サッカークラブのつくりかた #10 「TOKYO CITY F.C. から SHIBUYA CITY FC へ」編
2021シーズンよりクラブの名称を「TOKYO CITY F.C.」から「SHIBUYA CITY FC」 へと変更することを本日発表しました!
渋谷をホームとするクラブとして、名実ともに渋谷の象徴となるべく「SHIBUYA CITY FC」として来季から新たな歩みが始まります。
キッカケは渋谷の人々からの声
実は、名称変更についてはこの1年半ほどずっと頭の中にありました。最も可能性が高かったタイミングは2019シーズン開幕時で、運営組織が法人化され、阿部翔平選手を獲得し、渋谷からJリーグを目指すと公言すると同時に「TOKYO」から「SHIBUYA」へと名称変更することを検討していました。しかし、結果的にはそのタイミングで変更をせず約1年半温めての発表となりました。
それは、なぜか。
おそらく昨シーズンのタイミングで「私たちはSHIBUYA CITY FCです」と名乗っても、まだ実績に乏しいクラブの名前について、渋谷に関わる人達にとっては正直ピンと来ない話で他人事のまま過ぎ去っていたと思います。
それがこの1年半の積み重ねを経てクラブを取り巻く状況は大きく変わりました。実はこの1年半で、およそ220回ものホームタウンアクティビティ(地域貢献活動)を行ってきました。コロナ禍においてオンライン開催は増えましたが、このカテゴリーのクラブとしては異例ともいえる活動数をチームの活動と並行して力を入れて取り組んできました。
すると、渋谷に関わる人々から異口同音にこんな言葉をもらいました。
「渋谷を象徴する存在になって欲しいね!」
「渋谷のチームなんだから東京でなく渋谷と名乗ってよ!」
このような渋谷に関わる人々からの熱い期待を受けて、我々はクラブ名を「TOKYO CITY F.C.」から「SHIBUYA CITY FC」 へ変更することに決めました。
渋谷らしさの体現①ちがいをちからに変えるキッカケをつくる
「SHIBUYA CITY FC」に求められていることは多々あると思いますが、その中でも一番のミッションとして取り組みたいことが『渋谷らしさを体現すること』です。
渋谷らしさを端的に表す言葉として、「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」という基本構想のコンセプトがあります。
人種、性別、年齢、障害を超えて、「ちがう」人々・価値観が集う渋谷は、まさに未来の世界の縮図といえます。
「ちがう」人々を結びつけるために必要な物とはなんでしょうか?
幾通りもの答えが出てくるかと思いますが、私たちの場合、それがサッカーでありスポーツでありました。はじめて会った人たちとボールを蹴った時。スタジアムやパブで見ず知らずの人と興奮のあまり思わずハイタッチをした時。チームの応援に意気投合し語り合った時。
そこには互いの「ちがい」など意に介さず、喜怒哀楽相まった様々な感情をともに共有する、「ちがう」人々との共通体験がありました。
「ちがう」人々を結びつけるために必要な物、それは共通体験であり、世界の共通言語とも言えるサッカーが持つ可能性には無限の世界が広がっていると確信しています。
我々CITYは「ちがいを ちからに 変える街」である渋谷を象徴するサッカークラブになるべく、『サッカーを中心とした共通体験の提供』を通じて、ちがいをちからに変えるキッカケを作っていきます。
渋谷らしさの体現②街全体がスタジアム
渋谷らしさを表すもう一つの言葉として「カルチャーの発信源」というキーワードが挙げられます。
音楽・ファッション・食など、渋谷から新たな流行が生まれ、育まれ、文化として定着していったモノやコトは枚挙にいとまがありません。
「SHIBUYA CITY FC」は「Football for good」というビジョンを掲げています。この言葉には副題があり、“ワクワクし続ける渋谷をフットボールで”つくっていくということを掲げています。
今無い何かを新しくゼロから創造したいといったわけではなく、今そこにある渋谷のカルチャーに、フットボールを掛け合わせて新しいワクワクをつくりたいと思っているからこそ、我々は渋谷の街全体をスタジアムと捉えてコンテンツ開発カンパニーとして、積極的に街へ出ていきながら事業展開をしています。
渋谷は音楽やファッション、ストリートやベンチャー、本当に多種多様なカルチャーが生まれ育ってきた街です。私たちはそこにフットボールというスパイスを加えることで新たな魅力を引き出していきたいのです。
それが私たちが掲げている「Football for good “ワクワクし続ける渋谷をフットボールで”」というビジョンの真髄なのです。
渋谷から世界で最もワクワクするフットボールクラブをつくる。ビジョンの実現へ向けて、まずは私たちがそんな存在にならなければいけません。
