047_20240222_この世界は不完全すぎる
基本情報
左藤真通(まさみち)さん執筆の、ファンタジーマンガ
講談社「コミックDAYS」にて2020年5月から連載中
既刊10巻で連載・続刊中
メディア展開
100studio/studioぱれっとにより、2024春アニメ化予定
大まかな紹介
極秘に組織された調査隊「王の探求者」(キングス・シーカー)の一員である主人公・ハガ。
この世のあらゆる事象を調べ、世界を旅する探究者は村人からも尊敬されていた。
任務の一環でドラゴンの襲撃から村を守ることに成功するハガ。
成り行きで助けた少女・ニコラと世界を探検することになるが、ハガの真の目的は冒険ではなく…。
コミックDAYS公式の作品紹介より。
導入
草っぱらに民族衣装で呆然としている少女
「繰り返しの平穏な毎日、それで問題ないとおもっていました、あの日までは…」
「ドラゴン…?」
足ヒレだけで自分の身長以上ありそうな、巨大カエルみたいな怪物が眼の前に居る
村に向かってくる「山奥に住むドラゴンがどうして人里に?」
死を覚悟したその時、草むらから左足を掴まれる
「動かないで、大丈夫、大丈夫です。ここ安全地帯なんです…動かないで」
ドラゴンが過ぎ去った後、草むらから草をかぶった大男がズザっと立ち上がる
「すみません、気持ち悪くて吐きそう…振動に弱くって」
近くでまた「ズンズン」という物音が
ドラゴンが岩に引っかかって進めないのを、男はなにかにメモしている
「モンスターの生体を調べてるんですか?」と聞くと「世の中のこと全部です」
自己紹介、少女はニコラとなのり、大男はハガと名乗る
少女の知識によると
ここは、大陸の南方の辺境、クレボーン島、その中でも左端の小さく平和な横行の、さらに左端の小さな村
村の酒場で噂している
あのハガというヤツ「王の探求者(キングス・シーカー)」じゃないかな?
キングス・シーカーは、国の異常の調査隊で、選りすぐりのエリートって噂だ
ハガは自分のテントで矢の整備をしながら、なにかを書いていた
現代社会で見慣れた表計算ソフトのような行列の用紙に、報告を書いている
書き終えると、空に向かい光が立ち上がり、何かが転送されるような様子
それを少女ニコラは観ており、話かけた
ニコラは感謝を告げる「おんなじ毎日に、ハガさんのおかげで、すっごく刺激的でした!」
その時、地震が襲う
「皆を避難させてください!昼間のドラゴンが村を襲いに来ます、早く!」
今はキミを死なせるわけにはいかない!
避難は終えたが、村に一人残る影、ハガである
ドラゴンに矢をうつが、食べられる
その後、重たそうな樽を崖下にキックで一個ずつ落としている
その樽は、ドラゴンに当たり爆発している
矢を打って樽で爆発、を繰り返している
矢はささるが、村人達は「凄い地味」と期待薄
樽と矢を数時間繰り返したが、ハガは「ヤバイ」と思う
崖から樽が遠く成ってきた…
村人たちが樽を持って駆けつける
「私達も手伝います!」ハガは「みんなで村を守りましょう!」と鼓舞
また数時間後、「倒せた?」「倒せたんだ…」みな自信なく勝利宣言
急にニコラが発火する、次々に村人もすべて発火していく
「仕方がないんです、ごめんなさい。ニコラさん…」
「これは負けイベントなんです ドラゴンに無理やり勝っても全滅するシナリオは変わらない!どんな条件でもちゃんと村が全滅するか多彩噛めることが僕の仕事なんです」
薄れる意識でニコラは聞いている「何を言ってるの?」
「ホントの僕の仕事は、ゲーム内のバグをチェックする `デバッガー` なんです」
「クエストの破棄を繰り返して、何度もキミが死ぬのを観てきました、でももう終わりにします」
ハガは懐古する
僕たちがこのVRゲーム「キングス・シーカー・オンライン」からでられなく成って一年経とうとしていた
地道にバグを報告し続ければ、このゲームから出られるだろうか…
ハガは人の気配を感じる
ウロンな目をしたニコラがテントの外に立っている
動揺しながら抱きとめるハガ
ここまでが一話(長め)
