039_20231019_ジパング
基本情報
かわぐちかいじ さんによる架空ミリタリータイムリープ漫画
講談社の「モーニング」誌上にて、2000年〜2009年49号(2009年11月05日発売分)まで連載
全422話、43巻で完結済み
受賞歴
2002年、第26回講談社漫画賞一般部門受賞
ジパングのメディア展開
2004年10月から、TBS系列でテレビアニメ放送
2005年、シミュレーションゲーム化
大まかな紹介
想定不能事態、勃発! 海上自衛隊所属の最新鋭護衛艦「みらい」原因不明の暴風雨に遭遇。
通信・衛星、ともに感無し。そして目の前に現れたのは……
講談社 コミックプラスのあらすじより
導入
200X年、横須賀基地から、自衛隊のイージス艦4隻が出向することから始まる
南米エクアドル争乱から邦人を保護するため、初の自衛隊艦の派遣
アニメでは単に「日米演習」だった気がする
南鳥島沖、訓練をするイージス艦「みらい」
副長兼船務長 角松洋介二佐 は、自室にて、乗船した記者のインタビューを受けている
いざ実戦になったとき、海自は戦えますかね?
片桐さん、人を殺したことがあるか?俺はやったことないが…この制服を着ている限り命令とあらば殺るのが、俺達だ
出港4日目、イージス艦「みらい」は、ミッドウェー島北西で謎の低気圧に遭遇していた
突如レーダーから僚艦三隻がロスト
それどころか衛星通信が不能に
雷がみらいのアンテナに落ちたあと、突然の雪
直後、不明艦40隻の大艦隊に囲まれる
眼の前に大きな艦影「戦艦…大和?」
船長判断で全速離脱、大艦隊の真ん中をつっきることに
最初「僚艦が消え大和が現れた」と判断するが…
「逆じゃないか?満月が半月になっている…つまり現れたのは連合艦隊じゃなく、ミッドウェー海戦に我々が出現したんだ」
艦長 「昼行灯」をあだ名とする小栗一佐は判断する
「本艦は予定通り真珠湾米海軍基地を目指す!」
航路上、1942年ミッドウェー海戦の海域へと通りかかる
史実通り、次々と炎上する大日本帝国航空母艦
艦内で論争
一機でも落とせば日本人が何百人か助かる
バタフライ効果をしらんのか?
俺達はなんでココへ連れてこられたんだ?戦えるかやってみろってことじゃないか?
副長、門松は宣言する
俺達の任務はこの「みらい」と乗員241名の安全を守ることと、ロストした僚艦の無事を確認すること、連れて帰隊する、そのことを第一義に考えろ
艦長、小栗は「横須賀基地を確認するために横須賀へ向かう」ことを決定
途中、日本海軍の水上機が海に墜落しているのに遭遇
沈みゆく飛行機の後部座席に人が生きてるのを確認した門松は、飛び込んで助ける
その将校は、応急処置後全治二ヶ月、その間情報を遮断することを決める
が、歩き回ったので一瞬で目論見はやぶれる
その男、海軍少佐 草加拓海はクルーに問う「未来、日本は存在しているのだな…」
小栗艦長は「国が滅んだわけではないそれだけで十分だろう」
知ってしまったからには、と門松は草加を資料室に連れていく
門松「この時代にあるはずのない情報、手に取るも取らないも、あんたの自由だ」
草加「読んだらどうする?」
門松「覚悟してもらう」
草加「あなたに助けられた日、海軍少佐草加は死んだと思っている」
門松「運命を知ってしまうことが怖くないのか?」
草加「生きているということは、知ることなのだ…」
感想
最近、YouTubeで「ジパング、アニメ全話無料公開」というのを見かけまして…
https://www.youtube.com/playlist?list=PLK6k_jC4_34CNeZYAacICkb_3OCo2oEjq
勢い良く、徹夜でイッキ見してしまった
当時観てたしすきだったが
権利関係でOP/EDの名曲が削られてるのが残念
続きが観たい!という要求もあって、漫画原作を読もうとなった。
以前から、かわぐちかいじ作品は読んでみたかった
「生存 LifE」という全3巻の余命少ないおじいさんが娘を殺した犯人を探す話は読んでた
戦争モノのイメージあったので「へーレンジの広い作品書くんだな」って思ってた(上記の作品は原作付き:福本伸行だったのだが)
ジパング、沈黙の艦隊という「川口かいじど真ん中」みたいなんは履修したく思ってた
ま、漫画家55周年&えげつない作品量(60作品以上)なので、網羅は難しそうだが…
最初が「力いっぱいのファンタジー」で始まるので、作劇のルールブレイクやご都合は、最大限に許容された状態…のはず
だけれど、極力「その時、不思議なことが起こった」にはしない、という方針があったのかな?と思う
