007_20220602_ニセモノの錬金術師
作品情報
「ニセモノの錬金術師」は 杉浦次郎さんによる 2020年2月から2022年2月までpixiv漫画として連載されていた漫画
杉浦次郎さん自身は、現在「僕の妻は感情がない」を角川「コミックフラッパー」で連載されている商業漫画家
一応完結のようなそうでないような状態の漫画
1巻50ページくらいを1巻とした全62巻
現在、AmazonKindleで 全巻無料 で配布されている
元々Pixiv漫画として発表されてたもので、作品というより「自身の考える世界観のラフ」をライフワーク的に綴っていたもの、と思われる
あらすじ
主人公は異世界転生をし、神様っぽいヤツからチートスキルをもらう
危ない目にあいたくないので自身職業を「錬金術師」とし、二つ選べるスキルを「魔法アイテム生成」と「死に戻り」を選ぶ
作成したアイテムを売って生計をたてる、という異世界転生らしからぬ地味ライフ
そんな主人公が「奴隷屋で2人の少女奴隷を買う」ところから物語が始まる
一人は奴隷屋の主人すら手玉にとる聡明で野心家の逸材呪術師
一人(?)は残忍な扱いを受け身体が欠損しながらも人類をキライになれない長寿のエルフ
主人公は聡明かつ度胸があり頭の回転も回る方ではあったが、性善説主義者で上手く暮らせて感謝があるなら、そこで充足してしまい流されて利用される面もあった
主人公は「転生した世界の理不尽・不条理さや残酷さ」は知っているつもりだったが、圧倒的に「危機感」が足りなかった
ということを、逸材であった呪術師褐色少女奴隷とともに暮らすことにより、気付かされ、見聞を広げ、成長していく
そして物語はこの世の謎と自分たちの運命の結末へと肉薄していく
…と、堅苦しくいいましたが、わりとライブ感があり話が大きく転がるスピード感のある痛快作
ファースト・インプレッション
Kindleで配信しているものの、今も「商業に乗っている」とはいい難い「ラフスケッチ」な絵である
描くべき要所はかなり書き込むけれど、どうでもいいところは、ほぼ白地にだんご人間
例えるなら「ネーム集」と言ってもまあ過言ではないだろう
誤解のないように言っとくと、作者の杉浦次郎さんは「画力が高く、ちゃんと商業でも通用する絵が描ける漫画家」である
それだけに「ストーリーに注目させる」し「作者がストーリーだけで勝負している漫画」である
絵に依存してないことからもわかる「ダークな作風」
世界観や登場人物がわりと残酷・残虐で、これが「克明でキレイな絵を書いてた」ら、逆に人によっては拒絶反応が出たかもしれない
それを緩和する意味でも意味でも絶妙な「絵に力を入れてない」感
小説や実写でいけるくらい、内容事態は大人向けと言えそうい
シバラク読んでいくと、なんという「観る方に頭を使わせる作風」だろうか?と思った
頭脳ゲームだが下書きで乗せる富樫作品や、最初聞いてても理解不能なやりとりで検証必須の庵野作品に通じるところはある
ただSFではなくファンタジー世界なので「物理的な整合性がとれてる」や「調べたら解る」わけでもなく、作者の「脳内設定」を探ることとなる
現代物理とも違う「特殊な説明」を読まされながら「こうかな?」と探るのは、考えるのが楽しくはあるが、時間無い時は苦痛かもしれない
ただ「ファンタジー」であるにもかかわらず「作者の脳内設定」がかなり整合性があり合理的に思える
第一資料、魔術、呪術、属性、マナ、錬金術師の歴史と知識体系、などなど「作者の頭の中でその世界観はある程度練られていて固まっている」という印象
特に錬金術師関連は、史実の著名な錬金術師の名前(パラケルスス、サンジェルマン、ホーエンハイム等)であったり、ある程度の知識造形がある気がする
漫画的ケレン味(急に出てきたキャラが鉄拳で蹂躙!とか)を出す所以外は、ご都合な展開はなく論理的な戦略で打開されていくストーリー
昔のドラゴンボールにも言えますが「勝負事にあまり奇跡は起こらない(強いものは勝ち、弱いものは工夫と戦略により勝ち得る)話は、読者に納得感を与え、名作になることが多い
なので感心されられるが呆れたり不快な感じは少ない
といいつつも、後半の展開など「拡張、後付、壊さない程度のご都合改変」はされてるように思われ、それがストーリーを転がすのに一躍買ってる…と思われる
ま、全ての設定は「作者の頭の中」だから、今の観想は推測にすぎませんけれど
作品中盤の印象
そんな「ストーリーで読ませる漫画」なので、貪るように一日で読んだ
割と「取り返しのつかない悲劇や不幸」があるので、ハラハラする
わりと作者の機嫌三寸で動かしてる感じもして、さらに先を気にさせる
巻数はあるけれど、サクサク読めるし、すぐ1巻読み終わってしまうので「あと何巻かぁ…」って口惜しく思いながら貪った
読後の観想
とにかく続きが気になって一気に駆け抜けた面白かった
ただ「初期に目的としていたこと」でいくつか遂げられて無いこともあり、まだ設定をそのままに続編を期待したい
完結してから、10巻くらいは「後日談」「短編集」だったので
清書して商業紙や有名Webメディア等で売れるクオリティで発表してほしい
ただ、その話は作者が「難しくなりました(理由は不明)」と言及している
余談
現在、Pixiv側で続編ともそうでないとも取れそうな「第百部」を不定期連載している
これも、本編をキッチリ読んでいたらニヤニヤさせられる話が多いので読んだ方は是非続けて読まれたし
Pixivには、作者の杉浦次郎さんの短編集も無料であるので気になる方は是非
本気の画力も観れるので
最後までお読みくださり、ありがとうございます!
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