「メルカリNFT」が最高のNFTマケプレである理由
タイトルが少し強めになってしまいましたが、メルカリが出したNFTマーケットプレイスが国内でNFTマーケットプレイスをする上ですごく良かったよという考察記事になります。
NFTマケプレ大本命「メルカリNFT」の登場
まずは今回の記事を書くことになった理由の紹介です。2025年1月28日にメルカリからNFTマーケットプレイス「メルカリNFT」が発表されました。マーケットプレイスをリリースするという情報は最初から出ていたので待ちに待ったリリースになります。
なんでメルカリがNFTをやるのか?
NFTの登場による最も革命的な事象は「デジタルコンテンツにおける二次流通市場の出現」です。メルカリのメイン事業であるフリマというのは言わば「デジタルじゃないもの」の二次流通事業なのである意味NFTマケプレをやるのは自然な流れ
メルカリNFTの仕様
Openseaで販売されているNFTを日本円で購入することができる
Openseaに出品されているNFTを日本円やメルカリの売上金で購入することができる。(イメージはPieとかに近い)
メルカリNFT上で日本円でNFTの売買ができる
メルカリNFT上で購入したNFTであればメルカリNFT上でガス代無しで日本円で二次流通(出品と購入)することができる。
売買手数料は10%、クリエイターへのロイヤリティはなし
売買が成立した際に売った側から10%の販売手数料を取るモデル。クリエイターへのロイヤリティなどはない。
メルカリNFTがNFTマケプレとして優れている部分
メルカリNFTの優れている部分はたくさんありますが、最も良いと思ったのは以下の2つでした。
ウォレット設計
NFTアグリゲーション
運営管理ウォレットによる一元管理によるUXの向上
ユーザーがウォレットを持つ必要が無いため、ハッキングリスクがほぼ0になります。(盗難辛いよね)またメルカリNFT上ではガス代の概念がないのでガス代を気にせず売買をすることができます。
外部のNFTマケプレと連携することでのNFTエコシステムへの参加
国内マケプレの残念なところとして海外のNFTなどを売買できずガラパゴス化する問題がありました。しかし、Opensea連携によって外部のマケプレとの連携ができるため海外でNFTが流行った際にメルカリNFT内も購買行動が活発になるという恩恵を受けられるようになります。ちなみに国内マケプレで外部マケプレと連携しているのはほぼありません。(結構意外)
もう少し詳しく解説していきます。
ウォレット設計
前提としてのNFTマケプレの簡単な分類
NFTマケプレの話をする上で現状のNFTマケプレはどのようなウォレット設計をしているのかを知ることが重要です。大きく3つに分かれると思い以下にまとめてみました。
ユーザーウォレット接続型(UW型)
ユーザーが所有するウォレットを利用するNFTマケプレです。OpenSeaやBlur、Magic EdenなどほとんどのNFTマーケットプレイスはこのタイプです。ユーザーによる秘密鍵漏洩のハッキングリスクが大きい特徴です。(自分も含め日本人よくNFT盗難されてますよね)
ユーザー専用ウォレット作成型(UCW型)
マケプレやその上のプラットフォームが独自に用意したウォレットを利用するNFTマケプレです。STEPNなどのゲーム系やαUウォレットやRakuten NFTなどの国内マケプレに多いタイプです。専用ウォレットには一般的なEOAウォレットの他にAA(Account Abstraction)やCA(Contract Wallet)を用いることでゲームやマケプレ特有の制限をかけることができるのが特徴です。
運営ウォレット集中型(PW型)
運営のウォレットで一元管理されデータベース上での移動を中心にしたNFTマケプレです。Adam by GMOなど国内NFTマーケットプレイスによくあるタイプです。出庫されて初めてブロックチェーンに刻まれるタイプも同じだと思っています。基本的には売買に対して中央集権的に管理されているためNFTの盗難などが無いことが特徴です。
有名なNFTマーケットプレイスの分類
Rakuten NFT(UCW型)
SBI NFT(UW型)
HEXA(UCW型)
FanTop(UW型)
Adam by GMO(PW型)
Opensea(UW型)
MagicEden(UW型)
Blur(UW型)
ブロックチェーンを知らないユーザーがNFTを購入しやすくするには?
