“自分”ができ上がるために必要な事
子を持つ親の気持ちとして、我が子が幸せな一生を生きてほしいと願わない人はいないだろう。
親にとって、子どもはいくつになっても子どもだけれど、肝心の子どもからみれば、いつの頃からか、親の介入や干渉がたまらなくウザったく感じられる様になり、その結果、親子の間に深刻な対立が生じてしまう事もある。
それでも、 子どもの育ちに親の存在は不可欠だ。
ただし、親から子供への介入や干渉が過剰になると、ひいてはそれが子どもの自立、子どもが確固たる自分を確立する事を邪魔してしまう事になりかねない。
子どもへの思いの強さは、時に子ども達への過干渉や過保護につながってしまう…
子どもが一人の人間として成長して行き、「自分」を確立するためには、「自分」は「ありのまま、このままの自分」であって良いと言う事を、自他共に認められる事が必要で、特に、その子自身が「自分」を認めて受け入れる気持ち「自己肯定感」が育つことが大切なポイントだ。
しかし、今、日本の若者の自己肯定感は他の国の若者に比べて低いと言われてきたが、それに加えて昨今はますます低くなっていると言われている。
2019年に発表された内閣府の調査では、13歳から29歳までの若者のうち、「自分に満足している」人は45%、「自分には長所がある」人は「そう思う」と「どちらかと言えばそう思う」をあわせて63%で、どちらの結果も欧米諸国や韓国と比べても低く(ちなみに外国ではいずれも80%以上が肯定的に回答している)、日本人の若者では、自分自身に満足していたり長所があると思うなど肯定的に捉える人の割合が低く、さらには自分は役に立っていると感じる「自己効力感」も低いと指摘されている。
この調査結果からは、このような調査に控えめに回答してしまう、日本人に特有な(?)「謙虚さ」を割り引いたとしても、自己肯定感の低さが、自分の行動に自信が持てずに何事にも消極的になったり、ひいては社会から疎外感を感じたり、生きにくさを感じる原因となっている。
また、自己肯定感の低さは、時に過度な承認欲求や人に対する嫉妬心からいじめや学校不適応とも関連していると言われていて、日本の社会に蔓延するイジメ問題の根本にも自己肯定感の低さ、自己効力感の低さが暗い影を落としている様だ
でも、自己肯定感ってどうしたら高める事ができるのだろう…
子どもの心の成長には、人と人とが支えあい、寄り添う社会が必要だ。
子ども達は心配だったり、怖かったりした時、大人の後ろに隠れたり、服や手をぎゅっとつかんだりするが、この行為によって周囲の大人たち(多くの場合、お父さんやお母さんなのだが…)に文字通り「つながる」事によって得られるほっとする安心感は、やがて子ども達が成長し、「自分」が組み立てられてゆく時間の中で、親や周囲の大人たちに守られ、大切にされていると感じられる事につながって行き、このような日々の体験の積み重ねがとても重要な事なのだ。
自分が愛されている、安心を感じられる、と言う事はやがて自分が人の役に立っていると感じる「自己効力感」につながり、そこからさらに人と心を通わせる「共感性」が育まれて行く。
子ども達の自己肯定感を高めるために、親としてできる事は何だろう。
子ども達が自分を肯定できる様に育つためには、なによりも自分が受け入れられている、認められている、と実感できる経験を重ねて行く事が必要。で、あるならば、親としては子どもの「ありのまま」を受け入れると言う、シンプルではあるが、日常生活の中で実行するにはなかなか難しい事が大切、と言う事になる。
子どもは親から叱られる事が多く、褒められる事は案外少ない。
「うわ、この前できなかったのに、今日はちゃんとできたね」
「お友だちと仲良く遊べたね」
「うまくいかなかったけど、頑張ったね」…… などなど。
一つ一つは小さな出来事でも、何ができたのか、できる様になったのか。
成功や失敗ではなく、そこまでの努力を認める。
子ども達が自然に示す「認めてほしいところ」、「ほめてほしいところ」をよく観察する。
そして…見つけたらすかさずほめる。
この繰り返しの中で、子ども達の心の中に達成感やうれしい出来事が積み重なって行き、やがて「自分はこのままでいいんだ」とありのままの自分を認める事ができる様になる…
しかし、親にとって子ども達をほめる事は叱ることよりも難しいかも知れない。自分の子育ての経験でも、小児科医として日々接するお母さんやお父さんたちの体験談を聞いても、「言うのは簡単だよなぁ」なんて思う。
感情的になるのは一瞬の事だから、頭ではわかっていても、気がついた時には怒鳴っている、なんて事が悲しいかな現実ではあるだろう。
しかし、そうだとしても、周囲の大人、特に親との関わりが、子ども達が「自分」を作り上げて行くのにとても大きな影響を及ぼしている事を意識できれば、子ども達との関わり方、接し方を少し見直せるのではないだろうか。
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