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『DX経営図鑑』リリースしました

みなさまこんにちは

随分とnoteが手つかずになってしまってましたが、その理由の一つがこいつの執筆で地獄を見ていたからでした(苦

アジアクエスト、『DX経営図鑑』をアルク出版より刊行
https://www.asia-quest.jp/news/28241/

2016年に一念発起してアメリカに渡り、45歳にして大学院生になり、あわよくばアメリカで仕事を見つけて移住したろかと考えておりました。

すると2017年に奇跡のトランプ大統領爆誕。就労ビザの夢はほぼ潰え、2018年に泣く泣く途中帰国となった私を日本で待っていたのはDXという波。

色んな人からDXと言う言葉を聞くようになり、調査やコンサルを手伝ってくれ、ということで色々フリーランスでお仕事をいただくことができました。就活していないのに帰国後すぐ仕事にありつけたのは、優しい皆さんとDXのおかげです。

「DXってなんじゃい」

そう思いながら自分なりに色々考察を重ねてきました。

で、ウメオ大学のストルターマン教授の論文にたどり着くわけですが、日本でDXキャーキャー言っている話って、ほとんどがカイゼンの文脈で語られていることに気づきました。教授は「goodlifeのためにIT技術をつかって変革するする方法論」としてDigital Transformationという言葉を用いたわけですが、日本における99%のDXなんちゃらは、goodlifeという目的語が抜けている。

ビジネスをスピードドアップする。今までになかった体験を提供する。デジタルで企業を変える。etc.

で、「それによってエンドユーザーは何を得るのか」がすっ飛んでいる。

これは30年前くらいにあったIT化の文脈と同じ現象だなと。

IT化が目的語になってしまって、エンドユーザーに提供する価値が消し飛んでいる。アナログがデジタルになって、どんな幸せがあるのだろう。世の中はどんなふうに良くなるのだろう。

これを考えないと、「また日本は新ガラパゴスを作ってしまうぞ」そう思ってげんなりしてしていたのが2019年頃。

その時、NYUの先輩である西野伸一郎さんからアジアクエスト社の桃井社長を紹介され、DX Navigator立ち上げの機会をいただきました。同メディアの編集長兼主筆として世界中のニュースを拾いまくりつつ、こちらもNYU先輩である射場瞬さんのディープな海外調査をお手伝いしつつ、少しずつ自分の中での方向性が見えてきました。

「DXとは価値提供のプロセスをデジタル技術を駆使して変革する物語」

なんじゃないか、と。

そんな思いでメディアを続けていく中、アジアクエストのCMO兼DX戦略室長として正式にお招きいただき、さらにアルク社の泉取締役から「それ、本にしない?」とのお誘いをいただき、この書籍を世に出すというチャンスを頂いたのでした。

この本を通じて皆様にお伝えしたいことは、

「DXは物語であること」

「DXはエンドユーザーへの提供価値を変革して初めて成立すること」

の2点に集約されると思います。

まず、DXは技術導入そのものでもなければ、瞬間的なプロジェクトでもありません。戦略か?というとそれだけでもありません。
雨後の筍のように出現する革新的技術。それらを組み合わせて生み出される機能やサービス。そして、そのサービスを創り出す仕組みも、エンドユーザーに届ける仕組も、劇的に変化していく。変化を体験したユーザーは、もっと良いものを求める。類似した競合が現れる。こういった一連の流れを連続的に、循環的に続けていく物語そのものがDXなのだと思ってます。

そこには技術革新があって、エンドユーザーが喜ぶ新しい価値があって、経営者の挑戦がある。そういったストーリーを描けたらいいなと。

もう一つの提供価値の話。

提供価値は、基本的に苦痛(ペイン)を取り除くことと、利得(ゲイン)を創出することに尽きると思ってます。そしてそれは両方なくてはならない。ペインが除去されれば物事が便利になります。Amazonはまさに強力なペインキラーのビジネスです。でも、その先に実質的な利得が無いとユーザーは飽きてしまいます。それはディスカウントかもしれないし、幸せな気持ちになれる喜びかもしれないし、世の中に貢献への貢献や自己実現かもしれない。NYUの授業でブランド・マネジメントを習ったときにNIKEの中の人に話を聞いたことがあります。

「NIKEはアスリートの1秒1スコアを削るための努力やパフォーマンスというペインを削る。そしてそれは、自己ベスト達成や試合に勝つなどの自己実現という強大なゲインにつながるものでなくてはならない。」

そういうことだよなと。DXというと技術の話ばっかりになりますが、その技術が価値に結びついてないといけない。それを分解する手法としてペインとゲインのアプローチはうってつけなんじゃないかと思ったのです。

「DX経営図鑑」は世界32のDXケースをまとめています。誰もが知ってるNETFLIXやNIKE,WalmartやTeslaといった巨人たちのケースから、誰も知らない(かもしれない)スタートアップまで取り上げました。経営者の出自やDXに至る経緯を可能な限りストーリーとして描写し、DXが生み出すペイン除去やゲイン創出の図式化を試みています。

この本は、テック本でもなければ戦略本でもありません。DXという、いわば「現象」がどんなふうに起こり、実行に至り、どうやって価値を生み出しているのか、をざっくり知るというためのサマリーです。

これをヒントに、新しい分解方法や着眼点が出てきて、さらに日本のDX論が深まることを切に望んでいます。そうしないと、この国はまた新ガラパゴスに向かってしまう。今度こそ残念な国になってしまうかもしれない。

アメリカでの2年は、海外との意識差を思い知らされ、思ったほど日本が進んでいないこと、未来に撒かれた種の数が乏しいことを思い知らされました。帰国したら、GDP3位という小さな島国のプライドが色んな所で邪魔をして、国民全員で「俺達はスペシャルだぜ」という夢にすがりついているような怖さを感じていました。

そんな中でも、チャレンジしたい、何かを変えなければだめだ、でもうまく前に進めていない、という人たちがいっぱいいることもわかりました。そんな人達が一歩前に進むための一助として、この本が役に立ってくれたら嬉しいと思っています。今僕が在籍しているアジアクエストもそういう志を持っている集団だからお世話になっています。

成功しているDXの先人たちももがきまくってそこにたどり着いていますし、更にみんな道半ばです。大いなる実験台として足跡を残しています。それを参考に、前に進みましょう。おっさん留学の結果、後世に残せるかもしれない、わずかばかりの社会貢献がこの本でできたら嬉しいなあ。


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