
069_20250227_ONEOUTS
基本情報
甲斐谷 忍さん執筆の、野球賭博青年マンガ
集英社社「ビジネスジャンプ」にて1998年24号から、2006年18号まで、ほぼ8年の連載
2008年21号から2009年3号まで、7話短期続編連載、20巻として発売
全168話、全20巻で完結済み
メディア展開
アニメ
2008年10月から2009年3月まで、全25話
マッドハウス制作、日本テレビ系列で放送
大まかな紹介
“優勝に必要な何かが足りない”
その“何か”を捜して、沖縄で自主トレに励む“不運の天才打者”児島弘道。
そこで彼は一人の男と出会う。
120km/hそこそこの直球だけで、賭野球“ワンナウト”で無敗を誇る男。
彼は名乗る。渡久地東亜と…。
導入
1998年12月沖縄、プロ野球選手:児島弘道は沖縄で自主的ミニキャンプをしていた
首位打者7回、打点王8回など、華々しいタイトルを手にしているのに”不運の天才打者”と言われている
そのベテランが手に入れられないもの「優勝」
本人曰く「優勝するための”何か”が欠けているんだよ」
そのミニキャンプには、トレーナーの木野崎と二軍投手の中根と3人で行っていた
ある日、中根は右中指を痛めた、本人曰く「突き指だ」と
だが問い詰めると「飲み屋でチンピラと揉めた」という
木野崎は「代わりのピッチャーを探すんだよ!」と慌て始める
児島の現役生活は今年で終わりかも知れない…といことを重く捉えていた
ピッチャーを探し回って、見つからないことに焦り始めた際、グラウンドの横にて、外人のふくよかなママに話しかけられる
「あなたたちピッチャーやれる人探してんの?この近くで野球やってるとこあって、良いプレイヤーがいっぱい居るわ、見に来ない?」
グラウンドへ行くと、ピッチャーとバッターが1対1で勝負をしていた
それは「ワンナウト」というゲーム、賭博であった
バッターは三振するか、インフィールドにバウンドさせたら負け
ピッチャーもバッターも、交代しながら勝負していく
「日本人のピッチャーだ」と紹介された男、金髪の髪を逆立てた若者だった
「あんたがたも賭けたら?」との誘いにのり、中根は「バッターに1000」と言う
勝負が始まったが、日本人ピッチャーに木野崎は「平凡な直球だ」と評価
一人目のバッターは、初球見送り、二球目をホームベース前にたたきつけて負け
二人目、三人目は三振
中根は1000、1000、2000と賭け、負けている
木野崎が中根に言う「はめられてるぞ俺達…」
引き上げようと4千円渡すが「なにこれ」と言われる
「負け分は4千ドルよ」
「インチキだ!次のバッターは俺だ!」と中根は金髪ピッチャーに言い放つ
「乗れねーなそのハナシ、4千じゃ安すぎるって言ってんだ!4万ドルだ」
「お前は怪我している。俺の投げるボールに当てさえすればお前の勝ち、どうだ?」
木野崎は思う「この男は、ただ者じゃない!」
自信満々の挑発に、中根は「やってやろうじゃねーか!」と乗せられる
が、バッターボックスに立つと完全にビビってる
一球目、外角真ん中を見送り、ストライク
「なんてことないストレート」とホッとする
ママが言う「勝負在ったわね、今の一球を悔いることになるわよ」
凡打でも勝ちになるこのルールで、ストライクを様子見する意味は全くない
ただ逃げた、明らかな失策
二球目、木野崎が「とにかくふれ!」と叫ぶ
が、その声に焦って動き、空振り
木野崎が「タイム!」といい、中根に歩みよる
「冷静になって観てみろ、あいつはグラブをつけてない。投げる前に握りが見れる」
三球目、中根は「フォークだ!」と見た
が、ストレート、握りはブラフであった
中根は振ることができず三振、負けた
ママが言う「現実から目を背けた、”逃げ””が運命を決定づけたのよ」
500万の勝負が出来るほどの器じゃなかったってことね
確かに私はハメようと誘った、それは認めるけど思い違いをしてる
私達とあのピッチャーはグルじゃないわ
バッターは凡打を繰り返したように見えただろうけれど、本気で打ちに言って破れたのよ
今の勝負、3球とも寸分違わずアウトローの同じコース、そしてかすらせなかった
そういうピッチャーなのさ、格が違うのさ「渡久地 東亜」は
日を改め、同じグラウンド、バッターに「替われ」というグラサンの男
児島弘道だった「トーア、俺と勝負しろ」
ここまでで2話。
感想
よくよく調べると「二千ヒト桁台で完結している」という、比較的以前の漫画だった
だから、というわけではないが、序盤3巻くらいは、むかーし読んだ記憶が在る
