私の面白履歴書③

矢玉四郎童話全般

こどもの頃、特に小学生になってから好きになった作家は、作者の名前で読む作品を選ぶ傾向がありました。

寺村輝夫、原ゆたか、那須正幹、三田村信行、斉藤洋、さとうまきこ、たかどのほうこ、山中恒、森絵都、はやみねかおる、いとうひろし、あげればきりがありません。

その中でも、矢玉四郎さんは、異色の存在でした。

最初に読んだのは「はれぶた」シリーズの「ゆめからゆめんぼ」だったと思いますが、墨で描いた独特のペンタッチはもとより、内容が本当にメチャクチャ、というか荒唐無稽で、遊び心にあふれ、私がナンセンス・ワールドの深みにはまるきっかけの1人となる作家でした。

当時「笑いばくはつ!」というキャッチコピーが本の帯に付いていましたが、笑える、というよりは、何でこんなことを思いつけるんだろうという不思議さのほうが勝っていたと思います。

中でも、「ねこの手もかりんとひとつ」シリーズは、奇妙奇天烈な世界観がはれぶた以上に炸裂しており、カオス全開のストーリーなのに、あとがきは妙にお説教くさいという唯一無二のものでした。

矢玉さんは、忙しさの中で道草を食うことや、固定観念に縛られないで頭を柔らかくすることの重要性を説き、こども心にクリエイター魂を揺さぶった巨匠の1人で、ファンレターに直筆のお返事をいただいたときは嬉しかったです。

幼年童話「シカクだいおうとハナクソ・マルメル」には、赤塚不二夫「天才バカボン」の、晩年の「はれときどきあまのじゃく」には、藤子・F・不二雄「ドラえもん」のと同じともとれるネタが見受けられますが、矢玉先生の独自の作風は「奇想天外」という言葉で括れるように思います。

中学生向けに書かれた「きもち半分宇宙人」も、機会があったらまた手にとってみたいです。

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