027_20230420_正直不動産
基本情報
夏原武(原案)、水野光博(脚本)、大谷アキラ(作画)による、青年漫画。
原案の夏原武さんは、「クロサギ」という漫画の原案でも活躍
客本の水野光博さんは、「Deep3」など漫画脚本で復数の実績あり
『ビッグコミック』(小学館)にて2017年12号から連載中
既刊16巻、刊行中
2022年4月から、山下智久の主演によりNHKでテレビドラマ化
大まかな紹介
不動産業界の闇を曝け出す皮肉喜劇!!
営業に必要なこと以外、客に見せも教えもしないーー
そんな不動産業界に前代未聞の爆弾が、いま炸裂する!!
登坂不動産のエース営業マン・永瀬財地は
嘘を厭わぬ口八丁で売り上げNO.1を叩き出す凄腕だった。
だが、とある地鎮祭で石碑を壊して以来、
嘘が上手くつけなくなってしまった…!!
千三つと言われる海千山千の不動産業界で
かつての成績が一気に低下する中、
永瀬は、嘘が上手くつけない正直営業で苦戦するが…!?
不動産屋の裏側を全部ぶっちゃけちゃうニュー・ヒーロー、誕生。
『千の言葉のうち真実は三つしかない』という意味で、千三つといわれる不動産業界。
導入
場面は朝、タワーマンションの高層階から、スーツの男が景色を見下ろすところから始まる
その男、長瀬ザイチ35歳は、「登坂不動産の副課長」
高齢者に口八丁で「アパート建設&サブリースする」契約書にハンコつかせようとする長瀬
部下の後輩、月シタは、3週間前に入社した女性新人社員
カスタマーファーストをかかげ、「長瀬戦戦先輩は私の理想の人です」という
長瀬は「あんなもん、ウソで塗り固めた契約だぞ」という
高齢者に「2年ごとに原則3%上げる」と言ったが「アパートの家賃が周りの家賃より高かったら、入居率維持のため下げざるを得なくなる」とは言わなかった
「30年一括借り上げですよね?」というと「中途解約出来る乗降入れてる、が素人は読み取れるかは別問題」
長瀬は、棟上げ式の時に邪魔な石碑があったので、足蹴で叩き割る
すると「フワっ」と風が吹く感覚に襲われる
そこからウソがつけなくなってしまう
ウソをつこうとすると、どうしても本当のことを言ってしまう
しかも、わりと口汚な目で
高齢者の質問の電話で「リスクはないのか」といあわされて「当然あります!」と言ってしまい「考え治す」と契約を撤回されてしまう
ここまで一話
全体的な印象
資格試験を取るほどの厳密な知識は得られないものの、消費者として「ここは気をつけたほうが良い」という「アルアル」が描かれている
大人のマンガ読書としては、値打ちあるのではないか
割と、時事ネタ、過去の時事ネタ等、事件・話題を扱ってる
自分は良く、俄・半可通って呼ばれる
普通の人には「なんか違う、気持ち悪い」って言われ、その筋の人には「けっ、俄が…」みたいな扱いを受ける
そんな自分でも知ってるくらいの「キャッチーで頃あいのエピソード」をもってくる
かぼちゃの馬車事件、原野商法、サブリース問題、地面師、旗竿地、再建築不可物件、地上げ、etc..
ここらへんは、本読む前から知ってた知識
今言うたのは、自分でも「厳密な法的根拠等は示せないが、説明城って言われたら出来る」かつ、キャッチーで多くの人が知っててるor気になってる事
ココらへんの「ストーリーでのアオリ」と「わかりやすく説明する例題づくり」が良いなって思います
そういう「キャッチーなやつ」だけでなく、地味な「不動産の基礎」的なとこも教えてくれる
特に序盤
基本は「このスタイル」だが、時事ネタ入れたいときと、過去の事件をテーマにしたい時のみ
「物語全体の進捗」はコナンくんくらい遅い
一応、ライバルが会社ヤメたり、同僚が敵に回ったり、リタイヤしたやつが別業種で出てくる、とかはあるけど
一話で出てきた「なんでこうなった?」には、見事なほどに触れない
そんなもん、コナンの「クロの組織」なんかより、遥かにアンタッチャブル
一話完結モノは「フォーマットが固まってしまったら、そっからは安定して同じことを繰り返す」俗に言う「大いなるマンネリ」となることが多いが…
それがあまりにも「触られない」すぎて「いやいや、主人公たちそれでええんかーい」「大事なこと忘れてない?」ってなるw
主人公がまーーーったく、改心しない
作劇上のカミサマ的存在のヤツは「正直にしかできない」ということで、多分呪いかけた側は「正直な心で望め」という改心の効果を期待してるのだと思うのだけど…
虚栄心ありまくりのままである
タワマンが大好きで「なんとしてもめっちゃ稼いで元に戻っちゃる!」をエネルギーにしている
「ウソが付けない」を「正直に行こう」ではなく「このハンデがあっても…」と捉えている
根性は、人騙してた頃のまま
しかし、作品全体の価値観的には「ウソがつけないと稼げ無い」というところを視座としている
主人公の心理だけではなく、作品全体的に「正直だと(騙せないと)契約が決まらない」という『正直はハンデである』描きかた
この業界が「実際にそう」なのかはわからない
漫画で学ぶというコンセプトは自分はスキ
この作品も含め、青年誌で法律等の「さわり」を学ぶのは、大人の「漫画日本の歴史」みたいなもの
むしろ、お子様に読んでいただきたい
お金の問題、法律の問題、またお化粧とか「個性を磨け」とかの処世術って、「義務教育の後、ぽんと社会に放られて」何も教えられないのに競争させられる…って揶揄されてると思う
そういう意味でも「ぽっかり開いてるピースを埋める」ために、吸収率が高いものでお子にスリコむのも良いのかなーと
三人体制ってギャランティどうなってるんやろなーと
総評
「不動産」部門の「大人の強要漫画」として、エンタメ見ながら知識をつけるのに良作
詳しいことは法律等に実際に当たるとして「不動産周り頭に置いとくべきこと」のインデックス付け出来る実用書
ただ「人情噺」ではなく「勧善懲悪」なので、ほっこりしたかったら別を当たりましょう
根底には「不動産は正直では成功しない」というコンセプト
最後までお読みくださり、ありがとうございます!
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