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秘密基地がなくなる日

閉店間際のネットカフェに行った。
当たり前だけど、客は僕だけだった。

「24時までには出てくださいね」

カードキーをくれた店員さんは、

少し寂しそうだった。

大学が茨城にあったので
何かで上京するたびに
ネットカフェに泊まった。

東京に住み始めてからも
終電を逃したときには
ネットカフェに泊まった。

何もなくても、気になる漫画を

読むために通ったりもしたし。

出先で身支度したいときに
シャワーに入れるのも助かった。

知らない街に行こうとも、
会員証さえ持っていれば。

僕らはいつでも落ち着ける。

そう考えると、まるで
秘密基地をいくつも持ってるような
とても嬉しい気持ちになった。

「明日から当面の間、休業します」

カードキーを返すとき、
店員さんが教えてくれた。

……当面の間って、いつまでなんだろう。

都内に4千人いると言われる

ネットカフェ住民の人にしたら
本当に死活問題だろうから。

それに比べたら僕の感傷なんて

とるに足らないものだけど。

そうじゃなくても、いい大人が
子どもみたいなことを言うなと
思われるかもしれないけど。

それでもやっぱり寂しいなと思う。

秘密基地が、なくなる日は。