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066_20250116_シャングリラ・フロンティア
正式名称は「シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜」
基本情報
原作: 硬梨菜(かたりな)さん、コミカライズ: 不二涼介 さんによる、VRゲーム冒険ファンタジーマンガ
原作は、オンライン小説サイト「小説家になろう」にて、2017年5月19日より現在も連載中
現在、935を超える話数となっている
小説側は、商業誌等の紙媒体での書籍化がされていない
コミカライズは、講談社「週刊少年マガジン」にて、2020年7月15日から連載中
既刊20巻
受賞歴
「全国書店員が選んだおすすめコミック2021」にて11位
2021年6月「第5回みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」にて4位
2021年8月「次にくるマンガ大賞2021 コミックス部門」にて5位
2021年4月、第46回「講談社漫画賞」少年部門の最終候補
メディア展開
アニメ
毎日放送・TBS系列ほかで放送
1st season:2023年10月1日 - 2024年3月31日
2nd season:2024年10月13日 - 現在放送中
ゲーム
ネットマーブルネクサスよりゲーム化予定
時期、媒体、家庭用・アーケード等は未定
大まかな紹介
世に100の神ゲーあれば、世に1000のクソゲーが存在する。
バグ、エラー、テクスチャ崩壊、矛盾シナリオ………
大衆に忌避と後悔を刻み込むゲームというカテゴリにおける影。
そんなクソゲーをこよなく愛する少年が、ちょっとしたきっかけから大衆が認めた神ゲーに挑む。
それによって少年を中心にゲームも、リアルも変化し始める。
だが少年は今日も神ゲーのスペックに恐れおののく。
「世界の裏側を見ながら下に落ち続けない!!」
「小説家になろう」サイトの作品まえがきより
導入
おそらくゲームの世界、ラスボス倒して姫様に労われている場面
「あなたのおかげよサンラク」
「ああ、この時をまち望んだよ…」
その姫様に飛び蹴りかます覆面パンツの男
「邪神がぁ!お前も邪神とともに沈んどけ!!」
フルダイブ型バイザーを付けた少年が叫んでいる
「よっしゃぁあ!ついに『フェアクソ』クリアしたぞぉお!」
日務 楽郎、高校2年
クソゲーハンター、嬉々として「クソゲー」を求めプレイする人種の一人である
場面はかわり、ゲームショップ「ロックロール」
店長と思しき女性と、おとなしそうな女子が話している
レイちゃんと呼ばれるその少女は、どうやら楽郎に会えるかも?という期待でゲームショップに来ているらしい
「今回プレイしてるゲームはあの『フェアクソ』だからね、もう少し時間かかるかも?」
そこに楽郎が訪れる
「フェアクソをクリアしたの?」「やってやりましたよ、最高にクソでした!」
「さすがに「フェアクソ」が極まりすぎて、次のゲームが思いつかない」と楽浪
だったらクソゲー以外もやってみたら?
