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短い夏の余韻

9月に入って、風が少しずつ冷たくなり始めた夜のこと。通りを歩いていると、夏の名残がまだ空気の中に漂っている。風が肌に触れるたび、過ぎ去った日々が頭をよぎる。あのときの笑い声や、言葉にできなかった感情が、浮きのようにぷかぷかと浮かんでは消え、浮かんではまた消える。まるで無意味なループだが、それが今の自分の心の中だ。

スマホを取り出してニュースを見れば、台風が近づいているという情報がひたすら流れている。こんなことならニュースなんて見なければよかったと、少し後悔する。けれど、見たところで変わるものはないし、台風は来るときは来る。人間がどうあがこうが、自然は我関せずだ。それでも、見ないわけにはいかないのが人間の性というやつだろうか。

水たまりが足元に広がっていて、その中に街灯の光が揺れている。掴もうとしても掴めない、夢のような光だ。自分もまた、その光のようにただ浮かんでいるだけだと感じる。現実なのか幻想なのか、その境界さえも曖昧なままに漂っている。

木々がざわめき、風が強くなり、頭上の雲が月を隠す。街灯の頼りない光が路面を照らし、自分もまた、ただぷかぷかと浮いているだけだ。目の前に広がる道は、夏から秋への移ろいの中にあり、その中で自分がどこに向かっているのかさえもわからない。釣りの浮きのように、定まらない心がただ揺れている。

「どうにかなるさ」と思いながら歩き続けるが、実際にはどうにもならないことの方が多いと知っている。それでも歩かないわけにはいかないから、ただ足を動かすだけ。夜の静けさが包み込む中で、変わり続ける季節と変わらない自分が、同じように揺れながら共存している。

ニュースは相変わらず台風の話題ばかりだ。街の未来を憂う声が響き渡り、誰もが不安を抱えている。そんな中で、自分もまた一歩ずつ歩いている。この狭間に立ちながら、変わりゆく季節の中でただ漂い、答えのない問いに身を任せている。

足元の水たまりに映る街灯の光が、ふわりと揺れる。次の瞬間、消えてしまうかもしれないその儚さが、今の自分と重なる。どこにも向かわず、どこにも属さず、ただ夜の中を漂っているだけ。それでいいのかどうかもわからないが、それでもこの夜の終わりを静かに待っている自分がいる。

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