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美しくも過激な理論

人がまだ解明していなかったことを明らかにした者の気分は、どんなものか。何かを発明した者の気分は、どんなものか。

史上もっとも偉大な科学革命の一つとされている「量子論」の確立へとつながる数学的構造の着想を得たのは、わずか二十三歳の若者ヴェルナー・ハイゼンブルグだった。

最初の項で[ボーアの規則に沿う]正しい結果が出たように見えたとたんに、わたしは興奮のあまり次から次へと計算間違いをし始めた。そのせいで、計算結果がすべて目の前に出そろったときには、午前三時を回っていた。すべての項が、正しい値になっていた。
不意に、自分の計算によって記述された新たな「量子の」力学の整合性が、一点の疑いもない確かなものとなった。
はじめは、ひどく不安だった。自分が事物の表面を通り抜けて、奇妙に美しい内側を垣間見ているような気がしてきた。それから今度は、この豊かな数学的構造を——自然がかくも鷹揚にわたしの目の前に広げて見せてくれた構造を——細かく調べなくてはならないということを思い至って、めまいがし始めた。

『世界は「関係」でできている 美しくも過激な量子論』カルロ・ロヴェッリに記載されている、ヴェルナー・ハイゼンブルグがひとり島で「量子論」の着想を得たときの心理的な描写は、あまりにも美しかった。



前に読んだナイツ塙の本には、オードリー若林との会話が描かれていて、それがえらく印象に残っている。彼らの共通点といえば、漫才の形を「発明」したことで、若林の「(あの漫才を発明したとき)売れちゃうと思った」という発言(確かそんな感じだったと思う)に、ナイツの塙が共感したのも頷ける。二人には、その「発明した者の気持ち」がわかるんだと思う。

彼らはきっと、他者の漫才をひたすら「観察」し、

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