026_20230406_マイホームヒーロー
基本情報
山川直輝(原作)、朝基まさし(あさきまさし)(作画)による青年向けサスペンス漫画
山川直輝さんは「100万の命の上に俺は立っている」の原作者
余談ですが「100万の命の上に俺は立っている」はなろう小説とかラノベだとばかり思ってた
朝基まさしさんは「サイコメトラーEIJI」「クニミツの政」の作画担当
おそらく、原作付きで作画担当、という作品しかない(調べた限り)
『週刊ヤングマガジン』(講談社)にて、2017年26号より連載中
既刊20巻、まだ完結してない
珍しく「既刊最新まで読んでない」ので、10巻あたりをNow読み中
大まかな紹介
鳥栖哲雄は、一人娘・零花を愛するしがない会社員。
ある日、彼は零花の顔に殴られた痕を見つける。
誰にやられたのかと問い詰めても、零花ははぐらかすばかり。
その帰り道、哲雄は犯人らしき男を見つけ、後を付けていく。
しかし、それが家族の運命を変える事件の始まりだった。
父は娘のため、家族のため、修羅の道へと歩き出す。
『100万の命の上に俺は立っている』山川直輝×『サイコメトラー』朝基まさしが贈るジェットコースター・クライム・サスペンス!
導入
主人公は47歳で推理小説好きな営業のおっさん
小説は読むのと、読んだ小説でのトリックを応用・組み合わせた自作を投稿するのが趣味
娘が居るが、大学生で家を出ていて、そろそろ子育て卒業か?という状況
娘をめちゃくちゃ愛しており、日常が崩れるのを恐れている
とはいえ、もう娘は家を出た後なんだが
娘からはプレゼントをもらってたりするが、ここ数年はプレゼントを売りつけられている
開始3ページ目で、娘とレストランで待ち合わせして落ち合ってる
が、娘はマスクにグラサン、帽子という「身元を悟らせない出で立ち」
娘が、サングラスとマスクを外すと、右顔面に殴られた跡が
電柱にぶつかったと言い訳
作画表現からはわかりにくいけれど、おっさんは「3発も4発もか?」と殴られたのを具体的に指摘してる
一緒に住んでる男か?と指摘すると「違う!帰る!」と娘
とりあえず注文したステーキを食べて店を出ると、たまたま半グレの一団と出くわす
そいつらが大声で「一発ぶん殴って黙らせたんすか?」「そうなんだよレイカのやつ、親父が来るかもしれないから出てけっていくからよー」と話している
ここは娘のマンションのそばだな、と気づく
「たまたま下の名前が一緒だっただけだ…」と自分に言い聞かせるが…
その半グレの一団を追いかけると、キャバクラにたどり着く
ビル前でキャッチに「コッチ観てだろがちょっとこいよ」と路地に連れ込まれる
ゼナにひん剥かれて写真を免許と一緒に写真取られる
「うちのものを付け回すようなことしたら、警察に言ったらわかってんな?」と脅される
おっさん、漫画喫茶で咽び泣く
会社休む連絡して「娘を安全を確保する」という決意を元に、娘の部屋へ
そこに、先の半グレの男が「レイカ、帰ってんの?」と入ってくる
とっさにクローゼットに隠れるおっさん
半グレの男、電話をし始める
どうやら「義理の父の会社の話をしている」らしい
「今回は金を取ったら別れる」「モトカノを二人殴り殺してる」という物騒な話
おっさんは「この家に娘を帰ってこさせてはいけない」と電話をかける
が、スマホがその部屋に置かれており、その場で鳴る
そこで鳴った呼び出し音の音楽は「娘が自分のタメに作ってくれたテーマ」だった
半グレ、電話をとり凄む「てめえが親父か、おれはマトリノブトだ、今どこだ殺してやんよ」
おっさん、ここで決意「この僕が守らないと」
場面変わって、奥さん視点
奥さんが娘のマンションへ行く
「何このへや、めちゃくちゃ」
母親がそう言いかけた時、眼の前には後頭部を炊飯器で殴られ血溜まりができてる半グレの死体と、その前にひざまずくおっさんの姿が
「え、その人死んでるの?鉄雄さんがやったの?え、まさか鉄雄さん…」と奥さん
「まって、説明するから!」とおっさん
やたら冷静に話合う夫婦
ヤクザを殺したが、僕の身元は割れている(キャバクラの件で免許と顔を写真に取られてるから)
母さんとレイカが復習される可能性がある
半グレの彼らはチームだ、三人とも殺して山奥にでも埋めれば逮捕は困難
奥さん「私達が同じことしてもバレ無いんじゃない?」
おっさん「死体遺棄と分解するなら死体損壊もくわわるから実刑が確実、警察&司法か暴力団を相手にするかどちらかを選ぶことになる」
一方、外に「半グレ組織の手先」っぽい帽子にマスクの男が電話してる
「キレてるときののぶとならババアとあんなに普通に話たりしないだろうから、ここにのぶとは居ないのでは?」と
そんなトコに、娘さんが部屋に帰ってくる
おっさん、奥さん、娘が顔を合わすが、アレてう部屋にどうしたん?ってなる