意味不明な「ウォレット」という概念を認識させない
意味不明な「ガス代」という概念を認識させない
日本円でNFTを売買できるようにする
1つ目のウォレットを意識させないためには、ユーザーウォレット接続型(UW型)はほぼ不可能です。マケプレを使いたいのに「まずウォレットを作成してください」と言われるわけですから、そうなるとほとんどのユーザーはめんどくさくなり利用を辞めます。そのため自動で専用ウォレットが作られる仕様(UCW型)にするか運営ウォレットでまとめて管理(PW型)するかのどちらかしかなくなります。
2つ目のガス代を意識させないことを実現するにも、ユーザーウォレット接続型(UW型)はほぼ不可能です。UW型の場合はウォレットは独立しているためこちら側から独自の仕様を入れることができずガス代を認識させない仕様が作れません。またユーザーごとに専用のウォレット(EOA/AA/CA)を作成する仕様であれば一応ガス代を意識させない仕組みを実現することは可能ですが、あまりおすすめできません。結局ガス代はかかるのでガス代を誰かが支払う必要が出てしまいます。
3つ目の日本円で決済させたい課題も、UW型の場合は日本円を通して仮想通貨でブロックチェーンを動かすことが難しいため不可能(購入は可能)、またUCW型はCAやAAを使った仕様であれば可能だが、コントラクトのハッキングリスクが高いのであんまり現実的ではない気がします。
上記を見てもらえば分かる通り、一般のユーザーにNFTを購入してもらうには運営が一元的にウォレットを管理する必要があると思います。
メルカリNFTも運営が一元的にウォレットを管理(正確には複数のウォレットが存在しそう)して、ユーザーのNFT所有状態はデータベースでの集中管理が行われている仕様です。
NFTアグリゲーション
Adam by GMOから学ぶこと
運営が一元的にウォレットを管理する仕組みによる国内NFTマーケットプレイスとして最も有名なのは「Adam by GMO」です。しかし多くのユーザーがAdam by GMOを使ったことがないと思います。理由としてはAdam by GMOで作成されたNFTしか流通することができないため、ブロックチェーン上の有名なプロジェクトのNFTをAdam by GMOで購入することができないため利用する目的が弱いわけです。
メルカリNFTの秘策
この問題をメルカリNFTでは代理購入によって解決しています。Openseaで既に出品されているNFTをアグリゲーションすることでAdam by GMOの課題点であったブロックチェーン内のエコシステムの巻き込みができるようになります。
全てのプレイヤーに嬉しいことがある
ユーザー視点
日本円でNFTを売買することができる
メルカリの売上金でNFTを購入することができる
ガス代を気にする必要が無い
ウォレットを気にする必要が無い
プロジェクト視点
Openseaで出品するだけでメルカリユーザーからも購入してもらえる可能性が増える(ユーザー数の増加)
メルカリの売上金総額がそのままNFTのエコシステムに流れるため購入される可能性が上がる(取引可能総額の増加)
「ウォレットがー」とか「仮想通貨がー」を言わずに購入を促すことができる(説明コストの低下)
メルカリNFTの課題点
ざっと今思いつくメルカリNFTの課題点を上げてみました。
モバイルアプリで触れない
出庫できない
Openseaや他のマケプレに同時出品ができない
クリエイターロイヤリティがない
ただしこれらの課題点は現状のメルカリNFTのシステム構成上解決することが技術的にはできるため、将来的に実現する可能性が高いと思ってます。
特に出庫機能は急務
現状のNFTマケプレはBCG(ブロックチェーンゲーム)の取引がTVLの大半を占めています。しかしBCGで使うためにはユーザーのウォレットもしくはBCGの運営ウォレットに送信する必要があります。そのため現状のメルカリNFTは最も利用されるユースケースを放棄している状況になっています。ただし出庫機能はリーガル周りも複雑なため時間がかかりそうな気がします。
追記)
現物償還NFTは出庫対応してました!(情報提供者:aoiziさん)
(休憩)俺が考えた最強のNFTマケプレの設計図
