041_20231116_チ。-地球の運動について-
基本情報
魚豊(うおと)先生執筆の、青年マンガ
小学館「ビッグコミックスピリッツ」にて、2020年42・43合併号から2022年20号まで連載
全62話、全8巻で完結済み
受賞歴
2021年「マンガ大賞」第14回にて第2位
2021年「次にくるマンガ大賞2021」にてコミックス部門第10位
2022年「このマンガがすごい!2022」オトコ編にて第2位
2022年 第1回「このマンガがすごい! 芸人楽屋編」にて第6位
2022年「漫道コバヤシ漫画大賞2021」でグランプリ
2022年「全国書店員が選んだおすすめコミック2022」にて第5位
2022年「マンガ大賞」第15回にて第5位
2022年 第46回「講談社漫画賞」総合部門の最終候補に選出
2022年 第26回手塚治虫文化賞のマンガ大賞
2022年 理化学研究所と編集工学研究所の共同プロジェクト「科学道100冊」に選出
2023年 第54回「星雲賞」コミック部門受賞
メディア展開
2022年6月にマッドハウス制作によるアニメ化が発表
大まかな紹介
「ひゃくえむ。」で
100m走にすべてを捧げる人々を描いた超新星・魚豊が
舞台を青年誌に移して新たに描くのは、
「禁じられた真理」を探求する人々を描いた一大叙事詩。
舞台は15世紀のヨーロッパ。異端思想がガンガン火あぶりに処せられていた時代。
主人公の神童・ラファウは飛び級で入学する予定の大学において、
当時一番重要とされていた神学の専攻を皆に期待されていた。
しかしある日、ラファウの元に現れた謎の男が研究していたのは
異端思想ド真ン中のある「真理」だった———!!
ビッグコミックBROS.NET のあらすじより
導入
ちょっと配信に出せなさそうな拷問具で拷問されてる一枚絵から始まる
舞台は、15世紀前半、P王朝某所
異端審問官と言われる30代くらいを思わせる男が、椅子に座らせた男を拷問している
C教に背く異端思想の研究資料をどこに隠しましたか?
男はツメを剥がす
が拷問されてる男は言い放つ
お前らごときに真理は支配できない!たった10枚、さっさとおわらせろ
他の方は68枚、ツメって生えてきますから
場面は変わって学校と思しき場所
宇宙の中心には何が在るでしょう
ラファウと呼ばれる子「地球です。最も低い地点”中心”にあるからです。」
「流石だ我が子よ」「光栄ですお義父さん」
ラファウは大学へ行くことになった。ラファルよなにを専攻するのがふさわしいと思う?
もちろん”神学”を専攻したいと思います!
ラファウは、心の中で思う「世界、チョレ〜」
ラファウは孤児だが、生きるのがすごく上手かった
信条は”合理的に生きる”だ
クラスメイトがもてはやす
ラファウはまさに天才!賢者!神!!
先生:神?人は神にはなれません、発言を撤回してください
放課後、先生はラファルに問う
それは星表か?まだ天体観測を?
はい、昨日初めて6等星まで観測できて興奮しました
そうか。観測をやめろ
続けて先生は言う
頼みごとだが、明日私の友人フベルトの身柄を引き取って欲しい
異端者として捕まっていた人ですよね、「禁じられた研究」とかで
翌日、ラファウはフベルトを引き取りに行く道すがら、広場にて火炙りで処刑されてる異端者を観る
冒頭に出てきた異端審問官があくびをしながら「ふぁーあ、早く燃えろ〜」
な、なんなんだあの人…さっさと退散しよう
城門前でフベルトを引き取る
拷問されたであろう頬にはケロイド
うわ、でか、やば!なんだこの怪しさしかない人は…
フベルトはラファウの腰に下げてる天体観測器具を観て言う
そっちには蝋板、観測記録か?見せてくれ…すばらしい、6等星まで見えるとは
ウチにはもっと正確に清書したのがありますよ
本当か?これで研究が続けられる!
不審に思うラファウ
え?研究?やめたのですよね?
私は学者、誰に何を言われても研究を捨てるつもりはない
改心してないので?
勿論。これからもバレないように騙し続けるがな
なぜ今バカ正直に言うのですか?
それは今から君を脅迫するからだ
首にナイフのようなものを突きつけつつ「私はやり残したことがあるから戻ってきた」
言うことを聞かなきゃ殺す…だから天文をヤレ!
はいやります!めっちゃやります!
