい山を旅して

本から出てくるオーラがとにかく良い、本。フィジカルで絶対に持っておきたい、本。美しい場所に行きたくなる、本。著者のKIKIさんは、今どうやら鎌倉に住んでいてる(不思議な縁を感じる)。鎌倉は、こんな人が住みたくなる、街。


冒険の書

19歳日本人最年少でエベレストを登頂した南谷さんの、冒険の書。勇気をもらうことができる。僕らでも味わえるような旅の醍醐味と、僕らには味わえないような過酷な冒険を、一緒に覗くことができる。山に登ることも、生きることも、旅なのだ。(山に登ったことはないけれど)


旅の終わり 始まりの場所へ

現在写真家として大活躍している柏田テツヲさんの、若かりし頃の旅の本。当時24歳だって。「うおおお旅するぞおお」くらいのテンションに持っていたきたい人には、本当におすすめ(笑)難しいことも色々あるけれど、とにかく旅に出て、そしたら人が、場所が、何かを教えてくれるから、大丈夫だ、と背中を押してくれる。JUST GO.



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この記事のタイトルを『憧れはいつも旅先だった』にしたのは、もちろん『場所はいつも旅先だった』から取っているんだけど、やっぱり自分にとって何に憧れて生きてきたのかと考えると、それは旅先にあったような気がしている。人に対する憧れや、場所に対する憧れや、文化に対する憧れや、

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