自分はここ数年大量のNFTマケプレを見てきたのですが、自分が考える最高のマケプレってなんだろうという課題に対して考え抜いた答えがメルカリNFTと類似してて感動した話です。
仕様としては以下です。
ユーザーウォレット(metamaskなど)を通した入出庫方式
一度入庫したNFTは運営ウォレットによる一元管理
プラットフォーム内ではガス代無しの日本円決済
売上金は月一出金(リーガル問題)
マケプレウォレットによる自動Opensea出品
マケプレウォレットによる自動ホルダー報酬分配
自分の考えた際にはOpenseaの代理購入の構成は考えてなかったので素直にすごいな、センス良いなと思いました。
逆に入出庫やマケプレウォレットによる自動Opensea出品や自動ホルダー報酬分配などは現時点でのメルカリNFTには無いですが、構成上は可能なため今後実装が期待できます。
※よくTwitterで「出庫できないからゴミマケプレだ!」などのコメントが見受けられますが、自分の考えに近ければ近い将来出庫は実現される可能性が高いと思います。
各競合プラットフォームとの比較
ざっと最近のマケプレを表にして比較してみました。
手数料の10%も海外に比べると高いですが、国内事業者を見ると特に遜色ない気がします。外部NFT連携が強みでロイヤリティがないのが弱みて感じですね。
Opensea vs メルカリNFT
Openseaが使える人はOpenseaを使えばいいんです笑。ただし一般ユーザー視点だとOpenseaはかなり使いづらく、①ウォレットを作成しないといけない②仮想通貨で支払う必要がある③ガス代を支払う必要がある、となり、プロジェクトを運営したことがある方は分かると思うのですが、大変です。
メルカリNFTの場合は、①②③が解決している部分が良いです。ただし、手数料はメルカリNFTが10%、Openseaが2.5%なので、Openseaを使える人はOpenseaで良いかなという感じです。
HEXA vs メルカリNFT
現時点で国内マケプレだと一番強いのはHEXAだと思います。日本円での決済が可能であり売買も可能です、ロイヤリティやホルダー報酬なども自由にでき、しっかりオンチェーンに刻まれます。
ただしHEXAはプラットフォームとして閉じていて、HEXA内でしかNFTを売買したり確認できないという問題点があります。メルカリNFTは上記に対してより外側のエコシステムを意識している部分が今後スケールする可能性が高いです。
ちなみに普段Openseaを使っているユーザーからすると手数料10%て高いと思いますが、HEXAもpolygonは10%、ethは15%の手数料がかかります。また国内サービスはほとんど10-15%の手数料があり事業としてやっていくにはこのくらいの手数料は必要だと思います。
色々な質問や課題に対するコメント
Q1
メルカリで購入されると二次流通の流動性が下がるのでは?
コメント
よほどのグローバルプロジェクトじゃ無い限りは流動性が上がる可能性が高いです。日本でのNFT利用ユーザーの推定は10-20万人ですが、メルカリの利用ユーザーは2300万人です。
参考
Q2
NFTに対してホルダー報酬が受け取れないのでは?
コメント
現時点では受け取れない可能性が高いのでホルダー報酬があるプロジェクトの購入は控えた方が良いです。ただ仕組みとしてプロジェクト側がホルダー報酬としてメルカリに送ってきたものをあるべきユーザーに送信することは仕組み上可能である可能性が高いので今後実現されるかもしれません。
Q3
税務処理が大変になるのではないか?
コメント
日本円表記で購入履歴が残るので、むしろ楽になると思います。
総括:メルカリNFTは最高のNFTマケプレになる可能性を秘めている
上記でメルカリNFTを褒めちぎりましたが、課題もたくさんあります。モバイルアプリで触れないとか、出庫できないとか、クリエイターへのロイヤリティがないとか、、、ただ全ての課題を実現できる土壌は存在します。現時点でメルカリNFTはアップデートに期待ができる最高のNFTマケプレだと思いました。
29日20時からメルカリNFTの解説スペースやります!!
コメントなどあれば以下まで送ってください!