035_20230824_トクサツガガガ
前置き
だいたい、完結作品は「読み切ってから」配信に臨むんですが…
今日は「フラっとタイトル買いしてカジュアルに読んでたマンガ」に引力が強すぎて「これは紹介せな!」と、最後まで観きってないけど紹介です。
読んでる勢いを持ったまま、紹介したい
基本情報
丹羽 庭(たんば にわ)先生執筆の、成人向けオタク&コメディマンガ
小学館「ビッグコミックスピリッツ」にて2014年37・38合併号から2020年24・25合併号まで連載
全198話、全20巻で完結済み
メディア展開
2019年にNHK「ドラマ10」にて実写ドラマ化されている
大まかな紹介
小学館の作品ページより。
隠れ「特撮オタク」OLコメディー!!
仲村さんは26才のOLさん。
職場では女子力が高いと見られているけど、
実は女死力滾る「特オタ(特撮オタク)」!
オタバレが怖くて、一人ぼっちでコソコソしながら生きてるよ。
人目につかないフィールドのカプセルトイを求めて街をさすらったり、
一人カラオケで“特ソン(特撮ソング)”歌いまくったり…
ヒーローの言葉を胸に、今日も進むよ「特オタ」道!
導入
会社では「目立たないが素敵なOL」を演じている中村叶(26)
同僚に誘われても断って、急いで帰る
それは、スーパー戦隊「ジュウショウワン」を観るためである
そう、彼女は特撮オタク、自宅でリアタイしてかっこよすぎか!と身悶えしているのである
皆には「素敵な女性」と勘違いされている
皆には「彼氏持ち」「彼氏と会ってるんだ」と思われてるが、居ないどころか、成分が濃すぎて家に連れてこれる状態ではない
弁当持ってきてて「女子力ー!」と言われるが「DVDのために節約してんだ!」と思ってる
「彼氏がオタクだった、隠してるのよくない」と女子トークに、「ばっきゃろう!好きなものをけなされたり嫌われたりするのは怖いことなんだ!簡単に好きなんていえねんだ!」と思ってる
場面変わって、電車で座ってると、ご老人夫妻が来る
譲るかを思案する時、心の中の「ジュウショウワン」が名セリフを言う
「自分が苦しいことは、弱いものを見捨てていい理由にはならない」
席を譲る
横に居た同僚は「どうしてそう優しいんですか!どうやったらなれるんですか」と言う
「特撮を見たらいいんだよぉ!」と心で悶える
うまいこと特撮からもらったエキスだけ言葉にする
子供のころに(特撮に)習ったことを思い出せば良い、悪いことしちゃいけないとか、小さいうちに(特撮に)習うでしょ?
特撮に得るものと比べれば、「隠す」なんて苦痛はなんてことない
と気持ちを新たにして駆け出し、足をくじくのであった
感想
この作品好き
共感度が高いところと、「自分は違うけれど理解出来る」部分が多くて、読んでてめっちゃ肯定感がある
なんというか「可食部の多い食べもん」というか、そういう嬉しさみたいな感情がある
この主人公も、めっちゃ好き
いや、制服でお硬い女性が好き、ってわけじゃなくて
「自分の正しさ」や「芯」を持って、理不尽と葛藤して、世界の理不尽や同調バイアスと戦いつつも、日々を頑張ってる女性…の話が好きみたい
主人公には共感も多く、「かっこいいな!」と思い、憧れる
自分の自分への評価は「オタクに憧れ」つつも、「半可通」や「俄」であり、オタクになれない、オタクに憧れてリスペクトしている人、である
そんな自分でも「わかるわー」なとこあるし、「突き抜けててすげぇ!」って思うところもあって、これまたリスペクトな主人公
作劇面を見ると、作者は「エピソードのデフォルメ」が非常に上手く的確
もちろん、特撮の「本家の固有名詞や実際のストーリー」は出せないので、捩ったものやアレンジしたもの、もしくは「作者の脳内になる”特撮”」を、作中劇として出しているのだけれど
「ああ、あの話やな」ってわかる話や、「戦隊やライダーとかなら言うかもな」というのを感じさせるのは、かなり理解度が高いのではないかなーと
ま、半可通かつ俄な自分が評価するのもおこがましいですが…
わりと普遍的かつ重たい社会問題にメスを入れている、と自分は感じる
例えば、親が自分好みの子供像を強要し、子供の自由度や自主性を奪って、没個性にしてしまう、という話
そして、大人になって反作用がでて、ゴリッゴリのマニアになる
で、その話は本人のトラウマになり、親は敵であり、未だ解決しておらず、曇っている
