『Venezia FCとKappaが別れるとき』 これは一時代の終末なのか?
"競技領域以外"の方法で、初めて世界的な認知を得たクラブと言っても過言ではないイタリアのVenezia FC。かっこいい(イケてる)サッカークラブの代名詞となりました。ビッククラブとは異なるブランディング戦略で、サッカーというコンテンツの可能性を広げたと言えると思います。
その道程を共にしてきたKappa。KappaもVenezia FCと共に歩みを進めることで、スポーツブランドにおける「唯一無二のポジション」を獲得したというのはまず間違いない事実だと言えます。一つの大きな流れを作り出しました。
この両者は、「サッカー(スポーツ)クラブ」と「スポーツブランド」がタッグを組むことで、お互いのブランディングを強化し、価値を高める両者にメリットがある関係性を作った最もわかりやすい例として、今後も語れられることだと思います。
そんなVenezia FCですが、Kappaとの契約を打ち切り(内部事情は知りませんが)、ラッパーのドレイクとNIKEによるブランド「NOCTA」がオフィシャルサプライヤーブランドとなりました。
これついて、どういった意味を持っているのか少し考えてみます。後から考えるとあれが何かの転換点だったと気がつくことは往々にしてあると思いますので。
1.スポーツブランドの"マンネリ"問題
スポーツブランドが持つコラボレーションブランド(サブブランド)が、サッカーのユニフォームブランドになる例がちらほら出てきました。一番最初はNIKEのジョーダン(PSG)だったと思いますが、次にAdidasのY3(日本代表)、そして今回のVenezia FCのNOCTA(NIKE)。
これは結局、スポーツブランドとスポーツクラブが組む時の「意味」づけや「初見のインパクト」のようなものががマンネリ化してきたが故に、主ブランドからさらにコンセプトが狭められているサブブランドのような存在を引っ張り出し、意味ありげに(コンセプチュアルに)タッグへの意味づけをしたい、という意図が表れているように私は思います。
VeneziaとKappaがそうだったように、両者の思惑が一致し、クラブとブランドがそれぞれ持っているコンセプトにエラーを起こさないのであれば、スポーツクラブとスポーツブランドが組むことは価値を2倍にも3倍にもする効果があると考えられます。
ただそこには、時間の経過というものがあります。
2.クラブとブランドのコンセプトと戦略
少し話はそれますが、前述した『「サッカー(スポーツ)クラブ」と「スポーツブランド」がタッグを組むことで、お互いのブランディングを強化し、価値を高める両者にメリットがある関係性』を作るためには、当然「クラブ」側と「ブランド」側に、明確なコンセプトと、ビジュアルやデザインの戦略がなければなりません。
でなければ、そもそもタッグを効果的に組むことなどできないはずで、うちのコンセプトとそちらのコンセプトが合うかどうか、という議論すらできない。
しかし私たちの国のスポーツでは、まだVeneziaFCとKappaの動きほどインパクトがある例はないのではないでしょうか。コンセプト不在的なスコープから、担当者が云々カンヌンレベル(一気に現実的な)スコープまで様々な原因があるかとは思いますが、ここに成長の余白があると感じます。
3.これは一時代の終息なのか
何度も言うように、Kappaのサッカー市場におけるポジショニングというのは、サッカーにおける「かっこよさ」の一つの流れを作り出しました。つまり多くの者にとっての"参考資料"になったということですね。競技サッカーだけではなく、サッカーカルチャー界隈にも大きな影響を与えました。
Kappaはデザイン性の高い、かつクラブのコンセプトに寄り添ったビジュアルメイクでビッククラブやビックブランドにはできないことをやってのけたのですが、このVenezia FCとの別れは、何かKappaというものが作り上げてきた一時代の終息、と言ったら大袈裟かもしれませんが、(もっと簡単に言えば)流行りに終わりが来たと言えるのかなと、私はそのように事を解釈しています。
"Kappa的な"かっこよさが飽きられ始めている"かもしれない"というのは、何も特別なことではなく予期できたことだと思います。トレンドは必ずいつかは終わるという当たり前の法則です。
それを暗に示唆しているのが、今回の変化だったように私には思えてなりません。
4.サッカークラブの影響力
サッカーに参入するスポーツブランドにとって、やはり「顔」になるサッカークラブの存在は非常に大きなものがあると思います。イメージの大半を作り出すと言っても過言ではありません。
以前ニューバランスがLiverpoolとのサプライ契約が終わった時、サッカーにおけるニューバランスの影響が縮んでいくのを(これは主観かもしれませんが)感じたことを覚えています。
そう言った意味では、Kappaの顔だったVeneziaとの別れは、これからのKappaにとってどのような影響を持つのかは、観察が必要だなと思います。
5.NOCTA
というような文脈がある中で、今回のVeneziaの動きはどうなのっていうことですが、NOCTA、全然グッとこない!笑
あくまで個人的ですがあんまりカッコよくないなあと思ってしまいました(今のところは)。NOCTA自体はかっこいいんですよ、ただ組むことで両者の価値を上げてんのかと言われると…。そうなるとビジュアル的にもカッコよく見えなくなるもんですね。
どうなんだろう、ドレイクとかHIPHOPとかにグッとくる人たちは今回のコラボレーションに私と違う感想を持っているのかもしれません。
SupremeとVUITTONのコラボレーションで、Supremeファン興醒めみたいな、そういうものと同じ類な感じもしますが、これからもVeneziaとKappaの動きは観察していきたいと思いました。
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