Pine treeリリースに寄せて

「あれ、結構大きくね?」
同級生のひーくんがふざけて逆立ちをしている。
その後、信じられないほどの揺れが体育館を襲った。
校庭に避難して次々と親が迎えにきて減っていく友達を見て、不安は募るばかりだった。


僕は千葉の蓮沼という場所で育ちました。房総半島に位置し、海まで徒歩5分程度のところでした。2011年3月11日、東日本大震災により僕の家のほんの手前まで津波がきて、家は液状化現象により傾いてしまいました。避難から戻った時、家の目の前の道路に魚が落ちていたのを印象深く憶えています。

僕は海が好きでした。でもそんなに溌剌とした青春時代でもなかったから、しょっちゅう海に入りに行ったりというタイプではありませんでした。僕は海の前の防砂林の役割を果たしていた、鬱蒼とした松林の遊歩道を、父と歩くのが好きでした。しかし津波により全て枯れてしまいました。悉く倒された松の木にただ茫然、というよりかは興味深く見ていました。事の重大さを理解できる年齢ではなかったのでしょう。

震災から少し季節が過ぎた後、地域の人たちと松の木の苗を植える植樹祭が催されました。子供も大人も一緒になって苗を植えました。

地元に帰るたび、僕は海を観に行きます。僕も大人になって、植えた木は間違いなく成長しています。まだまだ小さいけど、父と歩いたあの頃の様に立派な松林になる事を切に願います。
この松林が僕にとって時間の経過を体感する架け橋になっています。これからも痛い事が沢山あると思うけれど-ーー

父は毎日の日課で、今もウォーキングを欠かしません。
いつか元通りになった松林をまた歩きたい。


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