感想
設定や物語は「SAOのフォロワーストーリー」の感じ
今回は「VRMMOでデバッグしてたらログアウトできなくなった」話
オリジナリティはあるが、大筋の説明するのにSAOとの差分を示すのが一番てっとり早い
でも「2方向のリアリティ」をファンタジーでくるんでる
1つ目は「現実世界でのゲーム業界におけるバグというリアリティ」
「ポリゴンのスキマを抜けて永久に落ち続ける」だったり、「処理落ちで永久フリーズ」だったり
「3Dゲームのバグのあるある」という意味でリアル?と言える
しかし…そのバグネタが「2000年代初頭のPS1のレベル」なのが多いのはご愛嬌
ポリゴンの壁抜けとか、ポリゴン数過多での処理落ちとかは、時代を感じる
2つ目は「ゲーム内世界のリアリティ」
最初、読者は「これがゲームである」と気づかないくらいの純粋ファンタジー世界
「プレイヤーたちは違う(今の所わからない)が、NPCの人生は一度キリ」という制約
今回も「とあるおっさんのVRMMO活動記」「転生ゴブリンだけど質問ある?」と同じく
NPCは子を産み、育て、そして死んでいく
破壊された町は村人たちにより
今回も `制約` がストーリーを動かす
1つめは「NPCは人生は一度キリ」という制約
デバッガーは、彼らのみ許された「特殊技能」により、容易にNPCを殺戮出来てしまう
プレイヤーに出会ったNPCに合わせてサブクエストが生成される、という仕様がある
NPCは、プレイヤーと密なコミニュケーションをし、プレイヤーにとって個別のかけがえのないキャラとなる、里心が着く
そんなNPCが死ぬと「同じ人格は蘇らない」ので、プレイヤーに執念を生み、ドラマを生む
2つめは「ゲームの中に来た人々が戦闘不能に成った場合、現実世界でどうなってるのかわからない」という制約
まずは「ゲーム内で死んだら」ということ
それ以外にも「バグに巻き込まれて」という状態もある
フリーズ、壁にめり込んで行動不能、無敵で即死トラップに入ったせいで無限ループ、壁抜けで地面がなく無限落下、など
ほぼ「SAOと同じシチュエーション」と言えるが…
違いは「死ぬ」でなく「わからない」ということ
希望が在るとも言えるし、より恐ろしいとも言える
最後に「実はこうなっていた」という「種明かし」にも期待出来る
作者の「MMORPGものの主人公に”デバッガー”を選ぶ」な独特の味付けにセンスを感じる
プレイヤーの”超常の力”が、チートとかでなく「デバッグモード」であることとか
その「デバッグモード」が「通常プレイで想定されてないことが出来る」故に、使うと取り返しのつかないことが起こる、という設定とか
主人公は「極限状態の精神を”デバッグをし続ける”ことにより紛らわしている」であったり
何より「レベルや特技、または固有スキルで蹂躙」とかではなく「バグや調整不足を突いて、試行回数や想定外攻略法で打開していく」のは、この作品の真骨頂であり、俺好みだ
よく出来ているけれど、ちょーっと「現実のコンピュータゲーム」と「ファンタジー」のバランスがピーキーかもしれない?
NPCのAIがあまりにも「現実世界の人間の人格を持ちすぎている」こと
あまりにも我を持ち、主人公とのやり取りで学習・成長・情緒を通わせすぎである
「自由入力」であるはずの主人公(デバッガー)の発話を記憶し、それにより言うことを変え、学ぶ
デバッガーの言うことにより、夢を持ち、デバッガー達とは別に世界を冒険し、成長する
バグのレベルを考えると、高度すぎてアンバランス
とはいえ、「舞台装置」としては破綻なく面白く、ストーリーはよく出来ている
総評
別方向、違う土台、違う味付けから観た「SAO的MMORPGの受難劇」を感じたい人におすすめ
ゲームのグリッジなど「裏側のメカニズム」が好きな人には、(リアルではないもの)あるあるに膝を叩ける作品
最後までお読みくださり、ありがとうございます!
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