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新規事業を殺す、遠慮と忖度。

スタートアップスタジオquantumのクリエイティブ担当役員、川下です。
新規事業開発を成功へと導くために「未来の物語」を書く事業作家として働く中で考えていることを、このnoteに書き留めています。

前回は、連続的に新規事業を生み出すために、ビジネス開発に必要なプロフェッショナルを揃えた「スタートアップスタジオ」という組織形態について書きました。

今回は、そのスタジオのメンバーたちと、どのようにしてプロジェクトを進めるかについて紹介したいと思います。

新規事業と言うと、スピード感ある立ち上げをイメージされる方が多いかもしれませんが、実際には想像よりはるか長い道のりです。開発するのがどのような事業かによって立ち上げに要する期間は大きく変わりますが、これまでquantumが携わってきたプロジェクトに関して言えば、一番最初に開発のご相談をいただいたタイミングから実際事業を世に送り出すまでには、早くて1年、多くの事業はおおよそ1年半から2年を要しているように思います。さらに、事業というのは立ち上げたらおしまいではありません。そこからが本当のスタートであり、ローンチ後は何度も試行錯誤とプロダクト(製品・サービス)の改善を繰り返すことが必要になります。

そんな開発プロセスにおいて、プロジェクトオーナーが何百回、何千回と実践しなければならないことがあります。

それは、決断。決めることです。

言葉にするとたった一言で、決めるだけならそれほど難しいことではないと思われるかもしれません。しかし、「プロジェクトオーナーの仕事は、決めることがすべて」と言ってもよいくらい重要なアクションなのです。

元米国大統領のバラク・オバマ、apple創業者の故スティーブ・ジョブズ、facebookのマーク・ザッカーバーグといった方々がいつも同じ服を着ているのは、意思決定の精度を上げるためだと言われています。国や企業のトップは1日に何度も重要な意思決定をしなければなりませんから、意志の力が消耗することは少しでも減らておきたいというわけです。裏を返せば、それだけ決めることにはエネルギーが必要だということになります。

もしあなたがプロジェクトオーナーであれば、あるいは、そうなったら、幾度となく判断を求められる局面があるでしょう。そのときに、絶対やってはならないことがあります。それは、「遠慮」「忖度」です。

三蔵法師は2人いらないと、以前の記事で書きましたが、メンバーが複数いるプロジェクトにおいて、オーナーはあなた1人です。そんな中、ある局面で、メンバーみんなが自分と反対の意見だったとき、個人の考えを押し通して万一うまくいかなかったら、チームから総スカンになるのではないかと不安になることもあるのではないでしょうか。ついつい弱腰になり、チームに対する遠慮で判断をゆがめてしまうことが起こり得ます。

また、パートナーや上司が存在するプロジェクトでは、そうした相手にお伺いを立てなければならない局面が何度か訪れるでしょう。そんなとき、相手と自分の意見が異なると、忖度したくなってしまうかもしれません。

しかし、遠慮と忖度の結果生まれた判断は、たいてい後に「あのとき、本当はこう思っていたのに」「こうしておけばよかった」などという、大後悔につながります。

オーナーにとって正しいのは、仲間から嫌われないことでもなければ、パートナーや上司に気に入られることでもありません。事業を世に送り出し、顧客の課題を解決することです。そのためには、プロダクトにとってベストな判断を下すことが重要です。

では、そうした意思決定を行う上で必要なことは何でしょうか。その要素については、次回に譲りたいと思います。

イラスト:小関友未 編集:木村俊介

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