願・祈・繋・魂
光井です。
医学、ウクライナ支援、気になる部分は色々あるかと思いますが、今回は書道の職人という部分に目を向けて少し。
例年通り、夏の長期製作期間を、今年も無事終えました。
ここからは僕の手を離れ、各職人、各会社のもとに行き、皆様のもとへ届きます。
その過程で、僕の頭の中にあることの一部を、ここに書き留めておこうと思います。
今回はイベントもありきで、大変多くの方々に自信の書を見ていただきました。
その中で、
「普段興味がなかったけど、ちょっとだけ興味が持てた。」
「実際に書いているのを見て、鳥肌がたった。」
等の言葉を多くいただきました。
日本文化とは、特別誰かが海外に向けて作ったものではなく、昔の人が当たり前に生きてきた中で、少しどこか生活の中に潤いがあればと作り上げてきた物の名残りだと、僕は考えています。
その名残りを、正しい形で、受け継いできた方々が、現代の職人です。
その職人の作品は、ひらめきや偶然の刹那的産物なんかではなく、正確に受け継いできた技術を無意識の領域まで研ぎ澄まし、誰が見ても確実に美しいと思える完成品です。
書道家人生の中で、幾度となく、その職人の方々にお世話になりますが、現在、日本の伝統職人の数は減る一方です。
コロナ、戦争、不況、様々な理由で僕の周りの職人も長きにわたる暖簾を降ろし、技術が今の代で途絶える、という瞬間を多く見てきました。
方や我々、人前でパフォーマンスや教室ができるプレイヤーの生命は、筆も紙も墨も軸装も、そう言った職人の仕事のもとで成り立っています。
お互いがお互いの支え合い、お互いを必要としあって、我々の、もの作り生命は成り立っています。
製作の中で、日々考えてたことは、いかにそう言った職人を残すか、いかに次の世代に興味を持ってもらえるか。
ただ書が好きな人に書を売るだけでは意味がない。
自分自身が有名になるのも大事ですが、それよりも、全く興味がなかった人たちに、ほんの少しでも、素敵だなと思わせること、日常の中にどんな形であれ、ちょっとあれば幸せだなと思わせることです。
それも、プレイヤーだけではなく、職人を前に出しながら。
こう言ったことを考えながら、ここ数年は製作にあたっていました。
今回依頼を受けたイベントの一つに、とある筆ブランドがありました。
そこは、圧倒的な技術で間違いなく最高品質とも言える筆を生産してるにも限らず、次ぐ人がおらず、職人の数は現在は10人にも満たないとのこと。
いかに職人を前に出し、書道家ではなく、筆職人になりたいと、思わせるかどうか。
そこがそのイベントの僕の中での最終目的でした。
結果は無事大成功、来ていただいた方々からだけではなく、市議会の方々からも多くのお礼のメッセージをいただきました。
現在は、こう言った活動に目を向け、時間があれば各地へ足を運び、あらゆるタイプの職人の方々と、何かいい形でコラボできるものはないかと話をしています。
自身はあくまで書道家なので、できることは書を書くことだけです。
上でも述べた通り、互いに互いを必要としながら生きている身として、僕ができることは、やはり一番は、作品を買っていただくことです。
僕自身デザイン会社をやっていますが、その経緯の一つは、デザインとして日常の一部かつ手を出しやすいものにすることで、今まで興味を持っていなかった人たちに、
「どこか一つでも、フォントだった部分を筆文字にしてみようかな。」
「ここに一筆でも入ってたら、ちょっとは豊かになるかな。」
と思ってもらうことです。
しかし、デザインだけでは僕1人の仕事で終わってしまうので、その先には、いつかこれを機に興味を持ってもらえて、作品としてお迎えして欲しいな、という願いがこもっています。
最近は、出歩く時筆ペンを持ち歩き、飲み屋で隣に座った人のリクエストをそこらの紙に書いたり、子供の名前を1日タトゥーとして腕に書いたりしています。
書には全く興味がなかった人たちが、書いてるところを見て息を呑み、書き終わったものを見て嬉しそうにSNSにアップしてくれる。
時に、技術を安売りしてると言われますが、そうじゃありません。
一度興味を持っていただくことで、いつか作品として、迎えてくれることを願っているからです。
だから、手本も渡しますし、頼まれたらさっと書きますし、イベントでの作品以外の商品は原価計算のみで売ります。1日タトゥーだってフリ素ですw
ちょっと長くなりましたが、今回の日本での製作を通じて、お客様側も職人側も、多くの想いをお聞きし、それを形にできたと思います。
御注文いただいた方々、それに関わってくださった方々、本当にありがとうございました。
この書がいつか、皆様の人生の中で、何かの救いや希望になることを願っています。
それともう一つ。
現在、書と音楽のコラボで最高に面白いものを作っています。
僕の頭の中を最大に爆発させたものを作り、伝統が現代に当たり前に溶け込んだ、次の時代の新しい自然を作ります。
楽しみにしててね。
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