京都の野外彫刻フィールドワーク89
『慈愛』
上田 貴久丸
設置場所 : 京都第二日赤病院C棟前
(上京区釜座通丸太町上ル春帯町355番地の5)
この像『慈愛』は京都第二日赤病院のC棟入口の右側に設置されている。最初に訪れたときには,作品名も制作者についても手掛かりがなかった。その後ネットで調べて,この作品が『慈愛』という題名だということが分かった。しかし,作者名や制作者について情報を得ることができなかった。
しばらくして後撮影した写真を見直すなかで像の左奥にプレートらしきものを発見し,もう一度調査にでかけた。
像の後ろ左の壁にあったのは,この像について記されたものだった。埃などをふき取ると,題名が浮かびあがり,作者名,寄贈者についても読み取ることができた。
作品の題名は『慈愛』,制作者は上田貴久丸であった。しかし,制作年については記されていなかった。上田貴久丸の没したのは1968年ということであり,この作品は母子像というテーマや樹脂成型による作品であることから氏の晩年の作品だと思われる。
安定感のあるポーズである。ふくよかな母親の裸体に丸みのある赤ちゃんがのっかっている。赤ん坊のかるく自分の指を口にいれている姿が愛らしい。母親と子どもの視線の先にいるのは,二人を見つめる夫であり父親なのだろう。この作品も経年による劣化が激しく,あちらこちらに樹脂の亀裂や塗装の剥落があった。