観測地を紹介され「行くわけない!」文句言いつつ、観測値にいくラファウ
凄い、来てよかった!こんなにくっきり見えるなんて…この記録、一体何に使うんですか?禁じられた研究って?
宇宙がどういうカタチしてるか知っているか?描いてみろ
一千年前にプトレマイオスが真理を見つけてる、地球は特別なので神様は宇宙の中心に創ると思いますが
フベルト「ではこの真理は美しいか?この宇宙は美しいか?」
まぁ…少々難解過ぎる気はします…あまり美しくはない
私は美しくない宇宙に生きたくない
そんな事言ったって、美しさで理屈をないがしろにできない、星が動いて太陽が登る限りは
ではもし太陽も星も動かなかったら?宇宙を動いてるのが地球だったら?
そんなわ…え、地球?
フベルト「そうだ。太陽が登るのではなく、我々が降るのだ」
毎日朝が来るのは”自転”しているからだ、季節が変わるのは”公転”しているからだ
私の宇宙では地球は二種類もの運動をしている
常識は覆り、C教は激昂し、”美しさ”と”理屈”が落ち合う
フベルト「コレが私の研究…それを『地動説』とでも呼ぼうか」
ここまで一話。
感想
全巻駆け抜けてみて…すごく「とっちらかった色々な思考を巡らせた」作品でした
今日、感想として説明する以外にも、多くのことを考えた(させられた)作品
言語化できるものから「もやもや」まで
ということで、今回は「感想もとっちらかってる」ことをご容赦願いたい
「原罪意識からの脱却」や「”先祖の代で悪いことをした”という訴求悪的なレッテルに抗う」という、そういう物語なんじゃないかなと
そしてそれは、今の現代人の自分達が「当たり前として享受している」ものだが、`得るため` に先人が克服した結果なのだなーと
そして、それは「世界各地で起こっていた事」
例えば、日本だって「連座制」という「自分は悪くないのに他者の責任を負わされ罰される」という制度があった
為政者や権力者が「手っ取り早く民衆を秩序にハメる」ための、恐怖に寄る支配
「真実」や「自由」を求めることに「恐怖」では勝てないのだる、という人間讃歌…なんかなぁと
と、言うような「キレイな言葉」や「小むづかしい言葉」を使わなくても、痛快娯楽作としても楽しめる漫画なんじゃないかなと
勧善懲悪や「弱いものが強いものに抗う」というレジスタンス的な作品が好きな人も「ほっそい希望から運命をこじ開けていく」様はきっとワクワクする…かも?
人は「未知の知識」を恐れるものだ…というところに、今回の気づきと解ってからは強い共感があった
それにより、戦いにもなり、殺人にもあり、はては戦争にもなる
「安定している(と思っている)世界」が「(自分は理解できない)デマにより覆され、新常識となる」のは、怖くて怖くてしょうがないこと…なのかもしれない
その「現状、安定側に居る人間」特に
財であれ知識であれ、積み上げてきたものが、一瞬で無くなるのだから
いわば「既得権益」と「新常識」の闘争…をカタチを変えて描かれてるなのかもしれない
そして「新常識」が優勢に立ち、塗り替えてきたのが現代社会かなと
少々、単純化が過ぎるかもしれないけれど
「科学」と「文学」の役割分担、みたいなことも途中で感じた
「科学」は積み上げ移りゆくものだが、もろくも在る
理解し再現する人が居なければ原野に帰る
エビデンスをすべて失ってしまっては土台が揺らぐ
「科学」を継承できなくても「文学」は人を熱くする
挑戦した歴史を物語にすれば、影響されて起ってくれる人が居る、再度トレースチャレンジする人が出てくる…みたいな話
他にも、頭の中にはてなマークを出すテーマがてんこ盛り
人に内在する「矛盾・排他な要素」(例:疑念と信頼)とか
ちょっと、駆け足で全巻駆け抜け過ぎたので、もう一度味わって読み直したい
総評
「自分は人間だ」と再確認したい人におすすめ
人類が戦ってきたものや、生き物としての苦悩を観て、360度全包囲に悩みたい人…が居るかはわからないが、この作品で満たされます
ごまかさない「成年漫画」の濃ゆいやつを読みたい人にも
作劇上、残虐描写もあるが「そこを避けてごまかさない」のはタフな作品だと思うので「安易な美化がキライ」な人にもおすすめ
最後までお読みくださり、ありがとうございます!
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