が、ほとんど忘れていたので、新鮮に読めたが
その間、野球界は激動の時代だった
特に連載後期の5年くらいは、身売り騒動や球界再編など、屋台骨を揺るがす話題が目白押しだった
それら、ほとんどの時節の話題を「舞台装置に使ってる」のが凄い
もう、圧倒的に尽きない「不意を突いて勝ちに行く作者のアイディア」が凄い
ありとあらゆる手段で、なんなら野球以外でも「勝ち」をもぎ取っていく主人公
人間の錯覚や心理戦から始まって、ルールの穴、フィジカルの「この理屈なら負けない」理論、道具から始まって球場施設規模のイカサマ、天候やローテーション、中断・遅延などの時間的作戦、契約条件やプレッシャーなどの番外戦術、無名の救世主助っ人など、etc etc…
こんなん、野球で起こったことの歴史や時事、野球のルールブックを余程熟知していないと、できないんじゃないか?と感じた
主人公が「フィジカル最強!」とかじゃないのも良い
まーでも、派手な球速とかないものの、十分「スタミナは超人」であると思うけれど
それを20巻よどみ無く続けたのだから作者の脳みそどうなってんねん!何食ったらそうなんねん!?感あった
漫画を描くって、絵の作成時間が大半を占め、小説や音声の仕事よりは時間あたりのストーリー進行は遅い
けれど、試合の区切りはあるとはいえ「少しでもアイディアが枯渇・停滞してしまったらマンガの勢いが終わる」状況の中、約11年・20巻ほぼ躓くことなく減速することなく、濃い話を最後まで描ききったのは、ホント稀有な才能に思う
自分はよく配信で「最初からプロット練ってたんか」話題をしてると思うけれど、これこそ「数年かけてプロットだけ先に書ききって連載始めた」とかでないとと、この緻密で淀みないストーリーラインを説明できない
そのストーリーの「ハラハラドキドキ」に安定感がある
普通「ハラハラドキドキ」というのは、人が眼の前にする「事象の不安定さ」を感じ取ってするものだと思う
しかし、この作品は「ハラハラドキドキを安定して供給し、安定して解決してくれる」という信頼感がある
勝敗は「絶対に最後は勝つ」というわけではないので、そこはちゃんと読者として動揺出来る
ただ、目の前でどんな物語上の理不尽があっても、どんな超常現象のような不思議な事象が起こっていても、必ず「最後は奇跡や魔法ではなく、理屈を持って”なるほど!”と溜飲を落としてくれる」というところに、読んでる方は途中から信頼置くようになる
それは推理モノで必ず「最後に謎解き編がある」くらい、話の区切りで詳らかにしてくれる、という感じ
まあ「無名の草野球選手をシーズン直前にプロに上げる」設定自体に無理あるし、多少の「飛躍したハッタリ」はあるけど
それでも読者の溜飲は落としてくれる
途中、大きく「ゲーム・チェンジ」な区切りが、4回ある
区切りが4つなので、序章、1部、2部、3部、終章…といった感じ
これは自分(みうら)個人の見立てだが…
その節目節目で「実際に起こった球界の問題」だったり、モデルの居る話題の人物と敵対することとなる
1部2部が敵が共通、3部で敵と目的がガラリと変わる
その前半2部の敵は、清々しいほど姑息で卑怯な手を使ってくるオーナー
絵面が声優の銀河万丈に似てたので、脳内アフレコはずーっとギレンでの吹き替えを楽しんでいたw
再アニメ化する時には、ぜひ銀河万丈さんをアサインしてほしい
3部の敵は、故ナベツネがモデルの重鎮
恐らく連載時期は、ちょーど球界再編で古田敦也が選手会を代表し奮闘、ストライキなどしてた時期だろうと思う
ナベツネが「無礼な!分をわきまえろ。たかが選手が!」と力強く言い放ったのを記憶されてる人も多いでしょう
その居丈高なナベツネをモデルに、名前もほぼまるままの敵が出てくる
憎たらしく誇張…されてるはずなのだけれども、現実のほうが憎たらしくて「ホンマに言うてそう」と誇張表現が聞いてないのが面白かった
最後、終章では「ゴン、お前だったのか…」的展開
今流行りの「死んだとはどこにも書かれていない」系の畳み方
実質19巻だが、20巻に「ちょっと戻った時空」のお祭り話で余韻に浸る感じ
総評
作品側が「わるいようにはせんて」って言うてるような「ハラハラドキドキ」すら安心してさせてくれるクオリティの高い物語を読みたい人にオススメ
読み終わった時に「逆から読みたいな」と思うような、緻密な畳み方のマンガが好きな方にも
最後までお読みくださり、ありがとうございます!
1mmくらい「ええな」と思って頂けましたら、サポートをお願いします。
(この原稿を使ってるYouTubeチャンネルの活動費に当てます。)