店主は神作をすすめる
「シャングリラ・フロンティア」
通称「シャンフロ」、同時プレイ人口で世界記録に認定されたゲーム
楽郎、やってみることにする
キャラメイクで、「二刀流の傭兵」を選び、武器を優先したいがため、初期武器を売って武器を優先した結果…
「鳥面にパンイチ・裸足の二刀流の兄ちゃん」が生まれる
キャラ名は「サンラク」、どのゲームでもこの名である
出身地を設定した関係上、ビギナーエリアにランダムで放り出されてスタート
早速、接敵するが一撃、レベルアップと斧のドロップ
次々敵を倒し、レベルアップ、スキルも身につける
「ここまでバグらずにプレイできるってすごくないか?」と変わった感慨
本来の「最初の町」によらずに、2つ目の町のエリア超えで試練に出くわす
渓谷にかかる橋の前、エリアボス「貪食の大蛇」が通せんぼしている
「マルチ推奨ボスを一人で、かぁ」
「この思い通り動くアバターなら、紙装甲でもいけるはず!」
回避系のスキルを使い、攻撃をしかけるが、武器の耐久値が持たず一発で砕けてしまう
レアモンスターのドロップで手に入れた「致命の包丁(ヴォーパルチョッパー)」を装備し、飛びかかる
が、毒液をもろに被り、ステータス異常「毒」状態になってしまう
サンラクのHPは30しかないため、10秒ごとに1減る毒は致命傷
眼の前に対峙する大蛇に、一人つぶやく
「こっちはな、こんなもん比べもんにならない程のクソゲーをクリアし続けてんだ…クソかけられた程度で、萎えるわけ無いだろ!」
場所はかわり、ビルの一室、モニタとPCしかない空間で、女性がつぶやいている
「サービス開始から1年、コレだけの人数が居ながらユニークモンスターの一体すら倒せずか…」
「モブに踏破できるほど、この私の世界は甘くない」
ディスプレイに表示されていたのは
「ワールドストーリー”シャングリラ・フロンティア” 進行度:0%」
ここで一話終了。
感想
世の中的には「今、最盛期の作品」なのかもしれない
2025年1月現在、テレビアニメ2期が放送中
今日紹介するということは、まーた「世の多くの人が知った後、自分のアンテナに引っかかった」という、後発組すぎる自身の「アンテナ感度」に涙している
が、ミーハー的には「今、一番ムーブメントの波に乗れてる」と、世の人々と「一緒に楽しむ」方向で考えとこう
この作品は、出自が「なろう」だが、商業の紙媒体で小説を出していない
最近、そういう流れがあるのかもしれない
前回紹介した「追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。」も、「なろう」出身で小説2巻出しているものの、マンガのほうが先行して10巻以上出てた
紙の小説すっとばしてマンガ側がメインストリーム -> アニメ化、みたいなルートのほうが、今の"売れ線"なんだろうか?
なので、マンガは「コミカライズ」というより「原作付きのマンガ作品」という感覚のほうが近い…のかもしれない
よくある「小説本の挿絵の人がキャラデザ」という流れじゃない
おそらくだが、キャラの造形は原作者が指定したか、マンガ作者が考えたのだろうと推測
そういう意味では、アニメも「小説作品のアニメ化」というより「マンガのアニメ化」のほうが近い…のかもしれない
作品を「”絵”にしている」のがマンガしか存在せず、かつ商業で唯一作品として世に出しているものだから
実際にアニメを今視聴中だが、絵の雰囲気も作品のノリも、マンガの方に寄ってる…と個人的には思う
余談だが、アニメもかなり出来が良い…と思う
ほらだって、監督が「アイマスの」窪岡俊之さんだし(個人的評価)
こういう「ゲームプレイヤーがゲームやってるのを物語にする」マンガ、自分は割と”難しい”と思っている
古くは「ゲームセンターあらし」や「ファミコンロッキー」「ファミコン風雲児」などが、それの始祖に当たるか
まあ、「実在のゲームを扱ってる」のと「作品中にしか存在しない架空のゲームを扱ってる」ことの差は大きいけれど
当時は、ゲームの世界のほうが小さく「クリア」という終点が近くクリアが最終到達地点でるあること、かつリアルタイム性やトレンドを意識するため、ゲームは数話で移り変わって行くし、プレイヤー側の”現実世界”のほうが物語の主軸であった
現在、ゲーム側が進化したため「ゲーム世界とプレイヤーの居る現実世界」のどちらでも、なんなら両方でも物語を描けるようになった
