019_20221222_IS〜男でも女でもない性〜
作品情報
「六花チヨ(ろくはなチヨ)」さんによる成人女性向け漫画
『One more Kiss』と『Kiss』(講談社)にて、2016年4月号より連載中。
『One more Kiss』は、講談社から発売以前されている女性向けの月刊漫画雑誌でしたが二回だけ
『Kiss』には2004〜2009年まで連載
足掛け6年ほどの連載で完結しています
単行本は講談社コミックスKissから全17巻
話題として
2007年、第31回講談社漫画賞少女漫画部門受賞
2011年にはテレビドラマ化も
話題にはなったが、そのムーブメントは一昔前である
導入
いつも通り「導入」から話していきたいんですけど、まー作者様が「作劇や作風づくりに苦労した」感じがなんとなく解ります。
その前に、まずISの定義の説明が必要かなと。
IS(Intersexual)というのは、「身体的な性別を男性・女性に単純に分類できない状態」を指します。別名「半陰陽(はんいにょう)」
遺伝子、染色体、生殖器などの一部、またはすべてが非典型的(多くの場合に置いての典型・正常例ではない)という体の状態ですよ。
よく「性同一性障害」と勘違いされるが、あれは「心の問題」であり、こちらは「体(物理的)な状態」である。
ということを、頭にいれておいていただいて…。
1話目、CASE 1:ヒロミ
可愛らしい見た目の女性としてそだてられたヒロミ
しかし普通でない体に悩み、女性らしく振る舞うけれど「一生恋はできないんだろなー」と思いながら暮らしてた
が、男性の同僚に告白され、女性らしく振る舞おうとするけれど、しゃーなしで拒絶したりなんだかんだ
親には「やめときなさい、その体を理解してもらえないなら、傷つくだけ」と反対され
たしかに、思春期は女性に振り分けられるのに体は男性であり地獄だったと振り返る
生まれた時に親さえちゃんとしてればと思い、女性となる手術を受けることとする
---- ここでやめるならやめる
しかし「人口だし女性と同じようにはならない」 「メンテが大変」というのを医者に聞きショックを受ける
自暴自棄になり、彼氏に当たり、自殺未遂する
自分が生まれた時の日記を読み、苦悩を知り、和解する
彼氏に別れをつげ、ISの啓蒙活動に傾倒する
2話目、CASE 2:竜馬(りょうま)
次のケースは、男性として生きてきたISのケース
子供の頃「大きくなったら女の子になるはずと思ってて、いじめられて男の子になって、再度選ぶ性が女性で医者からはやめとけ、弟からは気持ち悪いって言われて…でどうなるか?という話
---- ここでやめるならやめる
サーファーでウミのゴミ拾い少年として新聞にのる
幼馴染の女の子に告白される
幼いころは成長すれば女子になれると信じており、女の子としてふるまっていた
が、社会的な分類は男なのでいじめられるが、全力で抗ったことで男子たちに認められ「男として男の中で生きてればうまく行く」と考えるように
しかし体が女性に変化し始める
この時点で、ISを知る、男性化の投薬を受ける
カノジョにISであることを告げ別れ、「ISとして活きる」と考えるように
当面は女性として活きるとし、治療をやめると医者に言うが、医者は「やめると骨粗鬆症など健康問題が出る」と言われる
弟に「きもちわるい、いいじゃねーか男のままで」といわれる
相談にいった元カノに「妊娠4ヶ月」を告げられる
不幸のどん底で会社のおばちゃんに「婦人会で性教育の話するけどISのことを教えて欲しい」といわれ引き受け、大成功に終わる
女性化を
で、ここで1巻終了
これが2003年にOneMoreKissの3,8月号に乗ったやつ
で、ここから大転換があります
3話目以降、CASE 3:ハル
ケース別でやってくのか、と思いきや、ここから5年ほどCASE3で完結という
おそらく「掲載誌移動して連載になって長期を鑑みた」のだろうと思います
パティシェのダンナと奥さんの間に生まれた子はISで、生まれる時に「性別を選べ」と言われ話
どちらかというと女の子の成分が多め…だったんだけど、出産直前に精巣が見つかる
で、医者に決断を迫られ精巣の切除を決断する
しかし「性別を選択せず、ISのまま育てよう」と決める話
観想
子供の頃に小学校とかでみた「まんがで読む歴史」と同じように「手軽に読める教養本」としては、役にたちそう
重いテーマなだけに、マンガのほうがまだクッションとして読みやすくしてくれそう
自分も一時期「家庭の問題」を読み漁ってた時に「ISの事を知りたければ、とりあえずISとうマンガを読んでみたらいいよ」という書き込みを観て興味持って読んだとこがある
教養マンガとしては読みやすく良いかもしれないけれど、「エンターテインメントとしてのマンガ」と考えると、2つの理由で少し読んでてうーんというところがあった
作品の扱ってる問題の性質上「根本的解決」もなければ「基本悲劇的な結論か、妥協や諦めの境地での結論」にならざるを得ないもやもや
その性質もあり、終盤若干ループ気味
その展開も「いたしかない」と思わせるのは…
それが、マンガ的にでも「解決」があるのなら、社会問題自体も片付いてるだろうし
割と知名度が上がってるこのマンガで、超マンガ的な「問題大解ケーつ!みんな大団えーん」みたいにしても「メルへやんけ…」って評判になるやろし
作者の苦労が忍ばれる作品
「取材が…」という話も巻末に書いてあったりしますが
「ヘタに解決をしない」ために落とし所が辛かったのではないかなぁと
実際問題、「少女漫画絵」というのが、少し問題をぼやかしてしまったのかなと
少女漫画絵なので女性と男性は明確にかき分けるものの、「どちらにしろ美形」で、どちらであっても全然愛してしまえそうなので、その「重大な問題なんだよ」感が、少し伝わらない感じがする
本来は重大な問題であり時折生死に関わる例もあるのだけれどなーと
しかし「そんなに生々しく見え無い」という一点において、救いが在り、読みやすさに貢献している…のかも?
なのでいたし痒しな感じ
マンガの外の世界ではあるけど、現実のISの例は「親がしっかりしてくれてたら…」みたいな例が多いよう
責任から逃れるため「問題を先送り」したり、物心ついてから「さあ選べ」にしたり…
親の気持ちもわからなくもないのは「選択肢をどう転ばせてもうらみぶし」になりやすい、ということ
生まれた時どっちか選んでも「あの時の選択のせいで」と言われ、物心ついてから選ばせても「生まれた時に決めておいてくれたら…」となる難しさ
身体的問題、恋愛的問題と、もう一つ大きく「社会的な問題」が描かれてる
まだ世界は前例として扱えてないし、「そういう人格をどのように社会に組み込むのか」は成熟してない
それだけに、言うに言えない苦痛と悲劇がある…みたいな話
まとめ
読みやすいマンガなので、ISという概念・状態を知るのには良い教養本
マンガというエンターテインメントとしては少々厳しいが
お子さまの情操教育や親子で「こういう場合はどうする?」の会話の一環として、ぜひ親子ともに読んでいただきたい
20巻以内で完結するので、まあまあ読みやすい
しかし、終盤ループ気味なのでそんなに重く読まずに爽やかに駆け抜けて欲しい
最後までお読みくださり、ありがとうございます!
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