「必要ない」こそが必要。
スタートアップスタジオquantumのクリエイティブ担当役員、川下です。
「事業作家」として、未来の物語を書く中で得た気付きをnoteにまとめています。毎回、コンパクトな分量・内容を心掛けているので、ご興味ある方はさかのぼって読んでいただけると嬉しいです。
さて前回は、新規事業のアイデア出しの基本、「キロク、キオク、キカク」について紹介しました。
今回は、キカクにつながるキロクの増やし方について書きたいと思います。
コロナ禍は、わたしたちの生活や働き方に様々な変化をもたらしましたが、その一つが、リモートワークの推進による、オンライン会議の普及です。
オンライン会議が普及したことにより、わたしの仕事にも予想していなかった大きな変化がありました。それは、「アイデア出しのスランプ」です。職業柄、広告制作、事業開発に長年携わってきたわたしは、コロナ禍が訪れる前までは比較的苦しまなくてもアイデアを生み出すことができていたように思います。
ところが、最初の緊急事態宣言が出された期間中、1人でアイデアを出そうとしたとき、不思議なことにいつもうまくいっているときに感じる「この企画はおもしろい!」「あっ! これはブレイクスルーしたぞ!」という体感が全くなく、どうも自分のアイデアがありきたりで、いまいち突き抜けていない、と思うことが何度か続いたのです。
もしかすると、これはスランプかもしれない。
どうして、アイデアにキレがなくなっているのだろう。
その原因を考えたとき、ふと、これまであった「雑談」の機会が減っているのだということに気づきました。思えば、会社の仲間がオフィスに集まっていた頃は、よくたわいもない会話をしていました。オフィスでは、直接同じプロジェクトには関わっていない社員とまったく仕事と関係のない話をしたり、会社帰りには社外の友人・知人と仕事の話から本当にくだらない話まで、様々に情報交換をしたり。そんな何気ない会話時間が、激減してしまっているこの状況が、アイデアを生み出せなくなっていることと関係があるのではないかと考えるようになったのです。
わたしは、これまでアウトプットとインプットについて、「1:100」の関係を意識してきました。つまり、1のアウトプットを生むために、100のインプットをしようと心がけてきたのです。
コロナ禍に入っても、オンライン会議の普及によって仕事において最低限必要なミーティングは滞りなく行われています。しかし、必要な会議だけが設定されるようになり、新しいインプットが入ってくる機会が一気に無くなってしまいました。
オンライン会議が終わったら、退出ボタンを押してブツッ! その結果、確かに無駄のない時間の使い方ができるようになった面もあります。その一方で、まじめな会議が終わってみんながゆるんだ瞬間にしていた溢れ出るような無駄話がなくなりました。それに伴って、これまでひとりで歩いているときや、ひとりで入浴しているときなどに、日中の雑談がきっかけでふとひらめいていたようなキレのあるアイデアがめっきり生まれな無くなってしまったのです。
脳内でクリエイティブな化学反応を起こし、斬新なアイデアを生み出すためには、あえて必要ない情報をインプットすることこそが実は必要だったのだと、このコロナ禍の中、改めて認識させられました。
この経験を経て、quantumではあえて必要のないことを話し合う「雑談会」というミーティングを設けるようになりました。確かに、オンラインでの会話と対面で会って話すのでは圧倒的に情報量が違いますし、社外の人と話せる機会も以前ほど多くなく、まだまだもどかしいところはありますが、仕事の話をしない「雑談会」を実施するだけでも、大きな変化があったように思います。
アイデアに煮詰まったら、ぜひ皆さんも「雑談会」のような時間をあえて設けてみてはいかがでしょうか。その、本来は必要ない時間こそが、実は一番必要だったということに気付かされるかもしれません。
さて次回は、アイデアのヒット確率を上げる、意外な方法について取り上げたいと思います。
イラスト:小関友未 編集:木村俊介
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