S6ランクを目指すライバーと、彼女を推すひとびとの物語
2022年1月。あるところに「S6ランク」を目指すライバーがいました。
そのライバーは外国からライブ配信をしていましたが、とても可愛らしく、トークがうまかったので、「推したい」という人はどんどん増えました。
彼女がS6ランクへ到達するために、彼女を支援をする仲間が集まり、毎日コインを支払いはじめることになりました。
仲間たちは、自分たちの生活や仕事もある中、彼女のライブのアシスタントや、集客の手伝いもしました。
そのおかげもあり、彼女はますます人気になり、とてもたくさんの視聴者に囲まれるライバーになりました。
彼女は、仲間に感謝の意味で、あれこれお礼をしました。コア特典も毎月変えて、仲間たちにバリューを提供しようと頭に汗をかきました。
とくに、実際に手を動かしてくれる仲間とは定期的に近くで言葉を交わすために、コロナ禍による隔離期間もある中、遠方から来日していました。
そんな手厚いファンサービスに惹かれ、彼女のファミリーは雪だるま式にファンが増えました。
大勢のファン同士でも交流がうまれ、とある空地に、ファン専用の公園ができました。
公園の場所代や維持費は有料でしたが、それは有志が負担しました。
公園の楽しさに惹かれ、ますます多くのファンが集まりました。
しかし、このころからライバーとファンに意見の食い違いがでたり、ファンの間でケンカが産まれるようになりました。
会費を払っているんだから満足度を上げたい。
それにあいつは会費を払ってない。
私だけがこんなに払うのはおかしい。
私生活が……仕事の都合が……etc。
様々な意見が投書箱に投稿されるようになりました。
色んな人が集まる空間だけに、それは仕方のないことなのかもしれません。
一方で、ライバーの意見はまた違います。
会費は税金ではありません。投資でもありません。ライバーがS6ランクになるための寄付が本質です。
もちろんそれはライバーへの一方的な貢物になってしまいますが、それに不満を持つ人は寄付しない選択肢が正解になります。
「お金を払っているんだから正当な見返りが欲しい」「自分にとっていい場所にするために使ってほしい」は一般的には間違っていません。
そこだけ切り取れば正論に聞こえるかもしれません。
しかしこの場合、はじまりの本質から大きくずれていると主張するライバーのこの言い分に、納得いかないファミリーメンバーは、会費の支払いをやめたり、〆配信への出席を辞退するようになりました。
「寄付」か「税金」か。
そのズレが、どうしようもない断絶を生みました。
また、そこの公園の維持費の負担や、管理は有志が無償で行っています。本来、義務や権利が発生しないもののはずなのに、ライバーから貢ぎ物の量が少ないことや、公園の管理が行き届いていないという不満の声がぶつけられることに対し、一部の有志の心は折れました。
更に、自分の指示が聞き入れられず、不満に思ったライバーは、ここがどんなにひどい場所か、同業のライバーやライバーに近い一部の有志に、貢ぎ物が少ないことや公園のずさんな管理状況を声高に宣伝しはじめました。
「公園を今より、よいものにする」ために。
しかし、その声を発した場所が不特定多数の集まる駅前だったせいか、せっかくライバーのことを「推したい」と思っていた人たちが、「そんなにひどい場所なら、ここで遊ぶのはやめよう」とファンの集まりに入るのを躊躇すらするようになりました。
維持管理を担当している有志は、それがどれだけライバーやファミリーにとってよくないことか理解していたので、ライバーからの手加減のない罵声や批難の声にぐっと耐えました。
それでも怒りの収まらないライバーは、貢物の量が少ないことに対する報復措置として、公園の閉鎖を決定したのです。
維持や管理の手法に対し、ライバーから不満をぶつけられ続けても耐えていた人たちもついに怒りました。
多額の「税金」を払っているのに公園を閉鎖する。
借金をしてでも公園の維持費を捻出していたのに突然の閉鎖決定。
それは許しがたいし、説明責任があると。
ライバーからの回答は
「貢ぎ物が用意できないなら公園に来るな」
「貢ぎ物がないなら話しかけるな」
でした。
心を痛めた有志たちは、去るものもいたり。説得を試みる者もいました。
ライバーは、涙を流して今後の配信やこれからの公園の維持費について悩んでいます。
ファミリーは、重税化する維持費や、ぶつけられる
罵倒に涙を流して悩んでいます。
はたして、本質とはなんでしょうか。
そして本当に大切なことはなんなんでしょうか。
Ask not what your country can do for you; ask what you can do for your country.
- John F. Kennedy -
国があなたのために何をしてくれるのかを問うのではなく、あなたが国のために何を成すことができるのかを問うてみてください
-ケネディ-