渋谷らしさの体現③ソーシャルインパクトの追求という新たな価値観の提示
また、渋谷という街はこれまでの価値観が変わるような新たな価値観が生まれたり、表現されたり、提示されたりする、出る杭を叩かない街であるとも感じています。
「SHIBUYA CITY FC」が目指しているのは、新時代の強いクラブです。私たちは"強さの定義"をも変えていくことに挑戦します。
私たちが考える新時代の強いクラブとは…競技力・収益力に秀でて、かつそれらをテコに「ソーシャルインパクト(社会的インパクト)」を最大化出来るクラブです。
これはイマドキの若者っぽい価値観なのかもしれないですが、物的な豊かさや自己実現ということ以上に、質的・精神的な豊かさや社会に対する貢献といったことに重きを置いています。
勝つことだけ稼ぐことだけを目指すことは全然イケてなく、勝つことお金を稼ぐことをフックにしてどこまで社会を良くできるのか、ここまでを欲張りに追求していきます。
無論、だからといって「弱いままで良い」「Jリーグに入れなくても良い」なんて言うつもりは毛頭なく、競技力を強化することは超重要であり、それがより大きなソーシャルインパクトを生み出す根元となると理解しています。
渋谷らしさの体現④クラブビジネスのパラダイムシフト
近年の渋谷という街はベンチャーの街という印象も強いかもしれません。
「ビットバレー」と呼ばれるようになって久しい渋谷は、古巣でもあるサイバーエージェントなど日本屈指のベンチャーが生まれ育った街ですし、最近ではGoogleも渋谷に居を構えています。丸の内などとはまた違ったビジネスの街である渋谷は、ベンチャーの聖地ともいえ、新たなビジネスモデルを追求していくに相応しい土地柄です。
クラブチームのビジネスモデルは一般的に「マッチデイ収入(チケットや物販など)」「放映権収入」「スポンサー収入」の3本柱で成り立ってきました。
ところがコロナ禍におけるクラブビジネスは転換期(パラダイムシフト)を迎えており、これまで試合日(試合)に依存していたビジネスモデルからの脱却が求められています。
「SHIBUYA CITY FC」は、そもそもカテゴリーやレギュレーション的もに試合日で収益を生み出すことが難しかったため、かねてより非試合日における売上の最大化を求めてきました。
その結果は昨年のアニュアルレポートにもある通り、コンテンツ売上とカテゴライズしている収益がクラブの大半を占めており、試合に依存しないビジネスモデルを確立しつつあります。
もちろんカテゴリーが上がるにつれて試合周りにおける収益化の機会は増えるでしょうし、その部分の最大化にもトライしないといけませんが、「SHIBUYA CITY FC」ではクラブビジネスを分散型コンテンツビジネスであると捉え、多様なコンテンツによるToCコミュニティの醸成とToC売上の向上、そしてそれらにレバレッジを効かせたToB売上の向上を目指しています。
チームはいよいよ大一番へ
色々と伝えたいことがてんこ盛りになってしまいましたが、一番大切なチームの成績はというと、今シーズンここまで順調に進んでいます。新型コロナウイルスの影響でレギュレーションが変わった東京都2部リーグは、7チームによるリーグ戦と順位決定戦(昇格決定戦)という二段構えの大会となりました。
CITYはリーグ戦を5勝1分の首位で通過し、残すは12月に開催される昇格決定戦を待つのみとなりました。
クラブの将来を占う上でも非常に重要な一戦となりますが、今季のチームの積み上げだけでなく、これまでクラブを作ってきたのべ96人の選手たち、3人の監督を始めとする数多くのスタッフたち、ホームタウン渋谷のみなさま、創成期から支えてくれたパートナー各社、そしてともに夢へと歩んでくれているファンのみなさま。そういった全ての人々の想いを結集させて、大一番へと挑みたいと思っています。
残念ながら試合は無観客での開催が濃厚ですが、クラブのYouTubeチャンネルなどで生配信をする予定なので是非一緒に戦ってもらえると嬉しいです!
この昇格決定戦は「TOKYO CITY F.C.」としての最後の試合にもあたります。集大成に相応しい結果を手にし、「SHIBUYA CITY FC」としての新たなスタートに弾みをつけたいと思います!
TOKYO CITY F.C. から SHIBUYA CITY FC へ変わり、クラブは大きな転換点を迎えました。
しかし、名前が変わろうと想いは変わりません。
クラブ創設時から言い続けてきた言葉、”サッカークラブのつくりかた”シリーズを書いた時にいつも締めくくりに使ってきたこの言葉は、これからも変わりません。
かっこよくて、ワクワクする、そんなクラブを目指して。
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