彼と鉢合わせて彼が暴れたとおっさん
「レイカぶっ殺す」って言うてたから、一旦実家にもどれとおっさん
風呂清掃中だから観ないでね、と
もちろん、死体はそこである
しばらくして、死体を解体しようとしていたおっさんの居る部屋に、さっきの組織の手先が来る
ピッキングで入ってきた
何の準備もしてないのに、無理だ…ってなる
とっさに「トイレ掃除の出張お掃除サービスのスズキ」というキャラになり、トイレハチ合わせる
組織の手先は「合鍵借りるくらいの間柄の友達だ」と名乗る
なんとかごまかした
組織の上と手先との会話
娘をつけりゃいいんすね、ああ、もちかしたら拉致るかもしんねぇ
ここまでが、2話で、3話目のタイトルが「今日から殺人鬼」
全体的な印象
もう、開始3ページで「なんか不穏」とか感じるし、狂気を予感してた
ノン情報で「どんな作品なのか」を知らずに読んだけれど、こんな「絵と雰囲気とコマ割と文字の感じ」だけで、「これは多分狂気の物語だろう」って、どちらかというと察しの悪い読者である、俺に思わせたなーと
作画の朝基まさし先生は、過去作で「そないダークな作風をしていない」にも関わらず、3ページめで「あっ、やばい」って雰囲気出すの凄い
「サイコメトラーEIJI」も「クニミツの政」もサイコメトリーの回想だったり、何か犯罪を行われる現場は、残虐な描写があったけれど、それを「よく出てくる場面」とか「多様・常用」としては書いてない印象
描けるだろうけど「それでおなじみ」とかではない…と思ってたのだけど
なんか、序盤数ページで「ほんわかした親子関係」みたいなのを醸そうとしてる気がするけど…
もう、その前から自分は「不穏、これは不穏」と思ってて気が気でなかった
案の定、7ページ目で娘の顔に殴りあとという
全然「ポジティブな話」であるとか「夫婦・親子の絆の話」に捉えられない
異常者たちのごっこ遊びな日常、みたいな感覚でしか見れない
時折出てくるヒューマンなとこは、ギャグとして笑ってしまったり、偽りの上で演技しているオドロオドロしいものに見えてくる
こういうと、三浦は「作者や制作陣が言うてるストーリーの根幹部分を否定している」かのように聞こえるかもしれないけれど…
さっき言うた印象(異常者たちの偽りの日常に見える、とか)に「思わせる」表現力が、凄い!って感じてうr
それは、ひょっとすると「製作陣や作者の意図どおりではない」かもしれない
狂気の金太郎飴っていうか「どこを切っても、狂気の沙汰、ヴァイオレンスな何かにしか見えない」という絵作りを評価したい
絵柄が「最適な違和感」として絶妙
なんか「かっこいい」とか「きれい」とかにも振ってないし、かといって「汚い」とか「極端なグロ」とかにも振ってない
「内容を描く」程度に、邪魔にならず、最適な絵柄に感じる
平易なリアリティある程度な絵柄で「狂気」を描きたいんじゃないかな、と推測
出てくるキャラクター、特に味方側が「普通の人」然としながら、全員「何かの能力者」かつ「頭のネジぶっ飛んでる」という「異常性」をはらんでいる
おっさんは「ミステリーに精通している」という設定とはいえ、玩具メーカーの営業が、ITの知識の実務に詳しすぎるし、隠しカメラや盗聴も「実際に出来過ぎ」る
キーロガーを一瞬で仕込んだり、盗撮用カメラを数時間で調達・設置出来たり、死体解体の「環境の設計」を知識からアドリブでやったり
奥さんも異常な胆力と行動力がある…のを「演劇部出身」「過酷な実家の経験」とかで片付ける
娘も度胸座ってるわスリをさらっとやるのを「やれば出来る子」で片付ける
どこを取ってもダーク過ぎて、なにも救いがなくて笑ってしまう
ダークファンタジーの金字塔をハガレンとすれば、それと比べて全然希望は無い
幸せな事を1、不幸なことを-1、何気ない日常を0とするなら、0に戻すために、マイナスから抜け出せない、みたいな話
むしろ、そのマイナス方向にボンボコマイナスが膨らんでっては、少し戻す、みたいな展開ばかり
「非日常」とか「異常性」とか「狂気」とかを、マンガで摂取したいなら、非常に優秀な作品だと思う
絵で異常性を表現するとかじゃなく、ちゃんとマンガで読みやすい
だけに、それらが際立つ
総評
「一般人が事件に巻き込まれていくという受難譚」ではあるが「出てくる人間大体なんかヤバくてあたまのネジ何本か吹っ飛んでる」みたいな、違和感のの塊みたいなヴァイオレンス読みたいなー、みたいな人におすすめ
「非日常や狂気への興味」を「マンガで諌める」みたいな、そんな目的にはもってこい
逆に「心が沈んでる時」とかには読まないほうが良いかも
陰鬱をより陰鬱へと落としてくれるマンガ
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