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理系女子が少ないのはなぜ?アンコンシャスバイアスと社会的影響を考察

理系分野において日本の女子学生が少ないという現状は、世界的な流れと比べて特に顕著です。OECD加盟国の中でも、日本の15歳女子の数学的リテラシーや科学的リテラシーは非常に高く、学力自体はトップクラスに位置しています。しかし、STEM(科学、技術、工学、数学)分野での大卒者や院卒者に占める女性の割合は、他国に比べて著しく低く、これが日本の教育界や社会全体で問題視されています。この記事では、なぜこのような状況が生じているのか、特に高校時代に何が起きているのかについて考察します。


高校時代の進路選択に潜む問題

日本の高校教育において、女子生徒が理系分野を避ける傾向は根深いものがあります。多くの生徒が高校時代に進路選択を行いますが、この時点で理系を選ばない女子生徒が多いことが、大学進学時の選択肢を狭めてしまっています。この選択には、いくつかの要因が絡んでいます。

まず一つ目の要因として考えられるのは、社会的な期待やアンコンシャスバイアスです。日本社会では、「女性は理系に向いていない」や「理系は男性の分野」という無意識の偏見が、家族や教育者の間にも存在することが多いです。このような偏見は、親や教師からの進路指導に影響を与え、女子生徒が理系分野を選ぶことに対してためらいを感じさせます。家庭内での親の期待や、「女性らしさ」と結びつけられる伝統的な役割が、理系を選択しないという結果に結びついているのかもしれません。

キャリアモデルの不足


また、理系分野で活躍する女性のロールモデルが不足していることも大きな要因です。例えば、医師という職業には女性が進出しやすくなっていますが、エンジニアや研究者といった他のSTEM分野では、女性の活躍が目立ちにくい状況があります。理系の職業は、BtoB(企業間取引)の企業や研究機関が中心で、一般的には表に出にくく、その仕事の内容や魅力が伝わりにくいという問題もあります。

一方、営業や広報、企画といった文系の仕事は、身近なキャリアモデルが豊富であり、女子生徒がイメージしやすい職業です。理系女子が少ないこと自体が、次世代の女子生徒にとっての進路選択の壁となり、少ないからこそさらに少なくなるという悪循環が生まれています。

就職先に魅力を感じにくい


さらに、日本のSTEM分野における就職先の魅力の問題も指摘されています。例えば、エンジニアや研究者としてのキャリアは、長時間労働や専門性の高さが求められ、家庭との両立が難しいというイメージが強いです。これにより、女子生徒が将来的に自分が活躍できる職場としての魅力を感じにくい状況が生まれている可能性があります。

医師などの職業は社会的地位が高く、家族の支援も得やすい職種とされる一方で、他の理系職はそのような支援が少なく、働き方やキャリアパスのイメージがはっきりしないことが進路選択に影響を与えているかもしれません。

進路指導と学校の役割


高校での進路指導が、女子生徒の理系進出を妨げているのではないかという議論もあります。進路指導の際に、女子生徒に対しては「文系」を勧める傾向があるとすれば、それは生徒自身の選択に影響を及ぼす可能性があります。理系に進む女子生徒は少数派となり、進学先でも女性が少ない環境に置かれることで、心理的なハードルがさらに高まってしまうのです。

このような現状を打破するためには、学校が積極的に理系分野の女性ロールモデルを紹介したり、理系の仕事の魅力を伝える機会を提供することが重要です。また、女子生徒が自信を持って理系を選択できるよう、教育プログラムや進路指導においてジェンダーバイアスを排除する取り組みも求められます。

結論


日本における理系女子の少なさは、多くの要因が絡み合った複雑な問題です。15歳時点での女子の学力は世界トップクラスであるにもかかわらず、高校や大学での進路選択において、理系を避ける傾向が強いのは、社会的な偏見やキャリアモデルの不足、職場環境の魅力の欠如といった要因が大きいと考えられます。

これを解決するためには、学校教育の現場で女子生徒が理系分野に進むことに対する自信を持ち、選択肢を広げられるような取り組みが求められます。教育者や親が無意識のうちに持つバイアスに気づき、女子生徒に理系進出を積極的に勧めることが、未来の理系女子を増やすための第一歩となるでしょう。

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