例えば、「普通」という「同調バイアス」が強く、「偏見」や「異端扱い」を恐れ、自分の本懐を表に出せず、隠して生きる話
いわゆる「オープンオタ」で行くか「隠れオタ」で行くか、の話
それが作劇に面白さを与えており、エンタメに昇華しているとはいえ、偏見と決めつけと異端審問の話
この話については、自分も「理不尽極まりない」「卑怯」と感じているので、共感が大きい
市民権を得てない少数派の時は「気持ち悪い」と異端を叩き、一定数居てそれが凄いと評価されると「自分、オタクなんでーwあ、でもライトオタなんであんなんとは違いますけどね?」みたいに「成果の掠め取りとマウント」を取り、現在みたいに「市民権を得た」後も「オタクですから」とマウントに使う…そんな「差別とファッションと成果の掠め取りためにオタクを利用してきた本当はオタクじゃない人々」が大っきらいなので
だからこそ「本能でどうしても探求してしまうというナチュラルボーンな人」は大リスペクトなんだ
絵が超絶美麗…というわけでもないのだけど、女性を主人公にしている割には「熱さ」みたいなモノを感じる絵柄
うすた京介と島本和彦と、少々の楳図かずおを足して、2.2くらいで割った感じ
楳図かずおは、作中明確にパロってる部分があるが
劇中劇のヒーローも、ファッションやキレイで濁す感じじゃなくて「全力」でマンガ書きに行ってる
「中に人が居る感」や「スーツの汚れ」感など、現実世界を感じる泥臭さが在る
ま、それが「この作品のテーマに関わる」から、全力でやってるのだと思う
裏側も含めて愛している、という主人公やその仲間たちの心を描くのに大事なのかなと
それも、巻数を経る度に、変わっていくのもまた面白い
途中、表紙がポップアートみたいになったりするし、上手くなってんだろうと思うけど、方向が変わってるだけかも?
「同好の士の仲間とわちゃわちゃする」みたいな展開が、羨ましくて嫉妬して泣く
友達居なくて孤独死が確定している自分にとっては、眩しくて目が潰れたり、歯ぎしりで奥歯が砕けそう
なので「主人公たちは偶然での出会いが多い」のだけど「そんな素敵な出会いなんかあるかぁ?」みたいな斜交いに観てしまう
そういう意味でも「なにかを全力で好き!」って言うオタクに成りたかった(憧れ)
半可通・俄とかなんとか言われて、ずっとオタクに羨望と嫉妬を続けてる自分にとっては辛いw
読者パイは狭いかもしれないが、刺さる人にはわけわからん刺さる、共感の強いマンガなんじゃないかなと
1巻の最後に「連載を始める時の自伝マンガ」があって、そこで担当に「好む人口が少ない」って言われてて、ミウラもそう思った
蓋開けてみたら「深く共感する人」がわりと居た
共感できる人には涙出るくらい強烈に刺さるので、マンガのファンが一定数いた
結果、ドラマ化されるほど
作者に俄然興味が湧いた
1巻の巻末の自伝マンガで勘違いしてた
「ひた隠しにしてきた」とか「別に特撮詳しくない自分が」とか言ってて
「この人は、テーマとして書いてるだけで、特撮等には肯定的ではない、ライトおたくなんだ」と
しかし、読めば読むほど「作者の特撮や特撮オタクに対する理解が深い」と思い知らされた
まず「特撮自体の理解」が凄い
それは前述の「パロディ」で言った通り
次に「特撮ファンの理解」が凄い
多分、実体験も多いのだろうなぁと思う写実性
上の世代に世代間マウント取られたり
下の世代観て「そっか、この子らは今、最新のものとして出会うんだ」と理解したり
偏見や理解されないことに悲しい思いをしたり、それでクローズになったり
反面、仲間を見つければ望外な喜びがあったり、同一視しすぎて差異で揉めないように距離感をあとで調整したり
この人自身も「特撮オタクマンガを書いて、仲間を得て、幸せになった人」なんじゃないかなぁと
大御所のマンガ家にリスペクトされて絵が寄せられてたり、特撮界隈の人らと対談やレポートなど仕事に恵まれたり
マンガを通じてのカミングアウトで愛されマンガ家になったんじゃないかなって
総評
「自分の好きなもの」があって、それを「全力で肯定したいな」と思った時に読むと良いマンガではないか
自分の置かれてる状況によっては勇気をくれそう
そうでなければ「とある探求者の心理をトレースする」というようなサンプリングしたい場合にも良い1ケースではないか
最後までお読みくださり、ありがとうございます!
1mmくらい「ええな」と思って頂けましたら、サポートをお願いします。
(この原稿を使ってるYouTubeチャンネルの活動費に当てます。)