RPGなら100時間くらいのボリューム、MMOならゲーム世界での人との交流、3Dゲームならリアルで多様な挙動、というふうに「ゲーム内世界を舞台にしても、長く深い作劇ができる」ようになったのだと思う
ましてや「フルダイブ型のMMO」など「すぐ先に来そうな、想像しうる未来のゲーム」まで舞台にすれば、ゲーム内を現実世界に近い自由度で描けるようになり、どっちの世界でもかなり自由にストーリーが書けるようになる
だからこそゲーム内・現実世界、どちらに物語の軸足を置くか、はたまた両方を描くか、という「作劇の自由度」が昨今は高く、それを選択することとなり、自由な分作者の仕事がヘビーになっている…のではないか、と
「ゲームをプレイするマンガ」は、ゲーム自体が「描きたい話の制約」「盛り上げたい話の足かせ」にならないように「うまくやる」必要がある
特に実在のゲームを登場する時がそうだが「ゲームのシステムや制約」を 酷くリアリティを失わないよう に料理しないといけない
例えば「ゲームセンターあらしのようにプレイヤーを超人にする」
これはもうゲームプレイやテクニックを描く気なくて「こまけーことはわからんが、必殺技がすごい!」でそこを魅力としている
例えば「ファミコンロッキーみたいにゲームの挙動にファンタジーな創作を持ち込む」
スパルタンXでヒロインのシルビアが襲ってきたり、ハットリくんが巨大になったり
正規の「ゲーム」や「コンピュータの世界」でストーリーを作ると、論理的整合の取れた地味な世界になりがちだが、そこに「超人技」や「世界観が壊れない程度の嘘」を混ぜることにより、ケレン味を出したり、作者の作りたい話を構築していた
「ゲーム内をマンガのメインストリームにする」と、プレイヤー側は相対的に描かれなくなる
例えば 「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。」だったり
例えば「とあるおっさんのVRMMO活動記」だったり
ゲームの中では「特殊な事やってる」「特殊な才能がある」ではあるものの、現実世界は「寝て起きてMMOに潜る」程度の味付けしかない
よく考えれば「ゲームという建付けでなくて、ファンタジーとしてゲーム中の世界を描けば良いのでは?」と思うが「ゲーム(という秩序があるから)だから行動が異常」を演出する舞台装置の役目なのだろう
「プレイヤーがメインのストーリーにする」と、プレイヤーの「使命感」や「やらなくてはならない理由」が必要となってくる
基本的にゲームは娯楽であり、いつやめても良く、投げ出して良いもの
また、今回舞台のゲームのようなフルダイブMMORPGであれば、ゲーム内で死んでもペナルティがあれど復活できるので、何回でもリトライ可能
「いつやめても良い」「何度でもやり直せる」という性質は、物語としては緊迫感が無く「主人公はなんでこのゲーム必死こいて続けてるんだろ?」の疑問に行き着く
そこを解決するために「ソードアート・オンライン」などは「続けんと死ぬ」という動機づけと舞台装置を用意していた
今まで上げた「プレイヤーがゲームするマンガ」の「難しい点」において、この「シャングリラ・フロンティア」はものすごく上手く組み立てていると感じている
主人公が「ゲームを執念燃やしてやる理由」が「クソゲーマニアでどんな苦痛でも耐えてきた俺が、神ゲーごときのヌルい世界なんざノーデスで攻略してやんよ」という渇望だったり
主舞台は「シャンフロ」というゲーム内だが、問題の打開のためや、気分の問題、または人に頼まれてなど「別のゲームもカジュアルにやる」という現実世界の描き方だったり
フルダイブのMMOとはいえ、「レベル上げて技使って」みたいに、得てしてシステムに対して作業的なりがちという「盛り上げにくい舞台」に「プレイヤースキル」という主人公含めた「プレイヤー固有の能力」で難局を打開できるという「マンガ的(小説的)物語の盛り上げ」であったり
別の話しとして「絵がキレイ」
特に表紙絵が鮮やかで幻想的
先の仮説「キャラデザがこの漫画自体」であって、この綺麗さをアニメ側が意識しているなら、アニメの絵を支えてるのがこのマンガでは?まである
総評
SAO的なフルダイブMMORPGが舞台で、ゲームと現実世界のプレイヤーとの両方主軸の物語を読みたい人にお薦め
少し読んで観て、作中の架空ゲームに「これ…最後どうなるんやろ?」と興味が刺さった人は最後までウォッチして欲しい
最後までお読みくださり、ありがとうございます!
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