多少のご都合や有利な結果はあれど、魔法とか奇跡的な確率で…とかは観られない無かった(と思う)
本当に「元自衛官でイージス乗ってた人」とかからすると「そりゃおかしいやろ」な”かなりのご都合”という意見もあるが…
全戦中戦後史が解る資料室やら、高性能すぎる艦載機やらいろいろ
話しの建付けというか構造が解った時点(1巻中盤くらい)から、もう「気になることが序盤からてんこ盛り」に感じた
「この話をたたむには?」ちょっと考えただけでも疑問と謎と課題が多すぎる
例えば…
日米どちらにどう言う関係で組みするのか、共闘したり敵対したりするのか
燃料や弾薬が消耗していくし、攻撃受けたら直せないと思うけど、どうするんか
数年この時代で生きるとしても「ずっとイージス艦で漂流していられない」だろうし、どうするんだろう
果たして「みらい」は現代に帰るのか帰れないのか…くらいまではまあ一話時点くらいで感じるところ
日本の歴史を追うならなんぼ先を描けるだろけど、どこにクライマックスを持ってきて、どこで終わるのか
歴史改変はどの程度おこなわれるのか、領土や日本のあり方は、それによる結末は
この世界の自分やその周りは生まれるのか、また邂逅するのか、出会ったとしてどう絡むのか
それら全部を「風呂敷たたむ」としたら、(予め自分が知っている)43巻で収まるんか
そも、全部「風呂敷をたたむ」つもりなんか…など
そして「先どうなるのか」の疑問が生じてしまったからには、もう購読ノンストップになる
過去のマンガで、現在「完結している」からには「(どうころんだとしても)何らかの決着はついてしまっている」という事実がある
作者・作品によっては「打ち切り」「未完」なんて結末もあるけど、それすら「決着」のイチ形態だし
「途中で辞める」とかの退路は絶たれてしまっている
人の「正しくありたい」という気持ちと「生存権」や「背に腹」とかのせめぎあい、つまりは「高潔さ」の物語だなと
人間は、出来ることならば「後ろ指をさされる」なんてことのない「社会性における正しさ」を追求して生きたいもの、だと思う
俗に言う「お天道様に顔向けできる」とか「社会的に意義がある」とか、もう少し追求すると「社会的に評価されたい」だったり
他方、人間は「裕福でありたい」「人より楽して優位でありたい」など「自己拡張の欲」というものもある
その欲求が最低ラインまで落ちると「健康ででいたい」「生きていたい」という「生存権」というレベルまでおちる
「社会性における正しさ」と「自己拡張の欲」のせめぎあいにで社会性が勝つ場合に「高潔である」と言われてたりする
利他的な考えや共存や「周りのため」を優先できれば「高潔である」と評価されたり
本作は「自己拡張の欲」が、最低ラインである「生きられるか(生存権)」にまで下がっていく過程で「その”高潔さ”を維持できるのか」が大きめなテーマだと思う
最初、圧倒的武力と科学力と質量を持ってる状態で、日米両方と馴れ合わず「専守防衛に徹する!」と理想を掲げてたけど、消耗し、陥れられ、仲間がやられていく…
そうやっていき「自身の命すらも危うい」ところまで追い詰めれた時、主人公やその周り、仲間のクルー、そしてイージス艦「みらい」の総体として「それでも人は理想で貫けるのか」みたいなところが、テーマなのかな?と思いました
「知識量を感じるミリタリー描写」に、ミリタリー”ミリ知ら”の自分でも、圧倒されました
イージス艦「みらい」と、旧帝国海軍艦船に、部屋の背景一つまで手を抜いてる様子がなさそう
協力に「青山繁晴氏」や「海上幕僚監部 広報室」などあることから、取材と資料漁りを相当やった結果だろうと推測する
最終巻巻末の「参考文献」は圧巻
何気に伏線回収が地味にすばらしかった
あらすじ書くため、1巻分読み得した結果、唸るシーンがあった
総評
大河ドラマのごとき「かわぐちかいじワールド」の `本道` みたいなとこを知りたいなら、読むべき
みうらでも読めたので「かわぐちかいじ入門編」としても良い…かも?
「長さ」にさえ目をつぶれば
近代史、軍事、旧日本帝国軍事、近代兵器、地政学、航海学・海洋学…多くの「間口」があるので、どんな取っ掛かりから入っても楽しめる作品
2023/10/29まで、YouTubeで「アニメ全話公開」やってるので、それも合わせおすすめしておきます
最後までお読みくださり、ありがとうございます!
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